メルトダウン連鎖の真相を解明しないまま原発の欠陥構造も放置し再稼働する亡国の野田メルトダウン政権 | すくらむ

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 7月21日に放送されたNHKスペシャル「メルトダウン 連鎖の真相」。野田政権による原発再稼働の強行に対して、根底から間違っているのではないかと警鐘を鳴らす内容でした。

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 上の表は、番組の冒頭で紹介された「福島第一原発事故 主な時系列」です。地震と津波ですぐにメルトダウンに陥った1号機を除けば、2号機と3号機のメルトダウンまでには時間があったにもかかわらず、なぜ連鎖してメルトダウンに至ってしまったのかという謎を解明するために、当時現場で事故対応にあたった300人にインタビューを行い番組を構成。再現ドラマを随所に入れる手法には首を傾げましたが(分かりやすさを狙ったものなんでしょうが、再現ドラマよりももっと客観的な事実経過を丁寧に積み重ねる構成の方が良かったのではないかと思います)驚くべき問題点を指摘していました。その指摘は要旨次の3つです。


 ①SR弁に構造的な欠陥があった
   メルトダウン防ぐ安全装置がじつは動作しない構造で
   同じ欠陥構造を持つ原発は日本に26機あるが
   なんの検証も対策も行われていない


 冷却機能が失われ格納容器に蒸気が発生し圧力が上昇した際に、格納容器の蒸気を逃がして圧力を下げる減圧を行わなければメルトダウンをくいとめるための注水ができません。その圧力を下げるために使われる2号機のSR弁(主蒸気逃がし安全弁)が開けられなかったのです。


 SR弁が開けられなかった理由は格納容器の圧力の上昇でした。冷却装置が止まってしまった原子炉の温度はただちに上昇します。その影響で格納容器の圧力も上昇。SR弁は格納容器との間の圧力差を利用して弁が作動する設計となっていたため、この圧力の上昇がSR弁を開けることを妨げたのです。


 メルトダウンをくいとめるための安全装置が、メルトダウンが迫る状況になると、かえって使えなくなる。こうした皮肉な事態が起こることは専門家たちも今回の事故が起こるまで気づきませんでした。メルトダウンの危機がせまり、格納容器の圧力が高まるということを全然想定していなかったのです。


 安全上、極めて重要なSR弁がいざというときに開かない。「構造的な欠陥」と言えるこの問題に、事故が起きるまで誰も気づくことはできませんでした。このSR弁は福島第一原発と同じ日本国内の沸騰水型の原発26機に設置されています。


 しかし、このSR弁の構造的な欠陥について国も電力会社も検証すら行っていません。バッテリーを準備するのに時間がかかったとした国会の事故調査委員会の報告書や、津波による電源喪失のみを記述した東京電力の事故調査報告書。これまでさまざまな事故調査の報告がされてきたましたが、この2号機のSR弁についての報告はないのです。


 ②最後の安全装置であるベントは
  地震で機器配管系が損傷を受け作動しなかった


 SR弁が作動しない2号機の格納容器の減圧を行う最後の手段はベントしかありませんでした。ベントには2つの弁を開ける必要があり、1つは手動でも開けることが可能な構造になっていましたが、もう1つは空気圧で遠隔操作する以外に開けられない構造でした。この遠隔操作による空気圧で弁を開けることができなかったのは、地震によって配管が破損していた可能性が高いということです。


 原子炉本体の耐震レベルはSクラスですが、原子炉から離れていくと耐震レベルは下がっていき、配管の耐震レベルはCクラスでした。東電は、耐震レベルが低い装置も地震によって機能に損傷はほとんど認められないとしていますが、想定された最大の地震の揺れを25%も上回っていたために、地震で機器配管系が損傷を受けベントができなかった可能性が高いのです。


 ③3号機は必要なバッテリーが調達できなかった


 現場で必要な12ボルトのバッテリーが調達できず、使うことのなかった2ボルトのバッテリーが大量に積み上げられていたとのこと。この点はあまりにお粗末としか言いようがありませんが、過酷事故など起こらないとする「安全神話」で原発を動かしてきた東京電力には当然の姿なのかもしれません。番組の中でインタビューに答えた物資調達を担った東電幹部は、「現場で欲しいものは山のようにあって、すべて同時に手配をして届けると、優先順位をつけている場合でもなく、数も、とにかく分からずにあるものがあったらみんなかき集めて持ってくるという状況での手配でしたから…」と薄ら笑いを浮かべながら悪びれた感じもなく語っていて、「安全神話」の正体をまざまざと見せつけられた思いでした。(※以上が番組が指摘した3つの点です)


 野田首相は原発再稼働にあたって、「国民の生活を守るため、大飯原発を再起動すべきというのが私の判断」、「福島のような事故は決して起こさない」、「事故を防止できる対策と体制は整っている」と明言しました。


 「福島のような事故は決して起こさない」と野田首相は言っていますが、そもそも福島原発事故の真相さえまだすべて解明されていないことがNHKスペシャル「メルトダウン 連鎖の真相」で指摘されたのです。


 番組の最後は要旨こう結ばれました。


 SR弁の構造的な欠陥やベントの配管への地震影響の問題。徹底した事故の検証で全容を解明しない限り原発の運転再開の議論を始めることはできないはずです。しかし、原発は運転を再開しました。政府はストレステストや緊急安全対策などによって福島原発のような事故は起きないとしています。果たしてそう言い切れるのでしょうか? 事前に用意している対策がうまくいかなかったとき、どう対応するのか? 外部からの支援体制も含め具体的な検証はされていないのです。現場では40年という廃炉に向けて手探りの作業が始まったばかりです。福島事故から何を学ぶのか? 重い課題がつきつけられたままです。


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)