地方分権・地域主権は憲法25条の解釈改憲で社会保障を解体するもの | すくらむ

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 山口県国公が3月13日、山口公務共闘と共催で「地方分権(地域主権)・道州制を考える学習会」を開催しました。記念講演は、神戸大学・二宮厚美教授の「地方分権・道州制とは何か、それで地域は守れるのか」でした。中国ブロック国公事務局長のHさんが、記念講演の要旨をコンパクトにまとめて機関紙『中ブロにゅーす』に掲載していますので紹介します。(※ただし、Hさん曰く、「自分のメモにもとづいて、講演要旨の柱をまとめたものですので、厳密性に欠けるかも知れませんこと御了承ください」とのことです)


 「地方分権」は憲法25条の解釈改憲


 1990年代に始まる分権化路線の正体は、改憲の動きの一環であると言えます。改憲勢力は憲法9条とともに25条の「生存権」の改悪を目指しているのです。そもそも憲法25条が定義している福祉国家体制を解体したいと考えているのですが、この部分の明文改憲を行うと国民の反発が大きいので、条文を空洞化してしまうナショナルミニマム解体の「地方分権」を推し進めようとしているのです。


 おおむね重なっている「地方分権」と「地域主権」


 自民党の「分権国家構想」と民主党の「地域主権国家構想」は、おおむね重なっているもので、力点を置く位置が異なっているだけです。自民党は財界が重点にする道州制導入型であることに対し、民主党は再編された基礎自治体を福祉を担う受け皿とする分権構想です。そして、民主党は、これまでの国庫負担金・補助金を「一括交付金」とし、3分の2に減額するとしています。


 国が担うべきは憲法にもとづいた役割


 いま描かれている国と地方の役割分担は、外交・国防を担う「国」、社会インフラ整備を担う「道州」、「総合行政体」として労働力管理や福祉を担う「基礎自治体」となっています。この考え方では、憲法が国に求めている人権保障を地方に任せることになります。しかし、国は憲法に照らして、きちんと人権保障の役割を担うべきなのです。


 削らざるを得ない社会保障関連予算


 また、「道州」においては、財界の意向を受けて、与えられた財源を「中国州」であるなら広島、「中四国州」になるなら岡山のように、一点集中させることになり、地方は顧みられなくなります。基礎自治体となる各市は、膨大な福祉関連の負担が押し付けられますが、もともと財政が厳しいうえに、減額された「一括交付金」となりますから、社会保障関連予算を削らざるを得なくなります。


 公務労働者が仕事に照らしたチェックを


 いま必要なことは、憲法の精神に立ち返り、きちんとナショナルミニマムを保障することです。そのためには、現場で働く人間から見て、どういう権限や財源の配分が国と自治体で必要なのかを、公務労働者のみなさんが自らの仕事に照らしてチェックをすること。これを行ってもらうことが、現在の「地域主権国家論」に対する一番の反論になるのです。