「手作りかあちゃん弁当の店」お母さんのおかえりなさいの味 | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
川越のヒト・コト・モノ、川越物語りメディア、小江戸川越STYLE。
川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

 

ここは、新しくも懐かしいお店。

 

心機一転のお店に足を踏み入れ店内を見渡すと、

場所も雰囲気も変わったけれど、あの声はまったく変わってない。

かあちゃんの声もキャラクターも全然変わってないませんでした。当時のまま。。。!

 

この元気な声を聞くと

一気に昔の様子が思い浮かんで懐かしい気持ちになります。
「おかえりなさい!」
そんな表情で迎えてくれました(*^^*)

 

川越で長年親しまれた

「韓国館」というお店があります。

 

そのお店は本川越駅前で16年間営まれたお店でした。

16年。

一言で言ってしまうと簡単ですが、

長い長い道のりですね。。。

韓国館を閉店したあと、満を持して新たに開いたお店が同じ川越にあります。

 

「韓国館の時も今も、全部ぜーんぶ手作りで作ってるんだよ!かあちゃんの味なんだよ!」


料理はまったく変わらず当時のまま。
手間をかけた母の味は変わりません♪

かあちゃんは、

時に力強く、時に柔和に、大きな声で、ささやくように、そして笑顔を忘れず。

感情がはっきりしていて、表情豊かで、
こういうところが愛されてきたんだな、と改めて思います。




話しを聞けば聞くほど、
かあちゃんのかあちゃん、つまり自身のお母さんへの感謝、愛情の言葉が溢れてきます。
そして聞きながら自分の母のことも、つい思い出していたり。。。
料理というのは、お母さんの思い出がたくさん詰まっているもの。

お母さんを思い出すお店へ。


 

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*



川越駅東口から、アトレとモディの間の道を東に。
三番町交差点を真っ直ぐ進むとセブンイレブンがあります。
その先の交差点から細い道を真っ直ぐ進みます。

 

ウェルシア仙波町店のすぐ横にあるのが、
2013年12月オープンの
「手作りかあちゃん弁当の店」です♪

 


 


今度の土曜日3月22日に迫った

KOEDOアジアフェスにも出店して頂き、
かあちゃんの手作りの味を提供します。

「たくさん作るからね!楽しみにしててね!」

と、かあちゃんやる気になってます!
 

かあちゃん弁当のことを考えると、

やはり韓国館の16年は見逃せません。

 

16年というお店の道のりは、

常に順風満帆だったわけでなく、

特にお店を始めた最初の1年間は、大変なことばかりだったと言います。

それでも続けていくうちにだんだん口コミで、

かあちゃんの人柄と料理の美味しさが評判となり、

お客さんが増えていきました。

体調を崩されて韓国館を閉めてからは、

そんなに歩かなくてもいい小さなお弁当屋さんをここにオープン。


韓国館と手作りかあちゃん弁当の店は別のお店だけれど、

料理は韓国館とまったく同じで、

かあちゃんの手作りという点は一緒です♪

今でもキムチ、ケジャン、トッポギは手作りしてます。

 

ここのお店はオープンから間もないですが、

韓国館からのお客さんに近所の方、毎日来る方もいて

顔なじみの方が増えてきました。

 

お店の中には小さなイートインコーナーもあって、

ポットにはご自由にと、とうもろこし茶。

それもかあちゃんが煮込んで作った手作り茶です。




 

メニューは韓国料理をメインに、

お弁当屋さんとして定番のお弁当も用意しています。
お弁当に入れるおかずは、毎日日替わりで全て手づくりしています。


 

中でもやっぱり気になるのは韓国料理。

韓国館から続く、手間を掛けた料理はここでも健在でした。

豚肩ロース弁当、韓国唐揚げ弁当、

チヂミ、韓国のり巻き、チャプチェ丼、ビビンバ、

豆腐チゲに味噌チゲなどなど。

 

コムタンスープは5日間煮込み、
プルコギの肉もじっくりタレに漬け込んでいて。

サムゲタンまであるお弁当屋さんってなかなかない。。。



牛プルコギ丼♪


 

骨付きカルビ弁当食べたら、

変わらないタレの味に懐かしい気持ちになりました。。。

骨付きカルビ弁当。


このお店は、お弁当屋さんであるけれど、

当時の韓国館を気軽に、という感じがありますね(*^o^*)

お弁当屋さんでここまで手間を掛けていて、

むしろ以前より大変なんじゃ、と思ったり。。。


かあちゃんは、手作りの味にこだわります。

そこにお母さんへの想いが込められています。

 

ここで作るのはほとんど、昔お母さんから教えてもらったお袋の味。

かあちゃんが日本で考えた料理もあるけれど、
韓国料理はお母さんが家で作っていたものを小さい頃から教わり、

その通りのものを今でも作っている。

 

「ここで出しているのは、お母さんの味そのままなの!
全部手作りだから大変だよ!時間かかるものばかりなの。

かあちゃん倒れそうだよ(笑)でも、料理するの好きだし、

お母さんは全部手作りしてたんだからね!

お客さんが美味しいって言ってくれるから頑張れるんだよ!」

 

パワフルなかあちゃんは以前のままでした(*^^*)


「昔ね、出かけて家に帰ってきたら、

お母さんがおかえり、お腹減ったでしょっ、これ食べなさいって作ってくれたもの、

かあちゃん弁当はそういうものばかりなんだよ」

 

チヂミは昔、雨で外に出掛けられなかった時に

家で食べるおやつに作ってくれていたそう。

お父さんも雨の時には、「チヂミ作って!」とお母さんに頼んで、

マッコリのつまみにチヂミをよく食べていたそう。

チヂミには家庭の風景がある。



 

トッポギはおやつによく食べたなあ、と。

キムチは今でも一番好きだよ、と

料理にまつわる話しや思い出は止まりません♪

 

のり巻きは、おにぎり感覚で馴染みのある食べ物。

中の具材には卵、ソーセージ、韓国おでん、たくわん、ほうれん草、かまぼこ。

 


例えば学校の遠足の時、日本がおにぎりなら韓国はのり巻き。

おにぎりものり巻きもそんなに変わらない。

 

「だから、日本も韓国もそんなに変わらないんだよ」

 

辛い食べ物ものもあるし甘いものもある、酸っぱいものもある、

変わらないんだよ、とかあちゃん。



 

かあちゃん弁当では、

食材・調味料は日本のものと韓国のものを合わせて使用しています。

韓国で唐辛子もコチュジャンも醤油も塩も

自分で買いに行っているそう。

砂糖も、日本と似ていてもやっぱり味が違い、

韓国料理なら韓国の砂糖でないと、と言います。

 

「調味料は大事。日本のと全然違うの。

だから年間に何回も韓国に仕入れに行かないといけないの!」

 

仕入れに必ず行くというのがカラットンにある大きな市場。

 

「川越にも市場があるでしょ??そことまったく同じ。

あんな風に魚でも肉でも野菜でも何でも揃うんですよ」

 

その中でも唐辛子に関しては、特にこだわりを持っています。

かあちゃんの知り合いが唐辛子を栽培していて、

それをいつも分けてもらっているそう。

唐辛子は、新鮮で美味しいものじゃないとダメ、と語ります。

市場で買ったものと地元で栽培されたものは全然違い、

丁寧に手作りされた唐辛子は、辛さの中に甘さがある。

 

「唐辛子はね、キムチ作ると全然違うのが分かるんだよ!」

 

知り合いからは、

年間90キロの唐辛子を取りに行ったり送ってもらっているそうです。

 

かあちゃんのために、かあちゃんを応援するために、

韓国のキョンサンドやチョルラドで二人で唐辛子を栽培しています。

現在90歳になるという二人、

 

「韓国館の時から、うちのお店のために唐辛子作ってくれてるの。

ありがたいことなんだよ!」

 

その二人は、かあちゃんの亡くなったお母さんの古くからの知り合いで、

ずっと付き合いが続いていると言います。

 

そして自分で韓国に行けない時は、

韓国にいる自分のお兄ちゃんに頼んで送ってもらうこともある。

お兄ちゃんは韓国館の時からずっと

妹のことをいつも気に掛けてくれて、

足りないものはすぐに送ってくれるそうです。


かあちゃんお手製のキムチには、

唐辛子に大根、にんにく、しょうが、タマネギ、ニラ、長ねぎ、

フルーツ、エビの塩辛、煮干、など

いろんな材料で白菜を漬ける。

 

今の季節だと作るのに二日。

季節によっても作り方は変わって、

夏に作るキムチと冬のものは作り方を変えなければならないそう。

 

「ほら、こんな風に作ってるんだよ。こっち来て見て!」


お店の中に入ると

大きなキムチ専用の冷蔵庫が!

 


 

「これで白菜四分の一だよ」


包丁で手早くカットしていきます。

キムチもお母さんからの味なんですか??

 

「もちろんだよ!お母さんが教えてくれたそのままの作り方だよ!」

 

 



 

時間の掛かるキムチ作り。

韓国料理のお店でも

買ってきたキムチを出すお店もある中、

キムチはかあちゃん弁当でも人気なので、

毎日のように手作りしています。

 

カクテキも自家製。

「大根の葉っぱ入れない人もいるんだけど、

葉っぱ入れたら美味しいよ!

体にもいいし、捨てるのもったいないよ、捨てるのダメよ!」

 

大変だけど、料理は手作りが美味しいんだよ、

何度も何度もそう口にしていました。

お母さんの味で思い出に残っているのはやっぱりキムチ。

キムチだけで5種類も出てくるんだよ、

他にもおかずがたくさんあって、朝からみんなお母さんが作ってくれた、と

感慨深げに語ります。

 

お母さんは大変ながらも全部手作りで作ってくれた、

自分も同じようにしたい、と。

 

かあちゃんのお母さんとは、どんな方だったんでしょう。。。


 

かあちゃん、キムチは小さい頃から作っていたんですか??

と聞くと、かあちゃんはふふふと笑顔になり、

顔を上げて遠くを見つめました。

キムチには自分のお母さんの思い出が一番詰まっている。

 

「うちのお母さん凄い方なんですよ。。。」

 

そして、キムチにまつわる

自身の大事な話しを打ち明けてくれました。

かあちゃんは、生まれも育ちのソウル。


 

「うちのお母さんはね、私が小さい頃からずっと病気がちだったから、

『自分がいなくなったら誰も助けてくれないから』って、

私が小さい時から料理にしてもなんにしても、生活のことを全部教えてくれたの」

 

兄弟はお兄ちゃんがいたけれど、一人で立って生きていけるように、と

それはそれは厳しくしつけられていたそう。

 

「お母さんは本当に厳しかったよ。私はいつも、はい、はい!って返事して言う事聞いてた」

 

中学校くらいの遊びたい時期にも、お母さんのしつけは厳しく、

特に料理に関しては徹底していた。

今かあちゃん弁当の店に並んでいるようなメニューは、

その当時からほとんど作っていたと言います。

 

そのお母さんも、

かあちゃんが21歳の時に亡くなりました。

 

「お母さんが亡くなったあとにね、

『ああ、あんなに厳しかったけど、

今こうして自分でなんでもできるのは、お母さんが教えてくれたおかげなんだな』って

その時に初めて気付いたの」

 

お母さんが教えてくれなかったら、

今なんになっていたか分からないよ、韓国館もかあちゃん弁当もやってないよ、と

笑顔で話します。


 

そしてかあちゃんが結婚して日本に来たのが、1985年。

最初は上野に住んでいて、

川越に来て韓国館を始めたのが1997年のことでした。

 

韓国館は、かあちゃんにとって初めての飲食店経営。

最初は全然うまくいかず、

毎日もう辞めよう・・・と考える日々だったと言います。

 

「でも辞める気持ちがあるんだったら、『もっと頑張ろう!もっと頑張ろう!』と思ったの」


根性!根性!根性だよ!と3回続けます(*^^*)

当時の韓国館は、朝の5時まで営業していました。

一年間頑張ったら評判が広がって、お客さんが増えていった。

それが嬉しかった。

常連客も増え、地道に続けてきた16年間でした。


「努力すれば、どんなことでも叶うよ!

16年間いろんなことがあったよ、何度ももうダメだと思ったよ、

でもまた頑張ったね!」


お店を辞めようと何度も思い、いいことの方が少なかった16年だったかもしれない。
でも常連のお客さんがたくさんいたからね、と笑顔になります。

日本に来て29年。

 

「日本に来てよかったと思ってるよ。
私は財産はないけれど、息子という財産があるし、それが一番の財産だよ(笑)」

息子さんの顔を見て頑張ってきた日々だった。

「今ね韓国行っても落ち着かないの。

仕入れに行っても用事済ませたら早く日本に帰りたくなる。

成田に着いたら、やっと着いたってホッと安心するよ」

 

それで川越着いたら、故郷に帰ってきた気持ちになる。

 

「結婚したばかりの時は韓国に帰るのが嬉しかった、今は逆」


人間変わるもんだね、と笑いながら話します。


震災の時もお兄さんから、帰ってこいと言われたけど、
私はここがいいの、日本がいいの、と電話で返事した。

 

「私は日本が合うの」

 

食べるものは韓国と似てるし、

日本の食べ物だったから自分に合っていた。

 


かあちゃん、韓国館で頑張って、ここでもまだまだ頑張りますか??

 

「もちろん頑張るよ!私は死ぬまで頑張るよ!」

 

大きな声で宣言しました(笑)

 

「本当は商売大変だよ。。。」


でもね、と続けます。

「かあちゃん弁当の方が面白い、お客さんの嬉しい言葉が嬉しい。

毎日疲れるけど、今日はおかずに何入れようか考えるのが楽しいんだよ!」

かあちゃん弁当は、まさに家のご飯のように提供できるところに

やりがいを感じているようでした。

 

かあちゃん弁当のかあちゃんという言葉には、

お母さんへの深い愛情が込められていました。
何度も何度もお母さんへの感謝を口にし、
本当にありがたい、と。


「出かけて家に帰ってきたら、

お母さんがおかえり、お腹減ったでしょって作ってくれたものばかりなんだよ」

今自分がお客さんを迎える時も、
おかえりなさいっていう気持ちで迎えたい、

だからお店の名前をかあちゃん弁当にしたんだ、と。

 

おかえりなさいがある場所。

温かいお母さんの味でした。。。♪

 

「手作りかあちゃん弁当の店」

「川越市仙波町3-1-1」

10:00~22:00


かあちゃんは、

日本の食べ物も韓国のものも変わらない、と言います。

 

韓国のり巻きは好きだけど、

でももっと好きなのが

「日本のおにぎりが好きなの!」

手を叩いて力を込めます。

 

鮭に明太子が一番好きなんだそうです。。。(*^o^*)

 

人間は変わるもの、でも、変わらないものもたくさんある。

お母さん、ありがとう。


 

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