精神保健あれこれ | kyupinの日記 気が向けば更新

精神保健あれこれ

現在、日本では精神科(心療内科)の入院患者、外来患者の総数は302万人ほどである(平成17年)。

このうち入院患者数は35万人と、この10年であまり変わっていない。外来患者は、なんと267万人もいるのである。この数だが、平成8年では220万人ほどだったので、外来患者のみ激増しているといえる。これは必ずしも患者が増えているだけではなく、精神科、心療内科のクリニックが激増したことや、近年、精神科、心療内科の敷居が低くなり受診し易くなっていることと関係がある。

入院、外来患者総数のうち、最も大きな割合を占める疾患は、現在では「気分障害(躁うつ病も含む)」となっている。この数だが92万人くらいで、全体の約35%である。(因みに2位は統合失調症で75万人)

実はほん少し前まで、1位はダントツで統合失調症であった。平成8年及び平成17年の資料では、

平成8年
気分障害  43万(23%)
統合失調症 72万(38%)

平成17年
気分障害  92万(35%)
統合失調症 75万(28%)
(統合失調症も総数では増加していることに注意。外来患者さんが増えているのである。)


となっており、この10年で気分障害が激増したことがわかる。外来ないし入院患者で特に増えている疾患は気分障害と認知症である。神経症は増えてはいるが気分障害ほどの大きな増加率ではない(平成17年、神経症58万人)。

入院病床の疾患別の割合であるが、最も多いのが統合失調症で20万人弱である。実はこの統合失調症の割合は少しずつ減少し認知症が増加している。「入院患者では統合失調症が最も多い」というのは僕の精神保健の試験のヤマである。これは精神科病院に勤めている人ならすぐにわかる。

最近、統合失調症の入院患者さんが減少しつつあるのは、老齢の統合失調症の患者さんが亡くなるほどは若い患者さんが入院しないからと思われる。これはたぶん少子化や統合失調症の軽症化と関係がある。

しかしトータルでは統合失調症の患者さんも3万人増えており、これはたぶん人口の年齢別分布の推移が関係があるのかもしれない(団塊の世代がまだ亡くなるような年齢ではないこと)。また気分障害の外来通院患者が多くなったように、今まで無治療であった統合失調症の患者さんが医療に乗ってきたことも関係があるような気がしている。

今までに書いてきたことでわかると思うが、外来患者267万人のうち、最も多い疾患は気分障害である。これが88万人ほど。統合失調症の外来患者数は55万人であるが、この数も少しずつ増えているので、これからも統合失調症の軽症化がわかる。(平成17年)

近年は、外来数としてはまだたいした数ではないが、アルツハイマー型認知症の増加率が高くなっている。

参考
死にゆく精神病院