ハンニバル・ライジング

トマス・ハリス原作の“ハンニバル・レクター”シリーズの第4弾。原作者のトマス・ハリスが初めて自ら脚本も担当。

【STORY】
1944年のリトアニア。居城レクター城で何不自由なく暮らすレクター一家だが、戦禍によって避難した山小屋でハンニバルル少年は両親を失う。残された妹ミーシャともに山小屋で暮らしていると、ある日、逃亡兵グループによって山小屋を乗っ取られる。食糧が底をつき、とうとう幼いミーシャは逃亡兵たちの犠牲になってしまう。心を閉ざしたまま孤児院で育ったハンニバルは、やがて脱走し唯一の親類を求めてパリの叔父のもとへと向かうがすでに叔父は他界。未亡人の日本人女性レディ・ムラサキが彼を迎える。ハンニバルは彼女のもとで高度な教育を受けるが、次第に心の奥底に封印されていた復讐に目覚めていく…。

【REVIEW】
『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』に続く、“ハンニバル・レクター”シリーズの第4弾である。
『羊たちの沈黙』で一躍ホラー映画界のアイドル？に上り詰めたレクター博士。今回はそんなレクター博士がいかにして「芸術的な」な殺人鬼となったか、その幼少期～青年期を描いてしまった作品である。

さて、どうやらハンニバルは「レクター城」と命名された城に住むボンボンだったようである。しかし、時は第二次世界大戦真っただ中。一家は城を離れ山小屋に避難する。しかし残念ながらせっかく避難した山小屋で銃撃戦。両親が犠牲となってしまう。
残されたハンニバルは、幼い妹ミーシャとともに山小屋にとどまる。必死に生きようとする2人にさらに魔の手が。リトアニアの逃亡兵たちが山小屋へやってくるのである。やがて食料は底をつき、とうとう兵士たちはミーシャを食料に…。
戦争って怖い。ハンニバルも戦争犠牲者であり、この体験が後の殺人鬼レクター博士を形成する原点となったのである。

奇しくも「レクター城」につくられた孤児院でハンニバルは幼少期を過ごす。心を閉ざし、山小屋での出来事も記憶から消えている。しかしある日、突如孤児院を脱走。唯一の親戚である叔父を頼ってフランスへ向かう。しかし叔父はすでに他界。しかしその家には叔父の未亡人レディ・ムラサキがいた！

レディ・ムラサキ…。紫式部である。日本人である。伊達正宗の子孫という設定である。サンドイッチマンとかぶっている。原爆で家族を失ったという設定である。日本刀や兜が飾ってある部屋がある。大坂の陣が描かれた絵が飾ってある。いかにも日本好きのトマス・ハリスらしい設定である。しかし剣道の稽古は滑稽すぎる。監修を付けて撮り直しなさい。
ハンニバルは、武道や日本の作法に長けているレディ・ムラサキの影響を大きく受ける。
そう。殺人鬼ハンニバルの形成に日本文化が大きく関わっていたのだ！なぜ日本である必要があるのかはわからないが。

外国人が描く日本の姿が日本人にとってはとても違和感を感じるが、今回はじまったことではないのでスルーするとしよう。

そういえばこの作品のタイトル「ライジング」。日出ずる国＝日本ということで「ライジング」なのかな？

とにもかくにも未亡人レディ・ムラサキからいろいろなことを教わるハンニバル。特に切れ味の鋭い日本刀には相当な興味を持ったようだ。

そして、ある日市場へ行ったときにレディ・ムラサキが市場のおっさんから性的暴言を吐かれる。すぐさまハンニバルは市場のおっさんを惨殺。ハンニバルの覚醒には女性の存在が不可欠である。

その後、人を殺す芸術性？にすっかり目覚めたハンニバルは妹を殺した兵士たちを探し求めて復讐を遂げていくのである。
いくらかわいい妹の復讐とはいえ、あのハンニバル・レクターの殺人のきっかけが単純（純粋）な復讐ということでよいのかは意見が分かれるところであろう。
個人的には芸術的殺人鬼ハンニバル・レクターの形成に丁寧な理由があること自体が残念に思う。あのレクター博士は、過去・現在・未来において、常にあのレクター博士でいてほしい。

傑作『羊たちの沈黙』以降、別のストーリーでハンニバル・レクターが語られることは非常に興味深いが、どうやっても1作目を超えることができないのが残念。

【MARKING】
オススメ度：★★★★★★6
えげつない度：★★★★4
記憶の宮殿は？度：★★★★★5
禍々しい度：★★★★★5

【INFORMATION】
・原題：HANNIBAL RISING
・製作年：2007年
・製作国：アメリカ、イギリス、フランス
・監督：ピーター・ウェーバー
・製作：ディノ・デ・ラウレンティス、マーサ・デ・ラウレンティス、タラク・ベン・アマール
・製作総指揮：ジェームズ・クレイトン、ダンカン・リード
・脚本：トマス・ハリス
・原作：トマス・ハリス『ハンニバル・ライジング』
・出演： ギャスパー・ウリエル、コン・リー、リス・エヴァンス、ケヴィン・マクキッド、スティーヴン・ウォーターズ、リチャード・ブレイク、ドミニク・ウェスト、チャールズ・マックイグノン、アーロン・トーマス、ヘレナ・リア・タコヴシュカ

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