第12話 認められない團長
我が團の幹部の決定方法について記事 を書かせて頂きましたが、決定時期は概ね10月後半から11月初頭にかけてでありまして、團室に團員が集められ次期人事の発表がございます。対外的には11月の乱舞の集い で発表があり、12月の幹部交代式後、関係各位に幹部交代状を発送させて頂く事になります。内部的には発表があるまでは当事者の3回生はもとより下級生にとってはちょっとした話題でありまして、團長は○○先輩に違いない、とか様々な憶測が飛ぶ訳であります。
そんな噂も飛び交わない代もございます。次期幹部たる3回生が1名の時でありまして、我が團48代の歴史の中で4代、そういう代がございました。次期幹部が1名でありますと、自動的にその者が團長となりますので、予想も何もあったものではありません。今回はこの4名の中の1名が主役であります。
某3回生氏、同期がいないという過酷な環境の中、3回生をほぼ務め上げ後は幹部就任を待つのみであります。下級生時代が辛かった分、来るべき幹部のポスト=團長に心躍らせておりまして、ご機嫌な日々を送っておりました。幸いにも時の幹部は御簾の奥に静かに鎮座するタイプでありまして、行事以外は滅多に姿を現さず、その希少性が貫禄となっている感じでございました。故に日常では3回生が唯一のトップである事が多く、自然、日を追う事に鼻息も荒くなる次第でございました。
そんなある日のこと、乱舞の集いも近づいて参り、滅多に登場せぬ時の幹部氏が久々に團室に登場され、團室に緊張が走ります。溜まった郵便物に目を通し、3回生氏の報告に鷹揚に耳を傾けます。すると書類を探る手がピタリと止まりまして、出て来た物は書道部に依頼した書が返ってきた包みでございます。
「何か頼んでたっけ…」
と言いながら包みを開ける幹部氏。すると中からは「新幹部紹介 △△代目團長○○○○」と墨痕鮮やかに書かれた乱舞の集いにおいて新幹部紹介を行う際に使用する巻紙と同様の内容が半紙に書かれた名刺 の原稿でございました。温厚の士で知られた幹部氏の顔色が変わります。
「おい、いつ誰がこんな人事を決めたんや!」
と当然の叱責。恐る恐る幹部氏に
「押忍、差し出がましいとは思いましたが、これ以外に考えられないと思いまして準備をした次第であります」
と弁明をする3回生氏でありますが、勿論、幹部氏の怒りは収まりません。
乱舞の集いで使用する巻紙でありますが、これは新幹部人事を綴った後に日付と任命者たる現團長の名前を記し押印する書式になっているのですが、この時のこの書状には遂に印が捺される事はありませんでした。今でもこの時の幹部氏は
「俺はあいつを團長に任命にした覚えはない。團長の名を騙るとは不届き至極」
と仰いますし、3回生氏は
「あのオッサンが普段、團室に来ないもんやから、出来る事は先にやっておくのが当然やろう。それに1人しかおらんのに、他にどんな人事があるんや」
と仰います。この不毛な論争は永遠に続く事でありましょう。
八代目甲南大學應援團OB会
広報委員会