南部靖之パソナ代表「雇用消滅」「フリーターが安定した働き方」「オーディション型雇用でぱっと解散」 | すくらむ

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 芸能界の事件が政財界にも波及か?――とネット上でも話題になっているようですので、あらためて、南部靖之パソナ代表のこれまでの言説をまとめて紹介しておきます。南部氏が得意気に語る映画制作の「オーディション型雇用」で、企業は「必要な時に、必要な能力を持った人を適度の数雇えばいい」というのは、まさにいま竹中平蔵パソナ会長が主導し安倍政権が狙う労働者派遣法の大改悪によって生涯派遣・正社員ゼロを招くところに、ぴったり重なっているわけです。南部氏によると日本から雇用という言葉すらなくって「自立した個人が対等の立場で企業と契約する」のが当然なので、パソナでは率先して「労災の適用受けず雇用保険も免れる」こともやってきたということでしょう。こうした南部氏の言動は、まさに労働者の「過労死は自己責任」「失業も自己責任」が当然だと言っているのと同じだと思います。加えて、労災を適用し雇用保険等で労働者を守ろうとする労働行政は民営化しなければいけないのだと南部氏は国会の参考人として明言。こんな南部靖之パソナ代表や竹中平蔵パソナ会長の言動に「SAY YES」とはいかないのです。

 ▼フリーターが安定した働き方
  フリーターなら終身雇用可能

  (「日本経済新聞」2005年10月21日付より)

 映画を制作するときのように、決まった期間だけ人やお金が集まり、終わったらぱっと解散する。僕はそれを「オーディション型雇用」と呼んでいる。正社員でいるとリストラや定年がある。フリーターのような立場なら本当の意味で一生涯の終身雇用が可能だ。だから今は不安定といわれているフリーターが安定した働き方になる。

 ▼「必要な時に、必要な能力を持った人を適度の数雇えばいい」
  (人材の流動化 雇用 何が起きている
   「朝日新聞」1987年1月26日付より)

 これまでは企業が人を選んで採用していた。だが、これからは人が企業を選ぶ時代になる、と思う。つまり、これだけ経済情勢が激しく変わると、企業にとって終身雇用や年功序列制を続けるのは、難しくなってくる。必要な時に、必要な能力を持った人を適度の数雇えばいい。

 そうなると、雇われる側の考え方も変わってくる。例えばデザイナーやカメラマンのように、1人で何社かの企業と契約していれば、仮に1社が倒産しても食いはぐれることはない。

 ▼これからは「雇用する」「雇用される」
  という言葉すら消えていく

 (「毎日新聞」2003年1月9日付より)

 これからは「雇用する」「雇用される」という言葉すら消えていく。自分たちでSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)を作り、自立しながら仕事を作り上げていく時代だ。しかもメーカーといった難しいものではなく、身近なことから物事を作っていくんだ、という意識を持つべきだ。


 ▼昔の「苦学生」の頃の方が良かった?
  (「朝日新聞」2002年10月30日付より)

 --「苦学生」という言葉も耳にしなくなりました。

 私たちの時代にも、アルバイトをしながら大学に通っていた学生はいました。私も高校で新聞配達をして、大学の入学金を工面しました。志と夢を抱きながら、ごはんにしょうゆをかけて食べた頃のほうが、日本の社会には多様な価値観があった、と思います。

 ▼雇用や賃金守ると「企業の体力を消耗させるだけだ」
 どうなる雇用春闘 流動化 南部靖之パソナ・グループ代表
 (「読売新聞」2002年2月14日付より)

 --最低限の雇用や賃金を守る意味はあるのでは。

 「雇用を守ることは大切だが、企業の寿命は人の一生より短い例も多く、企業が終身雇用を守り通すことはできない。再雇用の受け皿として子会社をつくっても、結局はグループ内の人の異動に過ぎない。ワークシェアリングは15年前の生産現場なら有効だったかも知れないが、ホワイトカラーの失業が問題になっている今、導入するのは時代に反している。労使ともに雇用や賃金を一律に扱おうとするから無理が出る。過剰な雇用を企業で抱え込もうとしても一時的な効果しかなく、企業の体力を消耗させるだけだ」

 --抜本的な対策は。

 「雇用システムを企業単位から個人単位に根こそぎ変え、個人を会社の束縛から解いて雇用を流動化することが必要だ。アメリカでは労働者の4人に1人に当たる約3千万人が、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)事業者と呼ばれる個人事業主として企業から仕事を受注している。しかし、日本では就業規則で縛られてアルバイトもできない。会社に勤めていないと銀行は住宅ローンも貸してくれないし、クレジットカードも持てない」

 --政府は何をすべきか。

 「税制面で個人経費をホワイトカラーにも認めたり、確定拠出年金(日本版401k)をもっと加入しやすくする。従来型の産業振興策は古く、どんな仕事が生まれるかは民間にゆだねればよい」

 --民間の役割は。

 「企業の中で人材を囲い込むのではなく、協力して人材を融通し合うようにする。互いの持つ人材を客観的に評価するための『人材評価・格付け会社』も必要だ」

 --労働市場活性化のカギは。

 「外国人が日本でも自由に働けるようにする『人材開国』が必要だ。これだけ人が余っているのに、と言われるかも知れないが、アメリカやフランスなども人材開国を国内産業の活性化に結びつけた。外国人が日本で新しいビジネスを生み、日本人を雇用してくれるし、職を失った日本人を中国に十万人単位で派遣することも可能になる」

 ▼「10年後には雇用なんて言葉はなくなっていますよ」
  人材派遣業が日本の基幹産業に

 (溶ける雇用 緊急インタビュー パソナ代表、南部靖之さん
  「毎日新聞」2001年9月11日付より)

 --日本型雇用の象徴とされてきた終身雇用制度が溶解しました。

 終身雇用制度なんて元々無理がありました。昔は企業の寿命は30年と言われてきましたが、今は平均すると20年ほど。日本人の寿命はどんどん延びていますが、企業の寿命は逆に縮まっている。今まで常用雇用しか身分の保障がなかった。正社員だけが安泰だった。こうした現実を改めるべきです。

 --日本の雇用はどこに向かうのでしょうか。

 10年後には雇用なんて言葉はなくなっていますよ。人を雇い、雇われるという関係は消滅している。国は国民に自由を与え、個人が自由にビジネスをできる社会にすることが前提ですが。本来、国民がやるべき仕事を官僚が奪い取っている現状を変えていかねばなりません。

 --雇用の言葉の後にくるのは何でしょうか。

 契約です。自立した個人が対等の立場で企業と契約する。そんな社会が日本でもやがてやってくるでしょう。アメリカを見れば歴然としている。レーガン政権が徹底した規制緩和をした結果、15年ほどで1億2000万人の労働人口のうち、SOHO(ネットを使った個人事業)など3000万人の独立した自営業者が活躍する社会になりました。

 --これから人材派遣業はどんな産業になっていくでしょうか。

 20年後には日本の基幹産業になっているでしょう。私は茶髪のフリーターが世の中を変えていくと思っています。こうした若者は従来の偏差値というひとつの物差しでは自分をはからず、個性を大切にする。前向きに生きようとしています。こうした若者を疎外しないよう、フリーターでしっかり生活できるように年金、保険制度などを整えていくべきです。つまり、税の仕組みを個人本位に切り替えるべきだと思っています。

 ▼パソナ元関連会社に是正指導 業務委託、実は派遣労働/厚労省・飯田橋職安
 (「読売新聞」2001年8月4日付より)

 労災の適用受けず雇用保険も免れる

 人材派遣会社の最大手「パソナ」(東京・千代田区)の関連だった人材派遣会社が、実態は労働者派遣にあたるのに、労働者派遣法に基づく派遣契約ではなく、業務委託契約を結んで労働法上の義務や雇用保険料の負担を免れていたとして、厚生労働省と東京・飯田橋公共職業安定所は四日までに、同社に是正指導を行った。業務委託契約では、契約者は労働法の適用を受けず、雇用保険に入れないほか、契約を解除されて解雇されやすいなどの不利益を受ける。派遣労働者の保護や雇用安定が脅かされることになり、同省では、都道府県労働局に対し、指導監督を強めるよう通達を出した。

 是正指導を受けたのは、人材派遣会社「アイティット」(同区)。民間調査機関によると、一九八六年に設立され、主な業務はコンピューター技術者の派遣やソフトウエア受託開発。設立時から一昨年四月までの代表取締役はパソナグループの南部靖之代表だったが、昨年四月に同グループから独立する形で「パソナソフト」から社名を改めた。

 ア社の契約方式は、コンピューター技術者らと業務委託契約を結び、やはり業務委託契約を結んだ企業に派遣するもの。設立当初からこの方法が取られ、現在は三百-四百人と契約している。

 技術者らとの契約書には、業務内容や作業時間、時給にあたる契約料金が示されているが、契約履行の見込みがない時や正当な要求に従わない時は「何らの催告も行わず本契約を解除できる」などと同社に有利な条件が記されている。

 この方式では、契約者は労働者ではなく、個人事業主扱い。契約者は仕事を丸ごと引き受けた“業者”とみなされ、〈1〉労災や社会保険が適用されない〈2〉解雇が制限される派遣労働者に比べて、委託契約の解除で解雇されやすい--などの不利益を受ける。

 今回の問題がわかったのは、同職安に対し、同社の元契約者から「雇用保険に加入させてもらえなかった」との申告があったため。職安で調べた結果、元契約者は、派遣先の企業から業務命令を受けていたほか、出退社などの勤務時間も管理されていた。職安では、この実態は事実上の派遣労働にあたると判断。今年六月、ア社に対し、元契約者と同様の仕事に携わる契約者について〈1〉業務委託契約から労働者派遣法に基づく派遣契約への切り替え〈2〉雇用保険の加入--を求めた。

 派遣契約に変われば、派遣元のア社は雇用主。派遣社員に対し、労働者派遣法や労働基準法、労働安全衛生法などに沿って、賃金支払いや健康管理といった労働法上の義務を負うことになる。

 同社では「法にのっとって必要なことはしているつもりだが、指導を厳粛に受け止め、契約のあり方を検討している」と弁明。パソナでは「現在は別会社であり、指導内容もわからないのでコメントできない」としている。

 ▼参議院 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 2011年4月27日
  参考人 株式会社パソナグループ代表取締役グループ代表 南部靖之氏の発言(国会議事録より)


 ハローワークは民営化、あるいはハローワークはアウトソーシング。国がやるべき仕事と、そしてあっせんだとか派遣の仕組みを営業マンを入れて、そして日本中で就業の仕組みをつくっていくと。もう一つは、学校、訓練学校、あれをアウトソーシングしちゃう、専門のところへ任しちゃうという形で身軽にして、三分割かどうか分からないんですが、そうすれば僕はもっと雇用が一遍に生まれるだろうなと。そして、あのハローワークが雇用創出省的になって地位を上げて、そしてそこに雇用創出大臣が生まれてとなれば、日本は若者に限らずみんながもっと雇用というものに、働き方というものに対して政府が目を向けていると、こういう認識を持ってくれるだけでも勇気が湧いてくるだろうなと、僕はそう思いますね。

 最後に、パソナ会長をつとめる竹中平蔵氏と南部靖之氏の「共編」の書籍から、竹中平蔵氏の言説ではありますが、「共編」ですから、南部氏もきっと同じ考えだろうということで紹介しておきます。

 ▼竹中平蔵・南部靖之共編『これから「働き方」はどうなるのか』(PHP)88ページより

 派遣切りが行われた結果、ワーキングプアやネットカフェ難民などがたくさん出ている、そういう「かわいそうな人たち」を助けてあげなければいけない、という議論が前面に出すぎている

 ▼同上書89ページより

 そもそも、低賃金で働いている人たちを「ワーキングプア」といい、アパートなどを借りずに都心のネットカフェなどで寝泊りしている人たちを「ネットカフェ難民」と呼んだのは日本のメディアだった。「プア」とか「難民」という言葉には、「かわいそうな人たち」という価値判断が含まれている。

 好むと好まざるとに関わらずグローバル化は進行している。同じ仕事をするのであれば、賃金は地球規模で比較して低い水準に収斂していく。

 低い賃金で仕事をしている人にとって必要なことは、強制的に高い賃金を企業に強いたり、補助金をつけたりすることではない。高い賃金を強いられれば、国際的な競争にさらされている企業は、日本から脱出せざるをえなくなる。そんなことでは、日本の雇用は守れない。

 ▼同上書103ページには中見出しにわざわざ「正社員は異常なほど守られている」と付けて以下を展開

 不況期に非正社員が失業せざるをえない状況に追いこまれる最大の原因は、正社員を解雇することが難しいことにある。労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定している。つまり、「客観的」「合理的」理由がなければ解雇できないし、「社会通念から見て妥当だ」と思われる理由がなければ、解雇できないのである。正社員の立場から見れば、まことに心強い法律である。

 ▼同上書104ページより

 正社員は異常なほど守られている。正社員はよほどのことがない限り解雇できないというのは、まさに「おとぎの国の制度」といっていい。

※関連過去エントリー

派遣労働者から強奪する竹中平蔵氏が「改革利権」でパソナ会長就任
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10330861000.html


竹中平蔵氏「パソナ会長」就任は「究極の天下り」「学商の独り勝ち」
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10348971739.html

維新の会ブレーン竹中平蔵氏「若者は貧しさエンジョイしたらいい」「賃金は地球規模で低い水準に収斂」
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11418878189.html


(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)