X'masだし誰も来ないだろうから、一人で居合を練って帰ろうか、と考えていると、少女がやってきた。少女のお友だちはいないので、お友だちのお父さんである合気オタクさんに電話すると、これから行くとのこと。お父さんとは私の課題を共有できているようなので、思いがけず今日はじっくり感覚稽古ができとても収穫があった。この場を借りて感謝申し上げたい。
今夜は和術にしないが、本物に近い呼吸投げ（今のところ片手掴みからの）は実現できそうな手応えを得た。たぶん、春には実現できているような気がする。乞うご期待。
さて本題だが、名前について。
ツイッターに登録する際、なんという名にするか迷った。
本名でも良いけど、別にホン名を使う必要はなく、ヘン名の方が面白い。けれど、あまり実体とかけ離れても胡散臭いので、とりあえずネット上では梅軒を使い、本物の姓をつけることにした。もっとも、梅軒とした時点で姓は知れているはずだが。
登録する時、baikenとしたつもりだったのに、今朝覗いたらbikenになっていて「Aッ！」と叫んだ。これでは美健関係者と勘違いされそうで、再登録しようかと思ったけど、すでにフォローが入ってしまっていたので諦めた。これからは美と健康の梅軒として生きていかなければ。
Aの悲劇は以上で終わり。
梅軒の名は、もちろん司箭院興仙（しせんいんこうせん）殿から戴いたもの。
宮本武蔵の「二天記」に登場する宍戸某という名から吉川英治が作りだした鎖鎌の使い手・宍戸梅軒。
記録によるとその実体は、戦国時代の武将であり、山伏、僧侶でもあったという。本名は宍戸家俊。安芸宍戸氏の一族で、細川政元に仕えたといわれている。
父は後期宍戸氏の初代・元家。毛利元就のもとで名を馳せた隆家の大叔父だそうだ。
偶然、私の姓も宍戸であり、歴史をぐんぐん遡れば、祖は宇都宮宗綱の子・八田知家（源義朝の子とも）というところに繋がるらしい。常陸を本拠とした豪族で、源頼朝に可愛がられ鎌倉幕府の長老の一人として迎えられたらしい。知家の四男家政は、茨城笠間の宍戸荘という土地に配されて宍戸を名乗ったのが始まり。
四代目時知は筑波に居を構え小田を名乗り、常陸を根城に小田＋宍戸が覇を広げたが、やがて南北朝の頃、宍戸氏は常陸と安芸に分かれ、常陸はしだいに衰退していき江戸時代に滅ぶ。安芸は毛利の加護を受けて栄える。わが方は、滅亡した常陸の流れ。司箭院興仙は、栄えた安芸の流れ。
以前、わが氏族滅亡のドラマを探ろうと歴史を掘り返すと、鎌倉前まで遡れるけれど江戸から明治がスポッと消えていた。最後は関ヶ原の合戦の後、何代目か数えていないが義利が常陸で帰農して武家の歴史に幕を閉じた。一部には北へ流れた誰かが南部藩の家老となったと言い、わが本家筋には岩手にある菩提寺の記録からその子孫らしいとも伝わるけれど、直接資料を確認した人はいない。余裕があれば私が確認したいのだが、菩提寺の所在すら、今でははっきりしない。
わが家の歴史はどうでも良いとして、この宍戸梅軒とされた司箭院興仙・家俊さんが楽しいので、私は勝手に子孫を気取っている。
その人となりは不明だが、山伏の修行に明け暮れ、ついに由利正俊より源義経以来の家伝の法（どんなものだかわからないが）を伝えられたという。愛宕の神を信仰し飛行自由の術を得たりしたらしい。空飛ぶスーパーマンだったとは、また凄い。
後に独自の武術流派を興し、武技のひとつにはもちろん鎖鎌もある。
真偽のほどは定かではないが仙術、妖術的な技も使い、細川政元に重用されたとされる。細川政元が修験道に凝っていたことは有名なので、この辺はいくらか真実もあるだろう。
政元が一五〇七年に起こった永正の錯乱で没すると、興仙は出家する。
一五〇九年の「実隆日記」という書には僧正として記載されているそうだ。元亀元年（一五七〇）四月四日、興仙は安芸国祝屋から空中に飛行し、京都愛宕山を住処としたという。
剣術は貫心流、薙刀は司箭流と呼ばれ、その術は河野大蔵通昭という人物に伝えられ、後に広島藩に伝わり広島藩剣術の主流となったともされる。
安芸宍戸の拠点だった五龍城には、彼を祀る司箭神社があるという。没年は不詳。
先祖と言ってもほとんど無関係だが、その怪しさは魅力的で、自分ももっと怪しくなりたいと思う。怪しさは人々に眉を顰めさせるものだけれど、真実ゆえに怪しく映ることも多い。どちらかというと、怪しいことにこそ真実が垣間見えたりもする。
ツイッターとは関係ないし、名前などどうでも良いが、登録をヘマしたお陰で梅軒に思いを馳せることができた。
たまには、愉快なヘマもある。
