デフレスパイラルと円高不況の2重苦を克服するカギは貧困解消にある | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。


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 上のグラフにあるように、1995年度から2009年度までの14年間で、GDP(国内総生産)はマイナス0.05ポイント、雇用者報酬はマイナス0.07ポイントとほぼ重なるように下がっています。雇用者報酬はGDPの50数%を占めています。雇用者報酬の大半を占める労働者の賃金が引き下げられてきたことが、マイナス成長となった最大の原因なのです。


 一方、輸出は2000年代に入って急増し、リーマンショック直前の2007年度には2倍になっています。リーマンショックで下がりましたが、それでも2009年度は1995年度の1.39倍です。輸出が2倍になっても雇用者報酬の落ち込みをカバーできず、日本経済はマイナス成長になってしまいました。1995年度で、輸出はGDPの10%程度しかなく、輸出が2倍になっても、もともとGDPの半分以上を占める雇用者報酬のマイナスはカバーできないのです。

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 上のグラフにあるように、日本企業は、輸出を増やすことによって、「売上高が伸びなくても利益は増加」する経営を手に入れています。1995年度から2010年度の15年間に、「売上高」はマイナス7ポイントなのに、「経常利益」は1.66倍、「内部留保」は2.11倍にも増やしているのです。


 内部留保は、賃金、税金等をすべて支払った後の純利益のうち、配当や役員賞与などで流出せずに、企業内部に溜め込まれたものです。この内部留保が設備投資に使われれば、雇用者所得の減少の一部をカバーすることにもつながりますが、この間の内部留保は、労働者の賃金や下請け単価の引き上げはもちろん、設備投資にも回されず、もっぱら投機的運用や海外投資等に使われ、国内需要には転嫁していません。こうした日本企業の内部留保拡大路線が、デフレ不況を引き起こしているのです。

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 上の2つが、いまの日本を象徴する対称的なグラフです。大企業はリーマンショックで金融危機が起ころうが内部留保を増大させ、労働者には24万円(※2009年の平均賃金は406万円と前年から24万円もダウン)もの賃金ダウンを強要しているのです。

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 大企業には富が蓄積され、労働者には貧困が広がっています。上のグラフにあるように、2009年には女性労働者の44.9%が年収200万円以下のワーキングプアです。

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 そして、上のグラフにあるように男性労働者の賃金も減らされています。

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 また、上のグラフにあるように3人に1人以上が非正規化されています。


 政府・財界は、「デフレ不況打開」を新たな口実として、これまで以上に輸出、外需依存の「国際競争力強化」路線を突き進もうとしています。これを許してしまうと、「リストラ→低賃金・非正規雇用の拡大→国際競争力強化→貿易黒字の増大→円高→リストラ」という円高不況のスパイラルと、「リストラ→低賃金・非正規雇用の拡大→内需不振→デフレの進行→リストラ」というデフレスパイラルの2重苦は、一層深刻の度を増します。賃金を底上げして、労働者の貧困を無くしていくことは、日本経済の2重苦を克服するカギなのです。


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)