エビリファイが合う人、合わない人 | kyupinの日記 気が向けば更新

エビリファイが合う人、合わない人

エビリファイがその人に効くか効かないか事前に予測できたなら、それほど素晴らしいことはない。エビリファイは、失敗した時に痛手が大きすぎるから。

たまに、エビリファイによる悪化のために長患いになるケースがある。当初はそれほど悪くなっているように見えず、時間が経ってから決定的に悪化する場合もみられる。エビリファイの悪化の特徴は、失敗した時にわりあい後を引くことである。

最近、なんとなくこの人は良さそうだとか、この人はきっと失敗しそうだとかイメージが持てるようになってきた。これは主観的でしかも根拠もないのだが、臨床的に例外も少ないように見えるし、たぶん結構当たっているのではないかと思う。こういう感性をきれいに解読することはあんがい難しい。

統合失調症の患者さんでエビリファイで絵に描いたように失敗する人は、

「色が白く肌がきめ細やかな人」

のような気がしている。ただ、これは統合失調症の人に限られていて、非定型精神病、躁うつ病、うつ病の人はあてはまらないように見える。僕の感覚ではこの順に失敗しにくくなる。この理由だが、これらの人たちでは賦活などによる病状悪化の範囲、方向性が限られていることが関係しているような気がする。また、このような人たちには「エビリファイを大量に投与しない」こともあるかもしれない。

肌がきめ細やかでなくても、「色が白い」だけでも十分に失敗しやすい。いつか「セカンドオピニオン」で出てきたエビリファイで失敗していて、後にジプレキサで改善した女性は典型的な「色が白く肌がきめ細やかな人」であった。

またジプレキサ25mgで最近エビリファイを併用し始め、10mgまでジプレキサを減量した患者さんも、美人ではあるけど肌は黒いタイプなのである。

また、このことに気がつきかけていた時、透き通るほど色の白い若い女性患者にエビファイを処方し再燃を引き起こしてしまった。処方する時、いかにも失敗しそうな悪い予感があった。あの子には本当にかわいそうなことをしてしまった。悪化した時、彼女の母親から病院に電話で連絡があった。ただ、3mgしか使っていなかったし、すぐにリスパダール液を1mlだけ併用していたら、すぐに改善し大事に至らなかった。

もともと、肌(皮膚)は脳の形態や働きと関係が深い。受精卵は次第に分化するが、その中の外胚葉は中枢神経や皮膚などの組織を形作る。だから、もともと皮膚も中枢神経も由来は同じなのである。これは臨床経験とも一致していて、精神症状の悪化とともに蕁麻疹が発生したり、肌荒れが酷くなったりするのはよく診る。アトピー性皮膚炎を持つ人にうつ状態などがみられることがあるのはたぶんこのことと関係している。皮膚は、その人の脳のありかたやその状態を少しだけ見せてくれているのである。

では、エビリファイが合う人はどのような人たちであろうか?

典型的に合うタイプは、「色が黒くて肌がざらついているような人」。あるいは、色が黒いか浅黒いか、あるいは赤い(赤黒い?)ような人が合うような気がしている。

「肌がざらついている」というのがよくわからないと思うが、いわゆる「きめ細やか」の反対である。タレントで言えばジミー大西さんのような感じ。この「ざらついている」というのは自分でもけっこうアテにならないと思っていて、もっと単純化して「色が白くはない人」くらいが良いのかもしれない。なぜこの「ざらついた」いう表現が出てくるかというと、色の白い人でもたまにこういう肌の感じの人でエビリファイがフィットする人がいることから来る。

典型的な色が黒くて肌がざらついているような人で、エビリファイが全然合わない人も時々遭遇する。遭遇するというには、わりあい頻度が高いかもしれない。というより、むしろ例外が多すぎて笑える。

この理由であるが、エビリファイはおそらく確率の低い薬物だからであろう。むしろ否定的条件、「色が白い人は合う確率が低い」というだけの方が、統計的にはより正しいのかもしれない。

僕はエビリファイを試みたすべての患者さんの名前を紙に書き出してみた。統合失調症の人ではっきりとした白い皮膚でエビリファイが合っている人は2名しかいなかった。こういう風に見ていくと、肌の色の黒い白いとエビリファイはかなりの相関があるようにも見える。こういう積み重ねから、このような結論に至ったのである。

色が白い統合失調症の患者さんには、今では僕はエビリファイの処方をためらうが、処方するにしても出来るだけ少量から開始することにしている。たいてい1.5mgから開始する。悪い時は、間髪をいれず中止せねばならない。

エビリファイは極めて有用であるが、リスキーな非定型抗精神病薬なのである。

参考
非定型抗精神病薬の病状悪化率
今は楽しみにしていること
単極性、双極性の激うつ対策本部