総選挙の最大の争点は原発?消費税?TPP?外交・安保?_03 | Hidy der Grosseのブログ

総選挙の最大の争点は原発?消費税?TPP?外交・安保?_03

総選挙の最大の争点は原発?消費税?TPP?外交・安保?_03

 

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http://ameblo.jp/konrad-nachtigall/entry-11424683065.html  


02 (前半) ↓
http://ameblo.jp/konrad-nachtigall/entry-11426036055.html

02(後半) ↓
http://ameblo.jp/konrad-nachtigall/entry-11426036055.html


20121216日投票の総選挙。   私たちが投票先を選ぶにあたって最も重視するべきなのは、各候補者・政党の原発・エネルギー政策でしょうか?   それとも、消費税率引き上げやTPP交渉参加への賛否、あるいは景気浮揚策といった、経済・財政に関する姿勢でしょうか?   はたまた、各党の外交・安全保障政策でしょうか?

 

上に挙げたいずれの政策分野も、重要です。   けれども、ある1人の有権者が理想としている政策の組み合わせが、ある政党の政策の組み合わせと、完全に一致するとは限りません。   ある1人の有権者の意見が、経済・財政政策ではX党の公約に一番近いけれども、しかし、X党の外交・安全保障政策は、その人の考えとは正反対。   そして、外交・安全保障政策で最も一致するのはY党だけれども、Y党の経済・財政政策は、この人の望む方向とは真逆を志向している。   こんなことは、あり得るでしょう。

 

01」「02」では、もう少し具体的に、国防・安全保障重視のAさん、および、原発廃止派のBさんという有権者を想定して考えてみました。   今回は、民間活力重視・市場重視派のCさんという有権者を仮想して、シミュレーションしてみましょう。

 

Cさんは、「日本の経済を元気にするためには、規制緩和を断行して、企業が闊達に活動できる環境を整えるのが大事だ」と分析しています。   Cさんは、「市場原理主義(市場ファンダメンタリズム)とか新自由主義(ネオリベラリズム)と呼ばれるやり方は、譬えて言うならば、『使いどころの難しい強い薬』のようなものだ」と承知しています。   「たしかに、過去には『レーガノミクス』とか『サッチャリズム』で米英が高い経済成長率を取り戻したことがあったが、それは『雇用なき景気回復』で、貧富の格差が拡大してしまった。   英国のメディアでは、『小さい政府』路線の時期に、教育(学校)・医療(病院)・鉄道といった社会資本が荒廃・弱体化した、と しばしば指摘されている」と、弱点を認識しています。   それでもBさんは、「けれども、政治家と官僚と既得権益を持っている企業、この3者による膠着した支配体制を壊さなくてはいけないのではないか。   若い優秀な起業家たちが新しいアイディアを実行しようとしても、『この法律に違反するからダメ』と潰されてしまうことのないように、公による経済への口出しをなるべく撤廃するべきでなかろうか。   そうでないと、停滞している今の日本の経済に、活気を呼び戻すことはできないだろう」と考えます。

 

そこでCさんは、「比例代表では、みんなの党に投票しようかなあ」という気分になっています。   「ネオリベラリズムには、確かに深刻な副作用がある。   だから、すべてを市場に任せれば良い、とも思わない。   けれども、今は、規制緩和派の政党にそれなりの影響力を発揮しうる程度の議席を持たせて、既得権が過剰に保護される現在の制度を改めるための力として利用する、そういう時ではなかろうか」という戦略です。

 

Cさんは、「自民党に対しては“大企業優遇”という批判がある。   確かにそういう側面は否定できない。   ただ、大企業の利益のみを擁護してきたわけではなかろう。   そうでなければ、農家や中小業者が、これほど自民党を支持しているわけがなかろう」と、見ています。   「ただし」と、Cさんは考えます。   「そのやり方が近代的・現代的であったとはいえない。   “票あるいは金と引き換えに、自党を支える利益集団に対して個々に庇護を与える”という型の、いわゆる利益誘導政治が行われてきたのではないか。   すなわち、運動員や政治資金を提供する業界は手厚く保護するが、あまり協力しない業界には冷たくする、とか、自党の強い地域には多く公共事業を回す、とかいうような、一種の取引関係が成立していたのではないか (政治学用語でいう『パトロン クライアント関係』)。   そして、“農業を発展させる”あるいは“中小・零細の製造業者・小売業者の経済的な体力を強化する”という、根本的な施策が疎かにされ、結果としては、農民・中小業者の首を絞めることになっているのではないだろうか」。   Cさんは、従来のこうした構図を全否定するわけではありません。   「そういう『パトロン クライアント関係』には、市場主義のもたらす弊害を多少なりとも緩和する機能があった」と評価しています。

 

「けれども」と、Cさんは考察を続けます。   「国内の社会・経済構造も国際環境も大きく変わったわけで、古いやり方では、もう立ち行かなくなっているのではないだろうか」 「“旧来方式を一夜にしてご破算に”というわけにはいかないのは、理解できる。 しかしながら、『現在の枠組みを解体する』くらいの思い切ったことを主張している政党を躍進させ、今後の政治では、その党の提案をマスメディアも大きく取り上げざるを得ないし、政権党も無視するわけにはいかない、という状況をつくる必要がありそうだ」 「そのくらいの刺激を与えて、様々な利益集団によって支えられていて古いしがらみをなかなか断ち切れない大政党にも、“このままでは、次の選挙が危うい”という危機感を持たせるのが良かろう」。

 

ただし、Cさんは、「ネオリベラリズムの政策を推進するにあたっては、欠かすことのできない前提がある」という信念を抱いています。   「“競争原理を重視して、努力した者が報われる社会にする”とはいっても、競争の条件が不平等では、話にならない」 「どのような家庭に生まれた子も、等しく学び・成長できる環境、これが欠けていては、『小さい政府』路線は格差の固定を助長するだけだ」 「たとえどんなに貧しい家に生まれた子供でも、裕福な親の子弟と同程度の努力をすれば、大学院まででも進学できる、そういう世の中でなければいけない (生来の才能が同程度と仮定して)」。   これは、彼にとって譲れない一線です。

 

Cさんの この理念は、もっぱら道徳的な観点によって支えられている、というわけではありません。   「功利主義的に考えても、第1に、能力のある青少年が「貧しいから」という理由だけで その能力の開花の機会を奪われてしまっては、社会全体にとっても損だ。」 「第2に、『努力しても報われない社会』『どういう親から生まれたかで、その子の一生が決まってしまう社会』では、労働意欲の減退、志気の低下が起こる。 生産性が落ち込み、犯罪も増加し、結局は、「教育の機会を公平にするために費やす資源」を削って得られる利益など、帳消しになってしまう」。   「風桶」のように感じる人がいるかもしれませんが、Cさんは世界の実情を観察したり、統計資料を分析したりして、そのように論考しています。

 

というわけで、Cさんは、みんなの党の教育政策を調べることにしました。

 

すると、選挙公約『アジェンダ2012』の「II成長戦略で経済復活!  C地域の実情に応じた教育を推進する  2.地域による基礎教育・公教育を充実」に、こう書いてあります。

 

「①教育の機会均等が保たれるよう公教育の立て直しを図る。」(p16)

「⑧親の所得格差で教育格差が広がらない環境を整備する。」(p.17)

 

余りにも素っ気なくて、「本当にやる気があるのか」とCさんは疑ってしまいました。   教育政策全般について言えば、この『アジェンダ』の内容が希薄というわけではなく、中にはCさんにとっても共感できる提案もあります。   けれども、教育格差回避のための具体策は、「II成長戦略で経済復活  B社会保障不信」の解消と「世代間格差」の是正によって、若年世代には希望を、高齢者には安心をもたらすセーフティネットを再構築する  4.「子ども(児童)手当」の抜本的な見直しと少子化対策」で

 

「⑦高校、専修・専門学校、大学等の高等教育機関への奨学金制度を拡充(出世払い・返済不能型の活用等)する。」(「返済不要型」の間違い?  p.16)

 

と述べられているくらいです。

 

「選挙公約パンフレットに、党の政策研究の成果を全部盛り込むこともできないだろうから、教育格差是正の具体的手立てが『アジェンダ』に載っていなくても仕方ないかもしれない」とCさんは考え、みんなの党の公式サイトで教育政策に関する文書を探しましたが、教育格差是正に関わる提言はありませんでした。

 

みんなの党の市場指向とは逆の 社会指向の政党である日本共産党や社会民主党(社民党)が、選挙公約の中で、みんなの党も主張している給付型奨学金の導入のほか、

・教育予算のOECD平均並みへの引き上げ、

・高等教育(大学等)の無償化

といった、具体的な政策を掲げているのとは、対照的です。

 

「この党は、『競争重視』と『教育の機会均等』との関係について、しっかりとした哲学を持っているのだろうか」という疑念を抱きつつ、Cさんが『アジェンダ』のを詳しく調べていると、次の箇所に目が留まりました。

 

II成長戦略で経済復活  A経済成長戦略で雇用を増やす  3.科学技術振興による潜在成長力底上げ」

「⑤東京大学民営化などを推進。大学は国の予算に依存することなく自立的に資金を集め、成果によって競い合う研究機関へと脱皮。大学・大学院を「産業のサービス機関」として位置づける。」

 

Cさんは、開いた口がふさがりません。   驚きから立ち直ると、今度は、怒りすら湧いてきます。   「この人たちは、福島第1原発の事故という、世界的な大惨事から、何も教訓をくみ取っていないのか」。

 

本来は、利潤第1主義に歯止めをかけ、周辺住民の命と健康を守る、という役目を果たすべき学者たち。   彼らが、事業者と過度に密接な関係を結んでしまい、むしろ、電力会社の安全軽視の姿勢に拍車をかけてきた。   それが、あの破局的事態の大きな原因の1つではないか。   この期に及んで「大学・大学院を「産業のサービス機関」として位置づける」などとは、どういう神経をしているのだろうか。   と、Cさんは憤懣やる方ありません。

 

今世間は、電力業界と原発学者、そして業界から献金を受け取ってきた政党、原発政策を推進してきた官僚、彼らの関係にばかり目が行っている。   もちろん、俗に「原発村」とか「原発利益共同体」と呼ばれるこのコミュニティは、並々ならぬ問題を抱えている (ここには、大銀行や原発メーカー、そして大手ゼネコンも加わるわけだが)。   けれども、この構図は電力産業特有のものではない。   例えば、医療機器・医薬品メーカーと医学者の関係。   医学者・薬学者が製薬会社に便宜を図って、危険な薬を野放しにする。   献金を受け取っている政治家や天下り先を確保したい役人が、それを看過する。   そして、多くの犠牲者を出す。   そういうことが、今までに何度起きたことか。   スモン、サリドマイド、薬害エイズ…。   みんなの党は、同じような悲劇を、これから先も生み出し続けるつもりなのか?

 

Cさんの怒りは止まりません。

 

アスベストにしてもそうだ。   厚生労働省自身の検証でも

「…我が国は、実態面でみるとこれらの国(英独仏 – Hidy)に遅れをとってはいないものの、現時点で考えると、平成4年のリオ宣言以降の予防的アプローチの考え方(完全な科学的確実性がなくても深刻な被害をもたらすおそれがある場合には対策を遅らせてはならないという考え方)もあり、生命・身体に係る法令上の禁止措置については、欧州諸国を含め世界的な動向をみつつ実施するという考慮が十分なされたとは言えないものと考える」

と結論付けざるを得ない。   多くの医学者・生理学者が強い調子で「早く対策を打て」と業界・役所を突き上げていれば、少しはマシになったかもしれないのに、実際にはそうはならなかった。   現在でさえ、この有様だ。   「大学・大学院が「産業のサービス機関」として位置づけ」られ、「自律的に資金を集め」るよう強制されなどしたら、財界の利益に盾突いて物申せる学者など、ほとんどいなくなってしまうではないか。   みんなの党というのは、人の命を何だと思っているのか。   このようにCさんは考え、「この党に票を投じることはできない」と決めました。

 

「とはいうものの、では、私はどの党を選べばよいのか」。   Cさんは展望を失ってしまいました。

 

03」はここまで。

Aさんはすっかり困ってしまいました」「Bさんは途方に暮れてしまいました」「Cさんは展望を失ってしまいました」とネガティヴなことばかり言っていてもしょうがありませんから、次回「04」以降は、「いかなる考え方で政党選択をするのが合理的か」「どういうやり方で妥協点を見出すのが、最も賢いだろうか」ということを究明していきましょう。

 

 

参考:各党の選挙公約など

20121116日の衆議院解散直前の時点で国会に議席を有しており、かつ、比例代表の全11選挙区に名簿を届け出ている政党。

衆議院解散直前の全国会議員数順。

 

民主党

民主党の政権政策 Manifesto

http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto2012.pdf

 

自由民主党

重点政策2012

http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/seisaku_ichiban24.pdf

 

日本未来の党

未来への約束

http://www.nippon-mirai.jp/promise/promise.pdf

 

公明党

衆院選重点政策 manifesto 2012

http://www.komei.or.jp/campaign/nipponsaiken/manifesto/manifesto2012.pdf

 

みんなの党

アジェンダ2012

http://www.your-party.jp/file/agenda201212.pdf

公式サイト ― 政策 ― 資料

http://www.your-party.jp/policy/files.html

 

日本共産党

総選挙政策 日本共産党の改革ビジョン

http://www.jcp.or.jp/web_policy/data/2012_senkyo-seisaku.pdf

 

日本維新の会

骨太2012-2016

http://j-ishin.jp/pdf/honebuto.pdf

 

社会民主党

衆議院選挙公約 2012 総合版

http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2012/data/manifesto_all.pdf

 

『アスベスト問題に関する厚生労働省の過去の対応の検証(追加)』2005929日、厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/topics/050929-1f.html





http://ameblo.jp/konrad-nachtigall/entry-11426036055.html