リスパダール8mgと幻臭 | kyupinの日記 気が向けば更新

リスパダール8mgと幻臭

リスパダールは2,4,6,8mgで処方することが多い。1mgなどの低用量のこともないことはないが、そんな人はリスパダール以外の薬を使うことが多い。

僕の患者さんで入院、外来患者すべてのうち、リスパダールを処方している人の最高量が8mg。ただ、8mgの人は1名しかない。あとはすべて6mg以下である。リスパダールの高用量を使わないのは、多めを使うくらいなら他の薬を試みるようにしているのがある。

この8mg処方している男性患者は外来の人だ。これでも時々不思議な幻覚があり「血の匂いがする」と言い、その時だけセレネースの筋注をしている。この症状はセレネースの筋注を2~3日すると必ず消失する。

幻臭というのは統合失調症の中でも相当に珍しい幻覚で、こういうのはひょっとしたら薬の副作用かも、というのを考えておかないといけない。止まりかたも変だし。

この男性の場合、リスパダールの単剤だが、他にリーマスだとかアキネトンが併用されているので、薬に関しても怪しさ満点。ところが本人に聞くと、発病当時、まだ病院にかかっていなかった頃にも「血の匂い」が出ていたのだと言う。まあ症状については怪しいのは怪しいけど、本人も薬を減らさないでくれというし、とりあえずこのまま様子をみていた。最も重要な点は、この処方でもQOLがわりあい良いというのがある。

この患者さんの場合、リスパダールを減量するのは相当にリスクがあるような気がしている。リスパダールに限らず、リーマスもアキネトンも眠剤もすべての薬物が。ずっと長く入院していた人だし、一歩間違うとまた入院生活に舞い戻る可能性もある。

今、彼は朝起きてすぐ散歩をするらしい。どうもこの散歩が「血の匂い」に関与しているような気がしている。いや、なんとなく。

「血の匂い」は、この散歩の直後に突然出現することが多い。急性ジストニアなどは、運動した直後によく出るでしょ。出る人は。

リスパダール8mgだが、セレネースに換算すると16mgに相当する。この量だけど、多いといえば多いけど、ジプレキサの満額回答の20mgと同じなのである。コントミン換算では800mgなのでメチャクチャな量では決してない。リスパダール8mgがセレネース16mgという換算も少し間違っているような気もしている。感覚的にはリスパダールはそれほど強力ではない。忍容性がさほど低くないというのもあるけど。ひょっとしたらセレネース12mgくらいかもしれないのだ。

リスパダールは上限が一時の半分になったこともあり、12mgまで普通に使われている面はある。今も上限が12mgだと思っている人がいるし、12mgまでは医師の裁量が許されているので、コメントも必要なく処方できることもある。

僕の場合、リスパダールの12mg処方は、かつてはそうでもなかったけど、今ではかなり抵抗がある。リスパダールはそこまで処方してしまうと、定型薬を処方しているのと変わらないからだ。

なぜその感覚が変わったかと言うと、上限が機械的に引き下げられたからではなく、非定型抗精神病薬が5種類に増えたのが大きいような気がしている。

参考
リスパダール8㎎の人