2008年の春、バイク事故で何ヶ月も生死の間をさ迷った弟子がいる。奇跡的に一命は取り止めたものの、意識が戻ったのは半年も後だった。
私が過去に教えた弟子の中でも一際センスがあり、昇段目前の出来事だった。
2008年の年末、6週間後に「50人組手挑戦」を控えていた私は、組手稽古中に足を2箇所も骨折してしまい、絶望感に打ちひしがれていた。そんな時、なんと入院中の病院を抜け出し、車椅子に乗った彼が激励に駆けつけてくれたのだ。
どんなに苦しくても、喋ることすらできなかった彼に比べれば、骨折なんて“掠り傷”程度である。私も投げ出したり、逃げ出したりしないことにした。審査会当日も応援に来てくれるという彼に、「絶対に完遂してみせる」と誓ったのである。
2009年2月、公認審査会にて何とか50人組手を完遂。思えば、精神的には彼に助けられてばかりだった。“もうこのくらいでいいにしよう”と思う己の弱い心と、“あいつはもっと苦しい中、頑張っているんだ”と考える自分がいて、ここまで来ることができた。
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2010年となった現在、悪夢のようなあの事故から2年が経とうとしている。今でもリハビリのため病院に通っている彼が、水曜午前の「ママさん&健康クラス」に顔を出してくれた。
彼が十字を切って道場に入って来たとき、嬉しさのあまり泣きそうになってしまった。
本通道場生は、少年部も一般部もオヤジ組も、みんな強くて優しい人ばかり。もちろん、ママさんたちも大歓迎してくれた。彼は小さな子供たちの憧れであり、みんなのお手本だったのだ。
リハビリには好きなことをやるのが何より良いらしい。彼が空手に復帰するキッカケになってくれるとしたら、「ママさん&健康クラス」を始めて本当に良かったと思える。
稽古後、彼を捉まえて話こんでしまったが、寒い中風邪などひかせなかっただろうか。「白帯からお願いします」などと言う彼に、自分の五段の帯を外してプレゼントしようかと思ったくらい頭が下がった。
感動をありがとう。また一緒に稽古しよう!!
「信じる力が勇気になる」(メビウス&ウルトラ兄弟)
※「ママさん&健康クラス」は本通道場にて毎週水曜午前10時から行っております。運動不足解消、健康増進に空手の稽古がお役に立てれば幸いです。ママさんや体力に自信がない方、ぜひお越しください。