「リーダーの仮面」(安藤広大)
非常に参考になった。
目からウロコ、は言い過ぎかもしれないが、マネジメントやコーチング、理想の上司像、に関して、一般的に、もしくは自分のなかで常識と認識していたことの多くが否定されたが、ほぼすべてにおいて納得感があったし(どこかで聞いたりした話とつながったりもした)、さらに、自分のなかで何となく悩んでいた部分が晴れた、というところもあった。
どこまで徹底できるか、自信と勇気と忍耐力が必要になるだろうが、取り組みやすいところから試してみようと思う。
以下、備忘
ルール
場の空気ではなく、言語化されたルールをつくる
位置
対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする
利益
人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす
結果
プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る
成長
目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ
リーダーの仕事の大きなゴールは、部下を成長させ、チームの成果を最大化させること。
優しい言葉をかけて、その場では「いい人だ」と思ってもらっても、その言葉は頭に残らないし、後から効いてこない。
「嫌われて人が離れていくんじゃないか?」。そんな心理的ハードルを乗り越えて人間関係の悩みを生まないようにするのがリーダーの仮面の本質。
そもそも、会社は孤独を埋める場所ではない(孤独を埋める場所は会社の外にたくさんある)。
無機質なタイプのマネジャーのほうがうまくいっている、という事実。
チームが成長するかどうか。それは、リーダーが感情的に寄り添うことをやめられるかどうかが鍵を握る。
頭を切り替える質問5つ
1 「いい人」になろうとしていないか?
緊張感がなくなり、なあなあの関係になってしまう。また、平等性を保たなくてはならない。距離をとる上司のほうが組織は伸び、部下も成長する。
2 「待つ」ことを我慢できるか?
手を差し出せば部下の失敗は減るかもしれないが学ぶ機会を奪ってしまう。
モチベーションが気になりテコ入れしてしまうこともNG(しょっちゅう「暑気払い」のようなことをしても、効果は最初だけでだんだん効かなくなる)。
3 部下と「競争」していないか?
やるべきことは部下から情報を吸い上げ、それをもとに判断を下すこと。過去のやり方を押しつけて、競い合うのはNG。
4 「マネジメント」を優先しているか
自分が成果を出していなくても、チームとして成果を出していれば、「お前がやれ」とは言われなくなる。
5 「辞めないかどうか」を気にしすぎていないか?
組織のルールにあわない、成長意欲が低い、という社員が去っていくのはしょうがない。会社が成長して、自分の成長を認識できていれば辞めないはず。頑張りたい人間は全員活かす。しかし、辞めさせないために部下に合わせる必要は全くない。
【ルール】
組織を運営する上で、かならずルールは必要。
個人的な感情を加えてしまうと問題が起きる。例「あの人は許されるのに、なぜ自分はダメなのか」
ルールが明確でないとストレスになる(リーダーの顔色をうかがう、空気を読みながら行動する、みんなでルールを探り合って疑心暗鬼になる、等)。
ちゃんとルールがある会社のほうがギスギスせず人間関係が良好。
大事なのは、ルールがないことによるストレスから部下たちを自由にすること。
標語のようなルール、曖昧なルールではなく、具体的なルールを言語化する。
ルールを守らない人がいても特別扱いをしない。「好かれたい」「いい人に思われたい」という感情はグッと抑え、リーダーの仮面をかぶる。
個人的な感情で動くのではなく、組織の人間として仮面をかぶり、ルールを守らせる。
×「上が言っているから」「みんながやるようにしているから」
◯「私がそう決めたので、以後、守ってください」
情報だけを見て決める。「嫌われないかな」と感情的になるとリーダーの軸がぶれる。
【位置】
リーダーの視点は「未来」に向ける。
厳しい上司は、今の部下にとっては嫌な上司だが、「あのとき大変だったけど頑張っておいてよかった」と未来の部下にとってその上司はプラスになる。
優しい上司は、今の部下にとってはいい上司だが、部下は成長できないため未来の視点ではマイナスの存在。
仮面をかぶり、「今の利益」を脇において「未来の利益」を選ぶことがリーダーの役割。
リーダーは「お願い」をしない。「言い切る」
「時間があるときで構わないので資料をまとめておいてくれない?」
「やりたくなかったら断ってくれていいんだけど、この仕事できるかな?」。
これらは(1)決定権が部下にある(2)責任の所在が曖昧、の点で間違い。
結果が悪かったときに、部下に責任を押し付けることができてしまう。
責任の所在が曖昧なため、部下が社長に直接アプローチしてしまい、部長のリーダーとしての役割が機能不全になることがあった。
メリット提示もダメ。例「今度飲みに連れて行くから」
部下のやる気を気にする必要なし。仮面をかぶり、「いい人」を演じることはやめる。
ほうれんそうに対し、怒らない(ミスを隠したり、報告が遅れたりする)、喜びすぎない(「あたりまえ」の基準が下がる)。
ほうれんそうは「機械的に事実だけを聞く」。感情的な評価をしない。
できなかったときの言い訳を聞いてくれるリーダー(寄り添うリーダー)が、成長の止まっている状態を正当化してしまう。
「孤独を感じる」が、できるリーダーの条件。
ピラミッド組織では、立場が上にあがるほど孤独になる。
楽しいけれど緊張感がなくて志望校に落ちるのか、厳しいけれど緊張感が溢れ志望校に受かるのか。会社は厳しい塾に近い。
部下から飲みに誘われなくなったら、優れたリーダーになったサイン。
×「なんでできなかったんだ」「ダメじゃないか」
◯「未達ですね。次からはどうしますか?」
×「やればできるじゃないか」「すごいな」
◯「達成ですね。お疲れ様でした」
【利益】
人間は、利益があれば動く。利益が減ることには恐怖を感じ、利益が減らない方向へ動く。
「リーダーについて行きたいか」もすべて「自分にとって利益があるかどうか」。「利益にならない」と思えば、いい人であっても、ついてこない。
仕事に厳しくても、「数年後には成長できるはずだ」と、利益を感じさせることが大事。
先に「集団の利益アップ」、そのあとに「個人の利益アップ」。
1人の部下に好かれるかどうかではなく、チーム全体のパフォーマンスに視点を置く。
部下の報告からは、事実だけを拾う。「『ほとんど』と言ったけれど、それは何件中の何件か?」
言い訳に逃げて現状を変えようとしない部下には、ちゃんと詰めていく必要がある。あくまで淡々と、事実を確認する。
仕事の価値観を伝えて心を動かそうとする行為は逆効果。多くの部下は「何を言っているのだろう?」で終わり。最悪の場合「上司とは違う価値観だから、頑張らないでおこう」と言い訳の材料にされる。
仕事の意味や価値観は自分自身で見つけるもの。人から押し付けられるものではない。
説教をしたくなる気持ちをグッとこらえるのも、仮面の役割。
競争をできるだけ可視化する。人には自分の順位を気にする気持ちがある。いっそ見えるように出してしまったほうがいい。
【結果】
お客さんが喜ぶからといって、「組織の利益」を減らすような行為は、絶対に評価してはいけない。例「値下げしてほしい」「24時間対応してほしい」など。
プロセスを無視し、結果だけを管理する。
残業している姿を見て、「頑張っているな」と声をかけたとすると、「上司がいるときは残業したほうが有利だ」「結果が出なくても、遅くまで頑張っているといえばいい」という思考になる。
最初に「目標設定」をして、ちゃんと仕事を任せる。最後に「結果」を報告してもらい、評価する。
できるだけ数値化した目標設定にする。必ず「期限」と「状態」を提示する。
次にやるべきは、結果報告に対し、客観的事実をもとに「できなかったことを指摘する」。
×「一生懸命さが足りなかった。もっとやる気を見せるように」
◯「週20件訪問して3件成約ですね。目標5件でしたので未達です。次はどうしますか?」「来週は40件訪問します」
「できるかな?」とお願いするのではなく、言い切る。
【成長】
「結果」と「評価」のギャップを埋めていくことにより「成長」する。
人は経験とともにしか変わらない。
しかし、多くの人は「知識を得れば変われる」「偉い人から話を聞けば変われる」と勘違いをし、本を読んだり、偉い人の話を聞いたりするだけで自分が変わったような気分になる。
話としてわかるのと、実際にやってみるのとでは大違い。「まず1回やらせてみる」ということを徹底する。
経営者は「社員の人生」に対して責任がある。
「稼ぐ力を身につけさせてあげる」ということ。
会社、家族、友達、趣味、SNS、人はさまざまな集団に属している。そのなかで唯一、会社だけが「糧を得るため」のコミュニティ。家族や友達、その他多くのコミュニティは「糧を得るコミュニティ」があってこそ成り立つ。つまり、会社がすべての土台になる。
いいリーダーの言葉は、遅れて効いてくる。