ハメルンチャルメラ | kyupinの日記 気が向けば更新

ハメルンチャルメラ

ドラえもんの四次元ポケットから取り出す秘密道具の1つにハメルンチャルメラという笑える名前の道具がある。

チャルメラといえば、皆、インスタントラーメンのことを思い出すかも知れないが、実は木管楽器のひとつなのである。3世紀から7世紀頃のペルシャに、サーサーン朝なる国家が存在し、その軍楽隊が使用した楽器が起源とされている。その後、ヨーロッパに伝わり、改良されて現在のオーボエとなった。だからオーボエのルーツはチャルメラということになる。

ドラえもんのマンガではハメルンチャルメラを片付けたいものに向かって吹くことにより、一瞬のうちにそれが山に移動する。そういう魔法のような楽器なのであった。

片付けられない人たちにとって、これ以上便利なものはないと言えよう。(捨てられない人たち)

ハメルンチャルメラを人に向かって吹いた場合、その人も山に飛ばされてしまうが、そこでどうなるかは不明である。しかし、このハメルンチャルメラを逆に吹くと、いったん山に行ってしまったものが戻ってくるという仕掛けになっている。これはコンピュータでもゴミ箱を開けると、編集に「元に戻す」というのがある。これと全く同じである。

この面白いネーミングだが、前半のハメルンは「ハーメルンの笛吹き男」から来たことは間違いない。僕はこの「ハーメルンの笛吹き男」という童話も子供の頃、読んだ事があり、その時に絵を描いた記憶がある。

この話はドイツのハーメルンという町で13世紀の終わり頃起こった実話らしく、内容を詳しく調べると、どうみても悲劇である。日本の絵本などの内容ではそれが改変されて悲劇ではない内容になっている。だから、子供がよく知っている童話のわりに実際とは異なるものなのである。

童話は概ねフィクションのものが多いが、このハーメルンの笛吹き男の話は、ノンフィクションなのが、普通とちょっと違うところである。

この話だが、1284年、カラフルな衣装をまとった男が突然ハーメルンという町を訪れ、町のネズミを駆除することで報酬を貰う話を持ちかけた。その男は笛の音色でネズミをおびき寄せ、その大群を川に誘導して1匹残らず溺れ死にさせたのである。しかし、町の人々は彼に報酬を支払わなかったらしい。怒った笛吹き男はその町を立ち去った。

再び6月26日にハーメルンに舞い戻った笛吹き男は、笛を吹き鳴らし、130人もの子供を連れ去ったのである。笛吹き男に笛で誘われた子供達は洞窟の中に一緒に入って行き、そのまま洞窟の内側から封印され、二度と戻ってこなかったと言う。町には聾唖と盲目の子供2名だけ残されたらしい。

ハーメルン市にあるラテン語の碑文にはその笛吹き男は悪魔だったと記載されている。

この話が実話だったとすると、謎過ぎる事件とは言えた。

この話の現代的な解釈はいくつかあり、その1つにペストに関わる話がある。当時から、ヨーロッパではペストが周期的に大流行し、そのたびにたくさんの人々が亡くなっていた。ペストは致死率が非常に高く、7日くらいで死に至るような感染症なのである。当時は治療法もなく、大流行時には人口が2/3から1/3まで減少することもあったらしい。(ペストに対しての隔離のようなもの。考えにくいが)

子供が踊りながら笛吹き男について行ったという内容だが、当時、ペストの大流行の後に舞踏病が発生したような話もあるが、これが脳の器質性のものなのか、あるいはヒステリー的なものなのかは不明である。

ペスト菌はネズミにつく蚤によって媒介されるので、なんとなく最初のネズミの話はペストを彷彿させるところはある。しかし、実は最初のネズミを溺れさせる話は、16世紀後半になって初めて付け加えられたもので、それ以前は一切ネズミについては触れられていないらしい。

今日では、ドイツの東方植民のために子供が連れ去られた(厳密には募集された)感じになっているようである?が、これが正しいかどうかは未だに謎である。子供だけ集めて、他の土地に新しい町を造ると言うのはちょっと考えにくいと思うのは僕だけであろうか?

この東方植民の話だが、この説が正しいとするなら、なんだか楳図かずおの「漂流教室」に似ている。あの結末も、未来の荒廃し砂漠化した地球を再び植民するために子供たちが送り込まれるようなストーリーになっているからだ。(盗作だと言っているわけではない)。

人間の生来のイメージに、このハーメルンの話が普遍的に存在しているのかもしれない。

ちょっと興味深いのが、この「漂流教室」でもペストが出てくること。ペストにはストレプトマイシンが有効であるが、漂流教室の主人公、高松翔の超人のようなおかあちゃん(高松恵美子)がなんとかストレプトマイシンを手に入れ、ホテルの壁を壊してそれを埋め込み、未来の息子のもとに届ける場面がある。


参考
ハメルンチャルメラ
徒然なるままに浪費癖とギャンブル癖を考える
ペスト