川越style『第三回「狐宵祭」蓮馨寺2016年12月11日関東狐の年越し準備大合わせ祭』 | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
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川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

「今年は12月11日に開催されるんだって」「12月11日ね。チェックしておこう。絶対行くよ!」
今年は開催されるのか、いつ開催されるのか、その時が来るのを今か今かと待ち構えていた狐達は、
日程が発表された直後から話は持ち切りとなり、各地の狐達から参加表明が相次いでいた。
今年も大きなうねりが生まれ、各地の狐達がここに集結しようとしていた、河越に。

こっそりと境内に足を踏み入れると、すでに多くの狐達が集まって歓談していた。
どの狐も長旅の疲れも見せず、邂逅を楽しんでいるようだった。
今年もまた、狐達のお祭りが始まろうとしていた。。。
 


 



2016年12月11日(日)連雀町にある蓮馨寺で行われたのが、第三回「狐宵祭(こよいさい)」。


今年もお寺の境内全部を使って、狐一色のお祭りが開催された。
主催はお馴染み、河越に棲息する狐達による河越藩狐衆。
回を重ねるごとに広がりを見せ、大きくなってきた狐のお祭り。時が経つのは早いもので、
今年で三回目となりました。
昨年のあの様子を覚えている人もいるでしょうか。
狐達の圧倒するようなパワーを感じたはずですが、
境内には、人人人・・・ではなく、全国津々浦々からやって来た(本当に!)狐狐狐が境内に溢れ、一日限りの交流を楽しんでいた。
昨年から会場を蓮馨寺としている狐宵祭は、狐による狐のためのお祭りで、
狐達が楽しめるものが境内一杯に広がっていた。
お祭りと言うと、人間ならば屋台に音楽にと種々の催しを想像するでしょうが、
狐達にとってもお祭りの楽しみは同じこと。
境内にはおめかしするための雑貨屋台が出て、美味しい食に、パフォーマンスなどを楽しみに、狐達はここで一日を過ごすのだ。
人間達のお祭り会場では、一つの場に一日居るなんて現実的でないかもしれないが、
朝集まって来た狐達の多くが、夕方お祭りの最後まで居て、人間的感覚ではあり得ないことに驚きつつ、そこは人智を超えた狐ワールドなのだ。
根底にあるのは、狐達にとっては狐宵祭は特別なお祭りで、格別な思いを抱いて来ているというのがある。
師走は人間界は年末年始の準備に何かと忙しくなる時季ですが、これもまた狐にとっても同じこと。
このお祭りで販売される狐雑貨を手に入れ、さらにおめかしをして、狐界も準備にてんやわんやと忙しくなる年末年始を無事に迎えたいと集まっている。
狐自体は今各地でその数を増やしてはいますが、というか、もともとたくさんの狐が棲息していますが、表に出てくるようになった狐は近年急激にその数を増やしている。
人懐こく、社交的である狐は、人に限らずいろんな生物を交流するのも大好き。
ゆえに狐のイベントには各地からたくさんの狐が毎回やって来る現象が起こっていますが、
ただ、狐のためのイベントはまだ数は少なく、関東でも数えるほど。
という事情から、河越がある意味聖地化して、これだけの狐が集まっているのだ。
関東でも数が少ない狐のイベントが、
なぜ、これほどまでに河越で根付き、盛り上がっているのか?
河越はもともと稲荷神社が数多くある街であり、
人の目に触れていないだけで、昔から狐は人間の生活に密接に関わって暮らしてきた。
近年になって河越の狐達によって「河越藩狐衆」が結成され、
狐による狐のためのお祭りとして盛大に開催されたのが、狐宵祭。第一回は2014の事でした。
あれ以来河越藩狐衆の動向をこっそりとウォッチし続けてきましたが、
彼ら(という言い方も狐に当てはまるのか?)の活動は日を追うごとにめざましく広がり、
年に一度の狐宵祭の他に、月に一度の小さな狐の祭り「狐宵の市(こよいのいち)」もすぐに始め、今に続いている。
これだけの話しでも、狐がいかに今大きなうねりとなっているのがお分かりいただけるはず。
2016年6月の狐宵の市一周年記念の開催の時には、狐に化けて元町二丁目の六塚会館に潜入しましたが、
とんでもない狐の数と熱気が会場を包んでいて、圧倒されたのを憶えています。
今、狐はここまでになっているのか。。。。

いや、狐の世界を奇異なものとして際立たせたいのではなく、狐も、人間と同じように暮らしていることを伝えたい。
人も狐もあるいは異界の者も、みな共存しているのがこの世。
考えてみれば、河越という街自体、歴史ある街で、いろんな者が棲んでいる街であるのは、皆さん日々感じていることでしょう。
異文化の交差点、異文化交流の街でもあることはご存知の通りです。
ここが面白いところで、河越の懐の深さでもある。歴史ある街なので保守的一辺倒なのかというとそうでもなく、
河越では国際交流イベントも頻繁に行われていて、
そう、この蓮馨寺では2016年11月には、「川越唐人揃い」、「かわごえ国際交流フェスタ」という河越を代表する国際交流イベントが開催されたばかり。
あの日も世界各国色の民族衣装を着た人たちがこの場に集まり、お互いの文化を知り、異文化交流を楽しんでいた。
人間達のあの色鮮やかな民族衣装に比べたら、狐の衣装なんてむしろおとなしいもので、
和がベースになった和テイストなので、街の雰囲気にもしっくり。

川越唐人揃いにしても狐宵祭にしても、
国際交流の舞台となる蓮馨寺、この場所を会場にできるという川越的意味の大きさ。(!)
蓮馨寺という、河越の中でも歴史と由緒あるお寺が、異文化交流のために、狐のために境内を一日貸している、
そこには住職の理解と応援があるし、人と狐などが境界線なく仲良く共存してこそ河越なのだという信念も含まれているようだった。
河越藩狐衆達も、「狐宵祭の雰囲気にぴったりな場所が蓮馨寺」と話し、この場所は譲れない。
お寺という落ち着いた雰囲気に浸り、集まれる喜び、「この場所だからより狐宵祭は楽しいの」と集まった狐達は口々に話していました。

狐達の集結に続き、バロックダンスにスチームパンクと、異界の人達の到着で境内は賑わいを増していく。
さらには・・・河越でお馴染みのキャラクター、ミケさんも駆けつけていた。
そう、2016年11月の二日間、「小江戸蔵里キャラクター祭り」を主催したミケさんです。
この日は・・・中市本店さんを抜け出してこっそり遊びに?いや、見回り役?なのか、
面を被って見事に狐に化け、雰囲気に染まりながらスムーズな運営を見守っていた。もう、人間以外はいるんじゃないかという大集合。
狐に化けている人間も含めれば、ありとあらゆる生物がここに集まっているようだった。
ミケさんがなぜこの場に?という疑問符は、川越を知る人にとってはすぐに合点がいくことかもしれない。
答えは、あの小江戸キャラクター祭りにあります。
キャラクター祭りで司会進行を務めていたのが、河越藩狐衆の紅狐さんだったことは記憶に新しい。
二人、、、いや、ミケさんと紅狐さんの二者は河越に棲む者同士昔からの知り合いで、
ミケさんがキャラクター祭りの司会を信頼する紅狐さんに頼んだことからのあの光景で、
そのお返しとばかりに、今度はミケさんが狐宵祭に協力していたのだった。河越の猫と狐の友情物語。
人間と猫、人間と狐、のみならず、
猫と狐も実は共存していることにも、河越の生物多様性を見るよう。
さらに境内には・・・キャラクター祭りお馴染みの「小江戸バットマン」も
「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!狐のお祭りを楽しみに来たぜ」と颯爽と参上し、交流は深まっていくのだ。


朝から集まり始めた狐達は、時間が経つごとに数を増やし、お昼頃には境内一杯に溢れた。

 


 


確かに狐達は街にたくさん居て、それらが一堂に会したらこうなったというだけで、常に共に暮らしていることをその光景は思い出させてくれる。
右を見ても狐、左を見ても狐、そして・・・前を見ればバロックの衣装、後ろを振り返ればスチームバンク、
この時空の混在さ、ここは平成時代か?今自分が何時代にいるのか分からなくなるような錯覚に陥る。
こんなことが年の瀬の川越で起こるなんて。。。なんていう異文化交流、もっと言えば異時空交流。
広場にもいわゆる「人」達は居ることは居るけれど、
みな異世界に迷い込んだことに足がすくみ、眼前に広がる光景に面食らっているようで、
ただただ遠くから見守るか、そっと参拝を済ませてお寺を後にしていくか、二つに分かれた。
それでも。好奇心というのは何者をも動かす。
中には興味を惹かれて狐に近づき、話し掛けたりする観光客らしき人もいて、いつの間にか交流が生まれているのだ。
それに留まらず、狐に手を引かれて違和感なく輪に溶け込んでいる人間もいて、なんという異文化交流でしょう。(!)
「川越は狐がたくさんいるんだね」と納得していたようだった。
そうなのだ、狐や異界の者達が集っている場は、みな交流するために集まっているもので、
人も狐も異界も関係ない、入ってしまえば意外にも、なんだかんだで一緒だねと打ち解けてしまうものなのだ。
そして気付くはず、存在に当初は気圧されるが、
しばらく見ていると・・・境内に居る者達みな、とてつもなくお洒落だということに。。。
なんなのだ、このハイレベルなお洒落センス。みな只者ではないことが伝わってくる。
狐の普段の格好は確認したことないが、イベントで見る狐達のファッションはいつも高度に洗練されていて、
人前に出るということに、あ、いや、狐前で出ることに、人間達より鋭く気を遣っているのが伝わってくる。
人間達の暮らしを見て、「あんな風に着物を着てみたい」、「あのファッション素敵だな」と日ごろから抱いていた思いを、
自分達のお祭りではここぞとばかりに思う存分発揮していた。その意気込みを想像したら、やはり、人間以上の熱量があるのは当然かも。
狐達は、着物、、、ではあるが創作的であり、アレンジした和服と言った方がいいかもしれない。
和を基にして、いろんな要素を大胆に採り入れ、自分だけのスタイルを作り上げていく、
その若いセンスが、和服の固定概念を軽々と飛び超えていく。和服もここまで自由になれるのだ。
見ていると、広場のあちこちで交流と共に写真撮影会が展開される。
それぞれがこの日のために用意した一張羅を着込み、これでもかとおめかしして、遠路はるばる河越までやって来た。
自分が一番おしゃれだろうと誇り、周りのファッションに刺激を受け、お互いに交流する。
来場者同士の交流が活発で、実はこれが今年の狐宵祭の特色でもあった。
 


 


その趣旨を河越藩狐衆の紅狐さんはこう説明していました。
「今年の狐宵祭は、狐だけでなくいろんな者たちが蓮馨寺にやって来ているの」。
狐だけでなく?
「そう、時空が捻じ曲がり、異界の扉が開いた結果、いろんな生き物たちが入り乱れて集まってきた。長年河越に居るけれどこんなこと初めてだわ。」
驚きを隠さない表情で紅狐さんは話していた。
ここに集まる者みんなのファッションを見て欲しい、広場全部ファッションショーと話す。そして紅狐さんも多くの狐達に記念写真を頼まれていたのだった。
狐だけのお祭りから、異文化交流へと発展を見せる狐宵祭。
各地からの狐の到着がひと段落した、時刻は12時、
河越藩狐衆が広場に整列し、開会の儀式が始まる。
 


出店者、出演者の紹介のあとに、黒狐さんが始まりの挨拶をして、狐達による狐達のお祭り、狐宵祭がいよいよスタートしたのだった。

狐宵祭の会場では、狐達が喜ぶ催しがたくさん。
狐達のお目当ての物販は、毎回人気の「狐面堂」さんや「だいきょ屋」さん、「リサイクルきもの 福服」さんが出店。
やはりこの日もこれを目当てに来た狐も多く、特にだいきょ屋さんの狐面を購入したいと、朝から長蛇の列が出来ていた。
特に朝早くから集結していた狐は、このだいきょ屋さんの狐面の抽選に並ぶためでもあったのだ。今回も凄い人気ぶり。。。
さらに講堂室内では、多数の人気作家さんの出店がずらりと並び、
狐達はあれもいいなこれもいいなと見て回っていた。
広場の一角には、お祭りには欠かせない即席茶屋が出現。
境内には普段から松山団子さんや太麺焼きそばのまことやさんもあるが、この日だけの出現となったのが、おとまち小江戸&ROTOM屋台。
おとまち小江戸秋まつりに河越藩狐衆の紅狐さん達が登場していた縁もありますが、
どうして人間体がここに見事に潜入できたのか?と訊ねると、
「紅狐さんの妖力で狐に化けられました。今日は狐さん達に喜んでもらおうとスペシャルメニューを作ってきましたよ!」と力強く語っていた。
狐達の好物だろうと、スープにお肉にドリンクに各種取り揃え、香ばしい香りを境内に漂わせる。
美味しいものに目がない狐達、
さらに長旅の疲れでお腹ぺこぺこになっていた狐達は、まずは腹ごしらえとばかりに行列を作っていました。
団子や焼きそばも狐には好評で、「おお、これが河越の味か!」、「これが河越のB級グルメか!」、「このスープ美味しい!」と土地の味を味わっていました。
人間同様、狐も団子や焼きそばが大好き、人の生活のすぐ隣で暮らしているが故に、人と同じ味覚を有するようになったのは必然かもしれない。
列が列を呼び、おとまち小江戸&ROTOM屋台は見事に完売御礼。
他にも河越の街にはどんな美味しいものがあるのだろう、と蓮馨寺から外へ繰り出して行く狐の姿も数多く見られた。

また、飲食屋台の横に目を向ければ、「狐癒処」という提灯が風に揺れている。
ここにも・・・昨年同様、人の目には見えないけれど、狐達が楽しみにしている屋台が出現。
特別に紅狐さんの妖力を借りて、狐の目にしか見えないものを見ることができた屋台は、
全国各地から来た狐達がその長旅の疲れを癒すためのお休み処として昨年に引き続き今年も出現していた。人間界的言葉でいうところの、マッサージです。
この狐癒処、、、ここだけの話しなのだが、実は知る人ぞ知る、
河越の仙波町にあるタイ古式マッサージ「トゥクトゥク」の皆さんが狐に変身して出展しているものだったのだ。
昨年もこっそりこの場所に出店していましたが、今年も見事に誰の目にも狐と成り変わり、次から次へと狐の身体の疲れを癒していたのだった。
もちろん普段は人間を相手にしているトゥクトゥクさん、狐相手の難しさもあるようだったが、
「この日のために狐マッサージを皆で研修しました!」と強い意気込みで臨んでいた。
運営を司る河越藩狐衆の面々も合間を見て狐癒処を利用し、「やっぱり疲れを癒すにはトゥクトゥクさんのマッサージが一番だよ」とご満悦でした。

境内に広がる、買い物や食に癒しに、そして他の狐達などとの交流を楽しむ光景、
普段は人目を憚って生きる狐達が、ここぞとばかりにお祭りを謳歌しているようだった。
以前と比べたら狐達は街に出るようになってきたが、こうも堂々と姿を晒し、楽しんでいる光景というのは本当に見れない貴重なこと。。。
そんなお祭りがここ河越で行われているという事実。
楽しそうな光景に、寒さを吹き飛ばすように、広場の気温はぐんぐん上がっていくようだった。
時間差で続々と河越に到着する者達で、いつしか広場は立錐の余地もないほどの賑わいに。
紅狐さんも「こんなにたくさんの狐や異界の人達に来てもらえるなんて。。。」と感慨深げに全体を見渡していました。
広場のあちこちでは、久しぶりの再会に歓喜する声、お互いの近況を話し合い、気になるファッションの狐などがいれば思い切って話し掛け交流が生まれる、
様々な人間模様・・・ではなく、狐模様が展開していて、河越藩狐衆達が願ったような光景その通りのものが広がっていた。
そうなのだ、もちろん、狐達が心置きなく交流できるよう、迎え入れる河越藩狐衆のおもてなしがあったことをここに記しておきたい。
お祭りとは常に、集まるだけでなく、集まった者を細心の心遣いでもてなす側がいてこそ成り立つのだ。

12時半、広場中央に空いた空間を取り囲むように狐達が集まり始めていた。
今か今かと待っているようだった。
境内を冷たい風が吹き抜ける。今年も狐達に楽しんでもらう催しとして彼らがやって来た。天心流兵法だ。
今回は第一部、第二部と二つの演武を披露し、最初の回は人型で行う。
人場は物音一つしない静寂に包まれ、固唾を呑んで狐達が見守る中、ゆっくりと天心流兵法の面々が姿を現した。
天心流兵法は流祖より武士の剣として、伝えられました。
江戸武士のしきたりより工夫され、立っては二本差での稽古を常とし、屋内では太刀を置き、小刀のみ帯びての刀法
また胡坐の技法や甲冑を着用しての介者剣術、外物として素槍、十文字槍、薙刀、鎖鎌、柔など豊富な技法を伝承する武術です。
一つ一つ迫真の演武を披露、広場中の者達がその世界観に一気に引き込まれていく。
 


 


 


 


 


 


 


 


 

さらに続いて13時からの催しは、狐宵祭初めての試み。まずはバロックダンス。
河越藩狐衆の黒狐氏と親交のある、ベルサイユ狐王の使いとして、今回初の参加。
ベルサイユに宮殿が出来る前よりかの地に棲んでいた狐達が、宮殿での日々を除き見て、真似し始めたのを発端に、
ベルサイユの狐達はみんなバロックダンスが大好き。
ちなみに、日本でも小田急沿線の離宮にて大使館直営のバロックダンス教室があるので、
興味ある人は参加してみてはいかがだろうか。
生エレキヴァイオリン演奏に合わせて、華麗に舞う。
 


 




自分達のダンスを魅せた後は、「ぜひ一緒に踊りましょう♪」と周りに呼びかける。
思ってもみなかった展開に、狐達は一瞬たじろいでいたが、すぐに、「はい!」と手が上がってバロックダンスの輪の中に入っていった。
こうした場面では人間だと恥ずかしがってしまうものですが、
せっかくのお祭りなんだから楽しんでこそ、という狐達のこの積極性。
みなバロックダンスは初めての体験だったでしょう。
そのステップに「難しい。。。!」と弱音を吐きつつも、
しかし、教えてもらうことを必死に覚え、一緒に踊ろうと奮闘する狐達。
ただ、さすがの運動神経で、みな飲み込みが早く、しばらくすると違和感なく踊れるように。
 


狐とバロックというのも、考えてみればなんという取り合わせでしょう!
本来なら交わることのない時空の者達が、少しずつ融和し一つになっていく奇跡。
一つのダンスをみなで踊り終えた時には、確かな一体感が生まれていました。
その様子を見ていた他の狐達も、「自分も参加したい!」と名乗りを上げ、バロックダンスに挑戦していく。

 


時空が違ってもダンスという共通項によって一つになる、
川越でこれまで様々な奇跡的な異文化交流を見てきましたが、狐とバロックも間違いなくその一つに加わることになりました。
そしてスチームパンク。
時空を司る彼らが颯爽と現れ、広場のランウェイを歩くと、
そのファッションに会場からため息が漏れる。さあ、ファッションショーが始まる。
実はスチームパンクは、初回の狐宵祭にも遊びに来ていたのだが、今回は本格的なコラボとなり、時間旅行の合間を縫って蓮馨寺に舞い降りていた。
今回、狐に限らず、いろんな時空の者が終結できたのは、スチームパンクの面々が時空を捻じ曲げたからでもあったのだ。

 


 




スチームパンクとは、蒸気機関が高度に発達発展したもう一つのパラレルワールドの住人達。
ジュール・ヴェルヌの冒険小説『海底二万里』、SFアクション映画だと『ワイルド・ワイルド・ウエスト』、
アニメでは『スチームボーイ』や『天空の城ラピュタ』、『サクラ大戦』などのレトロでカッコいいデザインをSF要素としてフィーチャーしたのがこのジャンル。
そんな世界観を思い切り楽しんでいる時間旅行者のファッションショーです。
どちらもファッション性が高く、オリジナル性に溢れ、
周りで見守る狐達も、「このファッションかっこいい!」、「あの小物かわいい!」など声を漏らし、自身のファッションの参考にしているようだった。
 


 


 


 


 


 


 


 


 


さらに今回は、蓮馨寺が会場であるけれど、蓮馨寺境内で全てを完結させず、ここを基点として展開を考えていた。
今までは祭りの全てが境内に詰まっていたが、
それだけに終わらせず、せっかく各地からやって来る狐が河越の街を知ることなく帰るのは残念なこと、
ここを起点として河越の街の散策に繰り出してもらおつとしていた。
狐宵祭、狐宵の市で恒例となっている 河越各地のお店に棲息する狐を探して回る「河越城下の狐探し」もこの日も開催。
お店に設置されたQRコードを集めるとカードが貰えるスランプラリーのような企画で、
「せっかく河越に来たんだから、QRコードを探しながら街を練り歩こう」
「河越ってどんな街なんだろう、歩いてみよう!」
蓮馨寺からQRコードを集めに出発していく狐達も多かった。
狐宵祭にしても狐宵市にしても、もう河越が狐一色に染まっていく。

今回河越に初めて来た狐もたくさんいたでしょう、もちろん昨年、いや、第一回から参加している狐はもっとたくさんいたはず、
当初から比べると、単に狐宵祭、狐宵市を楽しむだけでなく、
河越という街含めて楽しもうとする狐が増えているのは、河越藩狐週達の思いが浸透してきた結果かもしれない。
例えば、蓮馨寺目の前、山門から伸びる立門前通りには、和菓子店の「彩乃菓」さんのお菓子に惹かれて並ぶ狐の姿も多く見られた。
狐はお菓子にも目がないのだ。
・・・それと、小江戸バットマンも・・・気になって立ち寄っていた。
「ここのお菓子美味しいぜ!」と狐達に河越を案内するバットマン。
美味しい和菓子に、大満足の狐達、
さらにあちこちのお店でQRコードを見つけ、脇道に入って行っては「ここにも素敵なお店があるよ!」と見つけ出していく。
さすがの狐の嗅覚、河越ガイドには狐がいてくれると助かるかもしれない。
境内では、特設ブースにて紅狐さんMCによるラジオぽてとの公開収録が行われていた。
 



そして天心流兵法による第二部の演武の時間。
今度は人型ではなく、古武術ならぬ、狐武術として披露する。
二部目では技を狐宵祭バージョンにアレンジして演武を魅せる。
 


 


 


 

今年の狐宵祭、狐達は蓮馨寺で思う存分狐雑貨などを買い込み、
年末年始の準備を整え、みな大満足の表情を浮かべていた。
なにより、普段顔を合わせる機会の少ない各地の狐達の交流、時空の違う者達との交流を楽しんだ一日なのだった。

辺りはだんだんと日が翳り、そしてあっという間に境内は夕闇に包まれていった。
名残惜しそうに狐達は最後まで留まり、残された僅かな時間を噛み締めていた。
完全に日が暮れて、ついに今年の狐宵祭も終りの時を迎えようとしていた。
最後は、閉会のセレモニーとして再び河越藩狐衆達が整列し、舞いを奉納し、
黒狐さんが閉めの言葉を述べて幕を閉じたのだった。
 



これにて本当の終わり。
最後まで見届けた狐達は、また故郷へ帰らんと散り散りに去って行く。
「またここで来年会いましょう!」
「また来年!」
「それまでどうかご無事で!」
言葉を交し合い、それぞれの地へ旅立っていったのだった。
また来年、、、また来年、、、またここで集まれますように。

狐達のお祭が終わった川越は、(人間達の目からしたら)表向き何の変化もなくいつもの平穏な街が広がっている。
まるで、そんな日がなかったかのように。
しかし、よおく目を凝らして見れば・・・以前よりちょっぴりおしゃれになった狐の姿を捉えることができるはず。
『狐達は年末年始の準備を済ませたようだな』
さあ、私達も良い新年を迎えるために、年の瀬の準備に取り掛かっていかなくては。
狐と共に、街は明日もやって来るのだ。