教育投資は2倍以上の経済リターンを社会にもたらす - 教育の無償化は貧困連鎖なくすだけじゃない | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 OECD(経済協力開発機構)が、9月8日に「図表でみる教育2009」を公表しました。OECD東京センターのサイト に、「日本に関するサマリー」 が掲載されているのですが、とても興味深かったので、「サマリー」をサマリーで以下紹介します。(※参照→OECD東京センター「図表でみる教育2009」の「日本に関するサマリー」


 まず、「教育の経済的・社会的効果は大きい」ことを指摘しています。


 「教育投資」に対する「経済的リターン」について、たとえば、男子学生1人が大学などの高等教育を終了するためには、政府はOECD平均で2万7,936ドルの投資をする必要がありますが、それが社会にもたらす「経済的リターン」(所得税の増加、社会保障費用の低下に伴うものなど)は、その2倍以上の7万9,890ドルに達するとのこと。ということは、「高校教育を実質無償化する」という民主党・社民党・国民新党の連立政権政策合意は、社会全体に経済的効果をもたらす政策になります。


 さらには、就学前教育についても、教育の投資リターンが高いとして、たとえばアメリカでの調査で、経済・社会的立場の弱い幼児に対する就学前教育が8~10%プラスの投資リターンを得ており、「つまり、教育は平均的な人が富を得るための有効な手段である」と結論づけています。


 また、教育が社会全体に及ぼす効果が高いことも指摘しています。たとえば、後期中等教育(高校など)を卒業することにより「健康の度合い」が15%高まる(OECD平均)ことの相関関係が証明されているほか、高等教育を卒業することにより、「政治的関心度」が17%高まり(OECD平均)、「人的信頼度」が9%高まる(OECD平均)とのこと。「健康の度合い」と「政治的関心度」と「人的信頼度」、それぞれを高める効果が、教育にあるということです。


 さらに、教育は、「景気変動が労働市場に与える影響」を緩和する役割も果たすとのこと。高等学校を修了していない成人は景気変動によってこの10年で5.9%失業率が高まったのに対して高等学校以上を修了した成人に関しては2.3%の変動しか見られず、日本でも同様のデータはそれぞれ2.1%、1.5%と、やはり教育が労働市場においてセーフティーネットの役割を果たしていることが示唆されているのです。


 結論として、「こうした教育投資の経済的・社会的効果をよく認識し、政策に反映している諸国では、教育を、最低限維持すべき社会インフラとしてのみならず、国家の経済・社会的発展に有効な手段としてとらえ、積極的に取り組んでいる」と指摘しています。


 「教育への投資」では、「OECD諸国において過去10年の間、公財政支出と私費負担を合わせた教育支出は増加している。半数の国々では、教育支出の増加率がGDPの増加率を上回っているのに対して、2006年の日本の教育支出の対GDP比は、1995年、2000年と同じく5.0%であり、OECD諸国中最低水準となっている」と指摘しています。


 日本の教育への公的支出の割合はわずか3.3%で、比較できる28カ国中27位。公的支出を教育段階別に見ると、日本は小中高までの初等中等教育は2.6%で下から3番目、大学などの高等教育は0.5%と各国平均1%の半分で最下位となっています。

すくらむ-公支出(教育グラフ)

すくらむ-公支出(教育)


 日本の全教育費に占める私費負担の割合は33.3%と韓国に次いで2番目に高く、平均の2倍以上になっています。

すくらむ-教育私費負担グラフ

すくらむ-教育私費負担表


 高校入学から大学卒業までにかかる費用は平均で1,023万円、世帯年収に占める教育費の割合は34.1%にのぼっています。1970年に1万2000円だった国立大学の授業料は53万5,800円(標準額)へと、45倍にも高騰し「世界1高い学費」となっています。


 こうした教育への公的支出の低さと、私費負担の高さが、「子どもの貧困」問題を深刻なものとし、「貧困連鎖」「格差世襲」などと呼ばれる社会状況を生み出しています。


 お金の心配なく学べる日本社会をつくることは、「子どもの貧困」問題を解消していくだけでなく、社会全体に経済面でもプラス効果があるのですから、新しい連立政権には、「政策合意」した「高校教育の実質無償化」を、急いで実現してもらいたいと思います。


(byノックオン)