シャドー | KURI of the DEAD

シャドー

自らの小説と同じ内容の連続殺人事件にまき込まれた小説家がその謎を解くために奮闘するサスペンス・ホラー。監督は『サスペリア 』『インフェルノ 』『フェノミナ 』の鬼才ダリオ・アルジェント。


【STORY】
ミステリー小説家ピーター・ニールは、新作「暗闇の祈り」のプロモーションのためニューヨークからローマに向けて飛び立った。ローマに着いたピーターは、エージェントのブルマー、秘書のアン、ブルマーの助手ジャンニに迎えられホテルに向かう。ホテルの部屋には、ローマ警察のジェルマニ警部とアルティエリ刑事が待っていた。そこで、警察から「暗闇の祈り」の内容と同じ手口の殺人があったことを知らされる。そしてピーターの部屋に犯人からと思われる手紙が残されており「暗闇の祈り」の一節が引用されていた。そこヘ電話がかかり「お前の小説通りやった。もっと殺す」という犯人からのメッセージを聞く。その後も「暗闇の祈り」と同様の手口が続き、事件現場には「暗闇の祈り」が残されていた。ピーターはTVで対談した評論家のヴェルディが犯人ではないかと感じ、真相を明らかにしようとするが、そこには驚愕の真実が隠されていた…。


【REVIEW】
この作品も、アルジェント的スタイリッシュでサスペンスなホラー作品である。
製作年は1982年で『インフェルノ (1980年)』と『フェノミナ (1984年)』の間にあたり、乗りに乗っている時期である。たぶん。


そしてこの作品も「殺す美学」を追求したアルジェントらしい作品である。
音楽は元ゴブリンのメンバーで、相変わらず効果的な演出を手助けしている。
この音楽に合わせて一人称視点で動くカメラワーク。殺人者の普通ではない心理を描写しているようで非常にスリリング。

ストーリーは、ある意味殺人と殺人の間のつなぎのようなもので、徹底して殺しのシーンのを表現しようとするアルジェントはまさにアーティストである。
今回も鋭利な刃物(床屋のカミソリ)で、美女をスパッと殺すシーンが満載。
そしてお決まりのガラスへの首突っ込みシーンである。
本当に多い。こういうの。


さて、ストーリーはというと、人気推理作家による絶賛発売中の本を模倣した殺人事件が起きる。警察はとりあえず作者に話を聞きに行く。そこで作者が「知らん!」といってしまえばそれまでだが、作者のもとには犯人から犯行を誇示するような手紙が届く。そして推理小説を書くだけに、こういうことに興味を持ったのかこの作家は事件に足を突っ込みはじめるのである。


主人公の作家ピーターは警察を前にこう豪語する。
「消去法で残ったものは、例え信じ難くとも真実だ」。
コナン・ドイルの「パスカヴィル家の犬」からの引用らしい。
今回は消去法というよりは、本当に殺されて消去されてしまう訳だが。


事件を調べていくうちにピーターは、TVで対談した評論家のヴェルディを怪しむようになる。ヴェルディは番組前に、この作品の残虐性が社会に及ぼす影響についてピーターに否定的な意見を述べていた。

しっぽをつかむためにピーターはエージェントの助手ジャンニとともにヴェルディの家に忍び込む。ジャンニがピーターを庭に残し窓付近まで近付いたとき、ヴェルディは何者かに殺されてしまうのである。犯人はヴェルディではなかったのか?庭に戻るとピーターも何者かに石で頭を殴られて気絶していた。


犯人は一体誰なのか?



以下、古い作品ではあるが結末に触れているので注意してほしい。


この作品は謎解きものとしては非常にアンフェアである。
つまり、終盤で殺されたヴェルディが本当は犯人であり、「暗闇の祈り」の模倣で犯行を繰り返していたのである。
しかし途中から、犯人がヴェルディであることに気づいた「もう一人の犯人」がヴェルディを殺し、犯行が続けられる。つまり犯人は二人いるのである。


その犯人の真の目的は、自分のエージェントと恋仲になってしまった婚約者を殺すことにあった。一連の殺人事件に便乗したのである。後から考えると、最初の犯人は殺す道具にカミソリを使い、2人目は斧を使うというわかりやすい区別がされていた。


では犯人は誰か?


消去法でいけば自ずと犯人が明らかになる。犯人は、この映画の主人公である小説家ピーターだったのである。


ピーターの婚約者が殺される直前、ピーターの秘書のアンを自分の住居に呼び出し、エージェントとの禁断の恋をカミングアウトしようとする。しかし、アンが到着する直前、窓越しに斧で腕を切断され惨殺される。このときの白い壁が瞬く間に鮮血に染まるシーンは、非常にすばらしい。


婚約者を殺したピーターは、住居に踏み込んできたアルティエリ刑事も斧で惨殺する。
その直後、ジェルマニ警部と秘書のアンがやってきて、犯人の正体が明らかになるのである。

どうやらピーターは少年の頃、女性を殺害したが証拠不十分で捕まらなかった過去を持っているようだ。


刑事に追い詰められ、とうとう観念したピーターは、ポケットに隠し持っていたカミソリで自分の首を切り命を絶つ。
犯人死亡で、事件とこの物語は一見落着かに思えた。


だがしかし、ホラー映画にはお約束のドッキリが待っていた。
ピーターが使ったカミソリは、ボタンを押すと血のりが出る仕掛けの偽物のカミソリだった。
ここへきて、こんなことが起きようとは!
不意を突かれたジェルマニ警部は、斧によって惨殺。
ご乱心のピーターは、アンにも襲いかかる。


逃げ出すアン。
追いかけるピーター。
玄関のドアを開け外に逃げようとするアン。
追いかけるピーター。


すると玄関に、トゲだらけの金属のオブジェが!
少し前から、観ている誰もがこのオブジェが何か悪さをすると思っていただろうが、案の定バランスを崩してピーターに突き刺さる。
ピーター死亡。今度は本当に、めでたし、めでたし。


サスペリア2 』ほどの衝撃度はなかったが、なかなか楽しめる展開。
あとはアルジェントらしさ満載のショックシーンを楽しめばよいだろう。


ところで、とうとうというか、やっとというか『サスペリア 』『インフェルノ 』に続く「魔女三部作」の三作目(完結篇)がこの春に公開されるようだ。原題は『LA TERZA MADRE』。直訳すると「涙の母」。邦題はなぜか『サスペリア・テルザ 最後の魔女』。ふむ。
とある建築家が「3人の母=魔女」のために3つの館を建てたという。嘆きの母はフライブルグに、暗闇の母はニューヨークに、涙の母はローマにそれぞれ館がある。
サスペリア 』の舞台はドイツ・フライブルグだった。『インフェルノ 』の舞台はアメリカ・ニューヨークだった。そして今回の舞台はローマである。


さてさて、どんな作品になっているであろうか。



●関連記事
サスペリア
インフェルノ
フェノミナ
サスペリア2


【MARKING】
オススメ度:★★★★★★6
えげつない度:★★★★★★★7
犬がしつこい度:★★★★★★★7
禍々しい度:★★★★★★★7


【INFORMATION】
・原題:TENEBRE
・製作年:1982年
・製作国:イタリア
・監督:ダリオ・アルジェント
・製作総指揮:サルヴァトーレ・アルジェント
・製作:クラウディオ・アルジェント
・脚本:ダリオ・アルジェント、ジョージ・ケンプ
・音楽:クラウディオ・シモネッティ、ファビオ・ピナテッリ
・出演: アンソニー・フランシオサ、ダリア・ニコロディ、ジョン・サクソン、ジュリアーノ・ジェンマ、ララ・ウェンデル、ミレッラ・バンティ


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