リスパダールは1日1回服用で良いのか | kyupinの日記 気が向けば更新

リスパダールは1日1回服用で良いのか

リスパダールはもともと1日2回服用を想定して開発されたらしい。リスパダールの副作用が1日1回服用では強く出る可能性があると考えられていたからである。その後、開発され実際に臨床試験を行った際に、1日1回処方でも副作用はそこまで強くはなかった。リスパダールの血中半減期はこの手の抗精神病薬にしては短いが、その活性代謝物は半減期が短くはないので、開発の前段階では1日1回処方で大丈夫だとヤンセン社は考えていたようである。半減期については過去ログに詳しい。一部抜粋。

リスパダールの血中半減期は4.3-4.7hrとやや短い印象であるが、その変化体9OH-RISは14.6-15.5とやや長い。変化体は脳内クリアランスも長期であると言われており、そのあたりが安定した効果の理由かもしれない。リスパダールは1日1回投与が可能であるが、副作用の関係で、1日2~3回の処方もけっこう多いのでないかと思う。僕の場合、1日1~3回投与までさまざまな人がいる。

このようなことから、ヤンセン社は1日1回処方を推奨している。実は、リスパダールの競争相手のジプレキサは最初から1日1回処方を想定して開発されているので、ヤンセンの営業戦略として、1日2回処方はやや弱点になると考えられていたような気もする。1日1回で良いのと、2回必要とでは利便性がかなり違うからである。

医師から見ても、1日2回服用が必要なのと1回で良いのではかなり違う。患者さんに1回の方が断然勧めやすいからだ。それと、2回処方では1回くらい忘れそうなのもある。コンプライアンスの点でも1回が優れているのである。

ところで、実際、臨床では1回処方でどうなのかと言うと、その服用量や併用薬の有無に関係していると思われる。状況によれば、単純に1回で良いとは言えない。リスパダールが1日1回服用で良いとしても、併用薬が1日3回服用する必要があるなら、1日1回にまとめるのはあまり意味がない。

例えば2~4mg以下の処方で、併用薬が何もないならば、もちろん1日1回服用で問題ない。眠剤くらいが併用されているくらいでもそうだ。


リスパダール 2mg
ロヒプノール 1mg
1日1回眠前


ではデパスなどの抗不安薬を併用している場合はどうだろうか?デパスの場合、眠剤に使うならともかく、抗不安の用途の場合、1日1回だけ服用している方がむしろ少ない。デパスは半減期が短いからだ。デパスの0.5mgを1日3回併用して服用する場合、

デパス(0.5) 3T   3x1
リスパダール  2mg  1x夕


または
デパス(0.5) 3T   
リスパダール  2mg  3x1


とリスパダールだけ1回で服用する方法とデパスと一緒に3回に分けてしまう方法とがある。このどちらが良いかというと、2mg程度ならば、どちらでも良いと思われる

もしこのリスパダールが8mgならば、たぶん2~3回に分けた方が良いし、3回に分けなければならない併用薬もあるなら、むしろ3回に分けた方が良いと思われる。なぜかというと、1度に飲むことによるリスパダールの副作用がいくらか緩和するからである。この場合、リスパダールによる起立性低血圧などの自律神経系の副作用が少しだけ緩和するし、8mgだとアカシジアだって多少は違うと思われる。

「リスパダールは1回処方で良い」というのは、単にヤンセンの営業戦略で言っているに過ぎない。あらゆる処方パターンをカバーしているとは言い難いからだ。実は、アメリカでは1日1回処方と2回処方を比べた調査があり、有意差がなかったという結果が出ている。これはアメリカ人だからそういう結果になりやすいし、統計的な結論に過ぎないと言う面はある。現実には、日本人にはやっとのことで2mg服用している人も存在するからである。

このブログで、「デパケンRと妊娠」の項目で次のような記載をしている。

(バルプロ酸の)高い血中濃度を避けるため、妊娠中は(中止できないケースでは)分割投与が推奨されている。

このように、血中濃度の日中の上下のぶれを避けることで意外なメリットがある場合だってある。

まとめ
リスパダールは少量服用の人は1日1回服用で問題ない。しかし多い量を服用している場合や、併用薬が1日2~3回服用のケースでは、それに合わせて分服する方が副作用が緩和する場合もある。薬に弱い人も同様である。