軍隊が必要と思う「動物の脳」、人間を取り戻す憲法9条 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 国公労連の中央労働学校(11/6)で、「九条の会」事務局長・東大教授の小森陽一さんの講義が行われました。その中で、markさん(国公一般副委員長)が「日本も戦力、軍隊が必要と思っている人にどう対応すればいいのか?」と質問したところ、以下の答えが小森さんからかえってきました。要旨で紹介します。(byノックオン)


 「日本も戦力、軍隊を持たなければいけない」という考えは、突き詰めていくと、人間を捨てている発想になります。「武器を持たなければいけない」というのは、合理的な思考で言語を操る「人間の脳」を捨てて、「動物の脳」だけを使っている考え方です。


 「人間の脳」は「動物の脳」にブレーキをかけて合理的な思考を行います。結果や原因をあれこれ考えて、合理的な思考をめぐらせるのが「人間の脳」で、「動物の脳」というのは、身体的な行動にたとえると「アクセル」になります。


 動物は弱肉強食の世界に生きていますから、他者と出会ったときに、相手が自分より強いのか弱いのかを即座に判断して身の振り方を決めなければなりません。相手の方が強いと判断したら「恐怖」という感情をかりたててアクセル全開でその場から逃げ出す。相手の方が弱いと判断したら「怒り」という感情をかりたててアクセル全開で相手に飛びかかる。「恐怖」と「怒り」は人間の世界ではまったく違った感情ですが、「動物の脳」の働きとしてはアクセルを踏み込むという点で同じなのです。


 ですから、人間を「動物の脳」のレベルに落とし込んで、これをかきたてられると、「逃亡」と「攻撃」のどちらかという話にもっていかれてしまいます。そして「攻撃」するには、武器を持たなければいけないという話になる。武器を持たなくちゃいけないというのは相手に対して「恐怖」を抱いているから何か武器を持たなくちゃいけないという「動物の脳」から派生する感情です。


 たとえば、北朝鮮のロケット打ち上げのとき、打ち上げているのはロケットですが、それをミサイルと言う。これは、ロケットをミサイルと言って、日本国民の「恐怖」をあおりたてるわけです。さらに日本政府はミサイルを迎撃すると言ってさらに日本国民の「怒り」をあおりたてる。「恐怖」と「怒り」のワンセットで、「動物の脳」に落とし込むのです。


 つまり、「恐怖」と「怒り」を中心にした「動物の脳」へ働きかけて、「敵」として相手をイメージ化する情報コントロールは、「人間の脳」としての言語的思考を停止させ、動物的な反応、気分感情で支配されるような状態に人間を追い込んでしまうのです。まずは冷静になって「人間の脳」で合理的に考えられる状態に持っていかなければいけません。


 北朝鮮について考えると、北朝鮮がミサイルを日本に撃ってくることはありえるでしょうか? そもそも北朝鮮のミサイルは標的が判然としない打ち方をしていて成功しているとは言い難い。なにより日本列島の日本海側には原発がたくさんあります。もし原発をミサイルで爆破してしまったら、朝鮮半島と日本列島の間の海産物は大きな打撃を受けるでしょう。北朝鮮という国は何も作れない国で、最大の貿易品目は海産物です。海産物はすべて北朝鮮軍が管理しています。北朝鮮軍の財源になっている海の幸を死滅させるようなミサイル攻撃を北朝鮮軍はできるでしょうか? まずありえないでしょう。


 北朝鮮の国家予算は、足立区の予算ぐらいしかありません。しかも石油も無くて日常の生活にも困り果てている国です。そんな北朝鮮が大軍団を編成して日本へ攻撃してくるでしょうか? ありえないでしょう。


 そうすると、北朝鮮の問題となる行動などはただの「脅し」であることが分かります。「脅し」だけでやっている北朝鮮の問題を解決していくためには、こちらから人が行って話し合うしかないでしょう。人が行くためには国交を樹立した方がいいでしょう。拉致家族問題を解決しなければ何もやらないと言っているのは、何もやらないために拉致家族問題にも一切手をつけないのと同じではないでしょうか。


 冷静に考えれば、武器を持っていて有利なことは何もありません。武器を使ってしまったがために、アフガニスタンもイラクも泥沼になってしまったわけです。ブッシュ政権のやってきたことを振り返れば、戦力を保持し使うことがどれだけムダなことなのかがよく分かるでしょう。