針の味。 | 境界線型録

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I Have A Pen. A Pen, A Pen Pen Pen.


 冬になると怠けものは、睡眠欲が強まる。動くのが億劫なので体が冷える。体が冷えるので、寝床が恋しくなる。寝床に納まるといよいよ動きたくなくなる。
 昨夜21時から今朝6時まで、たっぷり九時間、途中一度も目覚めることなく熟睡した。まだまだ眠りたりない。動かずにいられなくなるまで何時間でも眠り続けたい。
 が、わが家に巣くっている犬類が起こしに来る。
 「親びーん、胃袋がゴハン不足で枯渇してますしィ、下の方のタンクが満杯なんですがァ」と。
 しかたなく、布団子コロガシしてのそのそ起きだし、ポンスカッシュを飲んだ。なにがポンなのか知らないが、たまたま冷蔵庫に柑橘類の清涼飲料水があったので。
 犬類はササミ30%増量特製正月バージョンシーザーごはん刻みスナギモ入り、人類は雑煮で朝食。
 透明な朝だったから、太陽を呼吸しに、早めに外へ出た。
 生まれたての光は、ステンレスの味がした。
 縫い針をつと嘗めたとき、舌に沁みる硬い味だった。


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 澄んだ空気、冴えた陽射し、透明な空。地球の無垢の姿が、あった。
 そんな風景に身を置くと、いつも思う。
 この風景を濁らせているのは、人間だけなのだな、と。


 午前のうちに例年通り従兄弟夫妻や家族たちと檀那寺へ詣で、昼食してから、病院詣り。
 数年前の元旦とやっていることは変わりないが、ずいぶん様変わりしてきた。集う人数が、年々減っていく。時がすべてを変えていく。
 これを再生するのも、自分の仕事になってしまうのかと思うと、ちょっと荷が重い。
 が、なにも仕事がないよりは良いのだろう。眠いけど、なにかしないと。
 など思いつつ帰宅し、久しぶりに醸造酒を呑んだ。
 津軽のじょっぱりという酒。寒地らしい、硬い味がした。
 あ、朝の光の、針の味だ、と思った。


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 また、人造ではあるけれど、時の境界線を越え、新しい年が始まった。
 いま暫く引きこもりが続きそうだけど、今年も夜な夜なぼやき続けよう。