反貧困・脱原発で宇都宮健児さんが都知事選立候補へ-1.5倍も子どもの貧困増やした石原都政の転換を | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 前日弁連会長、反貧困ネットワーク代表で、「年越し派遣村」の名誉村長などもつとめた弁護士の宇都宮健児さん が、石原慎太郎前知事の辞職に伴う東京都知事選(29日告示、12月16日投票)に立候補する方針を固めたことがマスコミで報道され、明日9日、記者会見し正式な立候補表明を行うとのことです。


 それで、昨日の水曜の夜、官邸前でおこなわれた「困っちゃう人々」のハートフルスタンディングアクション(生活保護改悪や消費税増税に反対する抗議行動) で、ちょうど宇都宮健児さんが訴えをおこなっていますので、その要旨を紹介します。(by文責ノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)



すくらむ-8  生活保護の改悪問題が正念場を迎えています。


 この間、反貧困ネットワークは諸団体と協力して7月中旬から3カ月間にわたってキャラバンカーを全国47都道府県に走らせ、人間らしい労働と生活の保障を求めてつながろうを合い言葉に、反貧困、貧困根絶のキャンペーンを実施してきました。こうした取り組みでこれまで反貧困ネットワークがなかった群馬県などにもネットワークがつくられました。それぞれが声をあげていく、運動が広がっていく、そうしたネットワークが全国各地に広がっていくことが私たちの力になっていきます。


 現政権は生活保護の基準を引き下げようとしています。日本で生活保護を利用している人は全人口の1.6%に過ぎません。そして、生活保護水準以下の生活実態に置かれているのに生活保護を利用できている世帯は2割から3割ぐらいしかありません。多くの人が生活保護水準以下の生活を強いられているのです。本来であれば生活保護を申請して受給できるのに受給できないままにされています。その結果、札幌の白石区の姉妹の餓死・孤立死をはじめとした全国各地での餓死・孤立死の多発が生まれているのです。この東京でも立川や足立区などで餓死・孤立死が発生しています。


 生活保護基準の改悪は、生活保護受給者だけの問題にとどまりません。生活保護を切り下げるということは、国民生活全体の切り下げにつながっていくことになります。


 たとえば、最低賃金です。せめて生活保護の水準を上回る必要があるということが最低賃金引き上げの大きな要因でもあったのに、いま生活保護の水準を引き下げてしまうと最低賃金を引き上げる大きな要因がなくなってしまうのです。生活保護の改悪は労働者の労働条件をも悪化させてしまうのです。そういうことでいいのでしょうか。


 また、生活保護の基準は、地方税の非課税基準とか介護保険の保険料や利用料などの減免基準に連動していますし、公立の小中学校の就学援助の基準にも連動しています。生活保護水準の切り下げは、生活保護受給者だけの問題ではないのです。


 ところで、みなさんもご存知のとおり、石原慎太郎氏が都知事を辞任しました。11月29日に告示があって、12月16日に投票が行われることになりました。これまでの石原都政はどうだったのでしょうか? それを総括して新しい都政をつくるチャンスが生まれています。


 石原都政の13年半は、貧困と格差を拡大し続けるものでした。日本全体の貧困率も過去最悪になっていますが、豊かな自治体である東京都も貧困と格差が広がっています。たとえば、『東京新聞』(10月21日付)によると就学援助を受けている東京都の子どもはこの14年間で1.5倍にもふくれあがっているのです。(※補足→『東京新聞』10月21日付「就学援助14年で1.5倍 子育て家庭の困窮反映」によると「経済的に困窮する家庭に学用品費や給食費などを支給する就学援助制度を利用する東京都内の児童・生徒は、2011年度に18万5,726人に上ったことが分かった。1997年度に約12万人だった受給者数は1.5倍に増加した。受給率は区部ほど高く、公立中学校の生徒は23区のうち17区で3割を超えた」「義務教育の就学援助制度=生活保護世帯(要保護世帯)やそれに準ずる困窮世帯(準要保護世帯)に、市区町村が学用品費や給食費、入学準備金、修学旅行費などを支援する制度」)


 石原都政のこの13年半で、子どもの貧困が1.5倍にふくれあがったのです。石原都政が社会的経済的弱者を切り捨てる弱者に冷たい政治をやってきた結果があらわれているのです。これに対して、私たちは貧困と格差を是正しなければなりません。


 そして、もちろん、原発の問題も重要な課題です。福島原発で発電された電気はほとんど東京でつかわれてきました。東京都民は、福島原発事故の被害者を最大限支援していかなけばなりません。さらに東京都は東京電力の最大の株主でもありますから、そういう面でもしっかり東京電力を監督しなければいけません。そして、都政として脱原発に舵をきらなければいけません。それが福島原発事故の被災者に対する東京都の責任だと思っています。


 反貧困と脱原発、そして、重要なのは憲法と平和を守るということです。尖閣問題などをきっかけに憲法改悪や集団的自衛権の行使の容認などを主張する政治家が出てきていることは非常に危険な兆候です。そうした動きに対して、まさに首都・東京から平和のメッセージを発信して、韓国や中国と良好な関係をつくっていくなど、平和の課題でも今回の都知事選でどういう知事が選ばれるのかは重要になっています。


 また、教育の問題も重要です。学校の先生が管理統制されたら子どもたちがのびのびと学校で学び成長することができません。子どもたちにとって大切なのは、自分の頭で考えていろいろな問題について自由に討論していくことです。そういう民主主義の中で子どもたちが育っていくことが教育だと思います。こうした教育の問題についても大きな課題が残っています。


 ひとことで言えば人にやさしい都政をつくるために、それを担える人を私たち市民の中で選んでいかなければいけません。まず東京から変えていく。東京が変われば日本が変わる。日本の政治も変わる。そして、アジアのみなさんにもいい影響を与えることができる。今回の東京都知事選挙はきわめて重要な選挙だと思いますので、ぜひみなさんと一緒に取り組めたらと思っています。どうかよろしくお願い致します。(※以上が宇都宮健児さんの11月7日の官邸前行動での訴えの要旨です)


 宇都宮健児さんは2006年2月7日に放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の第5回目 に登場していて、その中で、「プロフェッショナルとは?」という問いに、「弱者のためにとことんやる人、徹底的にやっている人だろうと思いますけどね。もう少し広く考えれば、他人のために頑張れる、一生懸命に仕事をやっている。そういうことなんだろうと思うんですけどね」と答えています。「強者のためにとことんやる人」だった石原都政を転換できるのは、「弱者のためにとことんやる人」である宇都宮健児さんだと思います。最後に宇都宮さんも会見にのぞんでいた11月6日の声明もあわせて紹介しておきます。


 《声明》私たちは新しい都政に何を求めるか


 惨憺たる石原都政の13年半であった。


 福祉は切り縮められ、都立病院は次々と統廃合された。都民の安心を奪い、人々を生き難くさせて切り詰めたお金は、都市再開発や道路建設に回され、知事が旗を振るオリンピック誘致や新銀行に無意味に蕩尽された。


 惨状を極めたのが、教育現場である。民主主義が破壊され、強制と強要と分断が横行した。教師たちは誇りを踏みにじられ、精神を病み、教壇を離れていった。子どもたちは競争に追いやられ、教室は荒んだ。都立大学は破壊されてしまった。


 知事の思いつきと独善、押し付け、決め付け、他者を命令・服従の対象としか見ることができない貧困な想像力、剥き出しの偏見と差別意識、公私混同、乱暴な言葉――それらが多くの人の心を傷つけ、公正と公平を貶め、排外主義を助長し、弱い者をさらに追い詰め、社会を荒廃させた。


 昨年3月11日の東日本大震災と福島原発事故は、改めて私たちに、原発に依存する暮らしのあり方、社会のあり方に反省を迫るものだった。福島や新潟にある原発から生まれた電気は、ほとんどすべて東京など、首都圏に送られ、使われているのだ。震災と原発事故直後の石原知事の発言は、「津波をうまく利用して、我欲を洗い流す必要がある。これはやっぱり天罰だと思う」という驚くべきものだった。さらに、原発事故による未曾有の被害が徐々に明らかになり、おびただしい人々が避難生活を余儀なくされているとき、市民の間で広がり始めた脱原発運動を罵倒しつづけてきた。


 そして最後は、東京都政とは何の関係もない尖閣問題に火をつけ、日中関係を極度に悪化させ、経済を大混乱させたのである。その挙句、何の責任も取ることなく、知事職を放り出した。この尖閣問題の経過ほど、石原都政の年月を象徴しているものはない。


 来る都知事選は、このような都政と訣別し、人々が人間らしく生きられる街、平和と人権を尊び、環境と福祉を重視する、いわば「当たり前の都政」に転換する絶好の機会であると私たちは考える。


 石原都政の継続や亜流を、決して許してはならない。


 自治とは、住民の暮らしを守り、福祉を増進させることを本旨とする。教育とは、自ら学び考え、議論を深め、合意を作り上げていく、民主社会の次の担い手を育てることである。東京都政を、こうした自治の原点に戻さなければならない。荒れ果てた教育現場を建て直し、次の世代と私たちの未来を救わなければならない。


 あまりにも、いまの時代は人々が生きづらい。失業、非正規労働、過労、格差・貧困の拡大と福祉の切り下げによって、若者も子育て世代も高齢者も苦しんでいる。その上、国政は、混迷、混乱に加えて右傾化の度合いを増し、改憲や集団的自衛権の行使、近隣諸国との紛争に突き進んでいるように見える。この流れを止めなければならない。


 いま、東京都知事を変えることは、日本の右傾化を阻止する力になると私たちは考える。


 では、どのような都知事を私たちは求めるか。


 第1は、日本国憲法を尊重し、平和と人権、自治、民主主義、男女の平等、福祉・環境を大切にする都知事である。


 第2は、脱原発政策を確実に進める都知事である。石原知事は、原発問題を「ささいな問題」と呼んだが、冗談ではない。東京都民は福島原発からの電気の最大の消費者であり、東京都は東京電力の最大の株主だ。福島原発事故の結果、豊かな国土が長期にわたって使えなくなり、放射能汚染による被害は、むしろこれから顕在化する。原発事故と闘い、福島をはじめとするこの事故の被害者を支えることは東京都と都民の責任である。これまで原発推進政策を推し進めてきた政官業学の原子力ムラと闘うことは、この国の未来を取り戻すことである。政府、国会、経産省、東電を抱える東京での脱原発政策は、国全体のエネルギー政策を変えることになる。


 第3は、石原都政によってメチャメチャにされた教育に民主主義を取り戻し、教師に自信と自律性を、教室に学ぶ喜びと意欲を回復させる都知事である。


 第4は、人々を追い詰め、生きにくくさせ、つながりを奪い、引きこもらせ、あらゆる文化から排除させる、貧困・格差と闘う都知事である。


 以上のような都知事を私たちは心から求める。このような都知事を実現するため、私たちは全力で努力する。


2012年11月6日
赤石千衣子
雨宮処凛
池田香代子
稲葉剛
上原公子
内田雅敏
内橋克人
宇都宮健児
大江健三郎
岡本厚
荻原博子
奥平康弘
海渡雄一
鎌田慧
河添誠
北村肇
木村結
小森陽一
斎藤駿
斎藤貴男
早乙女勝元
佐高信
佐藤学
澤田猛
澤藤統一郎
柴田徳衛
品川正治
杉原泰雄
高田健
俵義文
崔善愛
辻井喬
暉崚淑子
寺西俊一
中山武敏
西谷修
堀尾輝久
前田哲男
山口二郎
渡辺治
以上、40名
(11月5日23時現在)