「プラネタリウムを作りました」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆

まさに「趣味が高じて」という話。

小学生のときに夜光塗料で作ったオリオン座の美しさに感激し、高校生のときにオーストラリアで見た星空のすごさに驚き、(プラネタリウムの星の数は数千から1万個が常識なのに)一個人のアマチュアが100万個以上の星を投影するプラネタリウムを自宅の部屋で作ってしまいます。ないなら自分で作る、と微細な穴をあける露光装置やクリーンルームまで自分で作り、プラネタリウムを完成させました。

やっぱり、好きなことをするのが一番ですね。才能や技術よりも、好奇心と執念が、突出した成果をもたらします。


星空を作りたいという願望の根本はなんだろうか。それは美しいものを作りたいという願望だと思う。星空が美しいのはなぜか。ある人はそれを、遺伝子の記憶であるという。僕らの祖先は何百年にもわたり、街明かりなどに邪魔されず、無限の星空を当たり前のように見てきた。都会の人間が美しい星空を見られなくなったのは、わずかここ数十年のことだ。けれども僕らの遺伝子は、たかが数十年で変わることはない。美しい星空をしっかり覚えている。だから自然と、星空を求めるのだ。
(中略)
そしてプラネタリウム作りには、多くの人々に見てもらう喜びがある。美しいものを作り出し、そしてそれを多くの人に見せたいと思う。この素朴な思いがあった。子供のころには、夜光塗料の星空を見せ、手製の矢印ポインターで星を解説して喜んでもらう嬉しさを味わった。僕には兄がおり、高校時代はロックバンドのボーカルだった。モノ作りに没頭して地味だった僕とは対照的に、兄はいつも華やかな光を浴びていた。けれども、プラネタリウムを作り、自らマイクをもってその星空を案内することは、当時の兄がやっていたことと、まったく同じことのように思う。美しいものを作り出し、より多くの人に伝える喜び。テクノロジーという絵筆で、思い描いたものを形にする喜び。これこそが、僕のプラネタリウム作りの原動力になっているのではないかと、今改めて思う。





プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星/大平 貴之

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