羊たちの沈黙 | KURI of the DEAD

羊たちの沈黙

トマス・ハリス原作の“ハンニバル・レクター”シリーズの第1弾。アカデミー賞の作品・監督・主演女優・主演男優賞など主要5部門を獲得。FBIアカデミーの女性訓練生が精神病院に監禁中の天才精神科医とのやりとりのなかで連続誘拐殺人事件の解明に挑む。


【STORY】
女性を誘拐し、皮を剥いで殺害する連続殺人事件の捜査を任されたFBI訓練生のクラリス。彼女に与えられた任務は、精神病
院に監禁中でかつて患者を惨殺して食べた天才精神科医レクター博士に協力を求め、犯人の手がかりをつかむことだった。レクター博士は捜査に協力する代わりに、彼女自身の過去を語らせるが…。


【REVIEW】
もはや説明の必要がないほど知名度のある作品である。
『ハンニバル』『レッド・ドラゴン 』『ハンニバル・ライジング 』と合わせて“ハンニバル・レクター”シリーズは4作あ
るが、この作品はエピソードでいうと3番目。製作順でいうと1番目にあたる(以前の『レッド・ドラゴン』は除く)。


さて、『レッド・ドラゴン 』のエピソードにおいて、グレアムと刺し違えたかたちで逮捕され収監されたレクター博士。今起こっている猟奇的連続殺人の手がかりをつかむため、天才的な彼の精神分析力に、またしても頼ることになる。
指示を出したのは、またしてもクロフォード。指示を受けたのはFBIアカデミーの訓練生クラリスである。


まず、クラリスがレクターのもとを訪れるファーストインパクトから、中盤辺りまでの2人の心理合戦がとてもよい。若くて聡明なクラリスと百戦錬磨のレクターとは非常に対照的な存在ではあるが、お互い手の内を探り合いながら、徐々にどこか共鳴し合っていくような見ごたえのあるシーンである。
ちなみに、レクターの牢屋は原作では鉄格子だが、映画ではアクリル板。これは撮影時にレクターの顔のアップなどが撮り
にくかったことから変更したらしい。変更したのはいいが、今度はレクターの声がこもって聞き取りづらいアクシデントが発生し、今度はアクリル板に穴を開けたそうだ。この穴はレクターがクラリスの付けている香水を嗅ぎ分ける場面でうまいこと利用されている。


レクターは犯人であるバッファロー・ビルの手がかりを提供する代わりに、クラリスに子どもの頃の想いでを語らせる。この作品のタイトル「羊たちの沈黙」は、そのタイトルを聞いただけではどんな意味かよくわからないが、このクラリスの過去のエピソードで「羊」が登場する。このシーン、「羊」はクラリス自身のことで、幼児期に受けた性的虐待の忌まわしい記憶が「羊」を抱いて逃げたという記憶にすり替わっている、といった解釈も出回っているようだが実際はどうなのか?
原作では性的虐待を受けたことを明確に否定しているようだが。とにかく何でもお見通しのレクターはすべてわかっている
ような顔つきだったが。


クラリスとレクターの心理戦が終わると、次に注目したいのがレクター脱走シーン。個人的に非常に好きなシーンである。

クリップ的なもので手錠をはずし、看守2人を血祭りに上げ、そのうち一人を内臓をえぐりだして身体ごと蛾のように鉄格子に張りつけ、もう一人は顔の皮をはいで自分の服を着せエレベータの屋根の上に放り投げる。レクター自身は看守の服を着てはがした顔の皮をかぶり重傷を負った看守のフリをして倒れている。わずかな時間にこれだけのことをやるのは物理的に不可能という意見があるようだが、そんなことはどうでもよい。
救急車が到着し、運び込まれる看守を装ったレクター。救急車が走り出してしばらくすると、かぶった顔の皮をはがしレク
ター見参!救急車に乗っている人々を全員血祭りに上げ、まんまと脱出成功。非常にぞくぞくするシーンである。


そして最後は、犯人を追いつめたと思いこんでいるクロフォードのグループと一人で犯人を追い詰めようとしているクラリス、両者の行動がクロスカッティングで描写され、ミスディレクションの罠へと誘われるのである。とはいうものの、クロフォードのグループがまるで見当違いな捜査をしていただけで、いうほど意外な展開ではなかったというのが多数の意見だろう。この事件解決に至るまでのシーン、もう少し時間をかけて表現していればもっと質の高いものになったのではないか。やや駆け足で進められてしまった感がある。ような気がする。あと数10分ぐらい長くてもへっちゃらなのでもう少し丁寧に描いてほしかった。ような気がする。


それにしても、何から何までよくできた話である。クラリス、レクター、バッファロー・ビルの3人のキャラもうまく掘り下げてストーリーに厚みを持たせている。それぞれの俳優の演技も見事。特にレクターに関しては、彼以外には考えられないくらいである。
子どもの頃に助けられなかった羊に負い目を感じていたクラリス。バッファロー・ビルに捕まった女性を助けることで「弱
い者」を「悪い者」から助け出すことができたクラリス。
レクター博士の言葉通り、羊は鳴き止んだのだろうか。


最後に、この作品でもっとも特筆すべきこと、そう、この作品には、我らがジョージ・A・ロメロがカメオ出演しているのである!
監督のジョナサン・デミがこの作品のピッツバーグでの撮影の際に「ピッツバーグに来たならロメロに敬意を!」というこ
とで、ロメロにラブコールを送っったそうである。
さあ、今知った人はもう一度観て、ロメロ御大の雄姿を捜してみよう。



●関連作品・記事
ハンニバル・ライジング
レッド・ドラゴン


【MARKING】
オススメ度:★★★★★★★★★9
えげつない度:★★★3
蛾の絵はよく見たら人の姿も…度:★★★★★★★★8
禍々しい度:★★★★★★★★8


【INFORMATION】
・原題:THE SILENCE OF THE LAMBS
・製作年:1990年
・製作国:アメリカ
・監督:ジョナサン・デミ
・製作:エドワード・サクソン、ケネス・ウット、ロン・ボズマン
・製作総指揮:ゲイリー・ゲッツマン
・脚本:テッド・タリー
・原作:トマス・ハリス
・出演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、テッド・レヴィン、アンソニー・ヒールド
、ケイシー・レモンズ、ダイアン・ベイカー、ブルック・スミス、フランキー・R・フェイソン、ロジャー・コーマン、チャールズ・ネイピア、ジョージ・A・ロメロ

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