舛添厚労相また暴言 - 派遣村でなく怠け者は生活保護の母子家庭 | すくらむ

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 朝日新聞のサイトに次の記事が掲載されています。


 舛添氏「怠け者に税金使わぬ」発言 抗議受け弁明

 舛添厚生労働相は25日の閣議後の記者会見で、総選挙の遊説中に「働く能力と機会があるのに怠けている人に、貴重な税金を使うつもりはない」という趣旨の発言をしたと追及され、弁明に追われた。舛添氏は「自立が大事だということを訴えたかった」と語った。


 演説は18日に神奈川県内で行った。年末年始に東京・日比谷で開かれた「年越し派遣村」に、行政が約4千件の求人情報を提供したにもかかわらず、誰も応募しなかったなどと指摘。同じ演説の中で「怠け者」発言が飛び出した。実際には、初日には申し込みがなかったが、その後100人以上が申し込んだ。


 この発言に対し、派遣村の元実行委員会の湯浅誠・元村長ら有志は24日、「事実をねじ曲げた発言で、今なお厳しい雇用情勢の中で生活の再建を目指して努力している方々への侮辱である」として、舛添氏に謝罪と発言撤回を求める抗議文 を出すなど、波紋が広がっていた。


 舛添氏は会見で「怠け者発言は(民主党が復活を強く主張する)生活保護の母子家庭(への加算)の中で言ったつもりだ」と反論しつつ、反発が広がったことには「大変残念。今後、言い方を注意したい」と述べた。(※朝日の記事の引用はここまで)


 この朝日の記事が正しいとすると、舛添厚生労働相は、年越し派遣村に対してではなく、「生活保護の母子家庭」に対して「働く能力と機会があるのに怠けている人に、貴重な税金を使うつもりはない」と言ったのだと「弁明」していることになります。つまり、舛添厚生労働相は、「生活保護の母子家庭」が「怠け者」だと言っているわけです。これは「弁明」どころか、重ねての許し難い暴言です。


 そもそも日本において、ひとり親世帯の就労率は8割を超え、下のグラフが示すように、OECD諸国の中でもトップクラスです。


        ▼ひとり親世帯の就労率
         (OECD2005年調査)

すくらむ-就労率


 母子家庭では母親が非正規労働を強いられるケースが多いので、生活するためには、ダブルワーク、トリプルワークをせざるをえないというのが実際のところです。こうした実態からも、「怠け者」だとか、「働かないで甘えている」とか、「もっと働け」などという非難は、まったくのまとはずれです。


 自公政権は、母子加算を廃止する変わりに就労支援を実施しているとしていますが、これについても各マスコミが批判しています。


 「代わりに就労世帯などに最高月1万円を支給する「ひとり親世帯就労促進費」を創設したが、減額前の母子加算より低く、親が病気などで働けない約4万世帯は対象外だ」(『毎日新聞』2009年年6月23日付)


 「生活保護を受ける母子世帯は10万世帯(子どもは約18万人)を超える。だが、生活保護受給者等就労支援の利用者は昨年4~12月で約2千人と少ない上、就労率は約6割。自立支援プログラム(収入が増えた既就労者も含む)は約3割だ。もともと母子世帯の就労率は約8割あり、「さらに働け」という対策には疑問の声もある。生活の安定を求めて看護師など高度な職業訓練を受けようにも、働きながらの訓練受講は難しい」「その上、障害・傷病や育児・介護などで働けなくなって生活保護を受ける世帯が約4万世帯あり、就労支援そのものが役立たない。支援団体関係者からは「絵に描いたもち」との批判も出る」(『東京新聞』2009年6月23日付)


 「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が、2007年に母子世帯へ行った「子育てをするうえでの気がかりや心配事」に関する調査(回答者数254人)について、阿部彩さんが『子どもの貧困』(岩波新書)の中で、次のように紹介しています。


 「その回答の中には、貧困であることから派生する諸問題、長時間労働による育児時間の欠如や教育費の不足に加えて、母子世帯であるからこそ直面する子育ての困難さがあることをうかがわせるものが散見された。たとえば、「母子家庭への周囲の偏見」を子育てをするうえでの心配事として挙げた回答者は29%も存在する。母子世帯の方々の話を伺うと、「母子世帯の子のくせに大学進学なんて身分不相応だ」などというような言葉を近所の人から受けたなどというエピソードをよく聞く、このような言葉が、母子世帯の子どもたちに、新たな傷と負い目を負わせていくのである」


 「離婚であれ、死別であれ、その出来事自体が子どもにとっては大きなストレスであると想像されるがそれとともに、最終的にそこに至るまでにも、両親のけんかや暴力、親の病気、周囲との葛藤など、子どもに心理的負担を与えると考えられる状況があったであろう。これらの心理的なストレスを緩和するためにも、母子世帯の子どもは、本来それだけ、ほかの子どもよりもさらに手厚いケアが必要なのである。しかしながら、母子世帯の母親は、子どものケアのニーズをたった一人で背負う身体的・精神的余裕がない場合が多い」(阿部彩さんの『子どもの貧困』(岩波新書)の引用はここまで)


 共同通信(7/27)は、「母子家庭8割が生活苦しく 給料減少、教育に影響」という以下の記事を配信しています。


 父親を亡くした母子家庭のうち高校生のいる世帯で、今年6月の母親の平均月給(手取り額)は11万6千円にとどまり、約80%が昨年秋以降、生活が「苦しくなった」と感じていることが27日、あしなが育英会(東京)の調査で分かった。


 奨学金を受けている高校1年の母親計776人のうち42%から回答を得た。結果によると、月給は、前年8月の12万2200円から6,200円減少。10~14万円が最多の33%で、20万円以上は計8%なのに、10万円未満は計39%と家計の厳しさが浮き彫りになった。昨秋以降生活が「楽になった」は1%未満だった。


 教育費不足による影響(複数回答)を聞いたところ「塾に通わせられない」が43%、「学校を続けさせられるか心配」36%、「参考書などを十分に用意できない」34%、「進路を変更した」32%―などが挙がった。


 育英会の工藤長彦理事は「不況の影響で教育費を賄いきれない家庭が多い。貧困の連鎖を断ち切るために、国を挙げて子どもへの支援をしてほしい」と話している。(※共同通信からの引用はここまで)

すくらむ-母子家庭


 母子家庭は約123万世帯あり、平均年収は171万円(上のグラフ参照)。そのうち44%が臨時・パートで、平均年収は113万円と月収10万円にも届きません。


        ▼ひとり親世帯の子どもの貧困率
         (OECD2005年調査)

すくらむ-子どもの貧困


 そして、ひとり親世帯の子どもの貧困率は、トルコに次ぐワースト2位に、日本はなっているのです。(上のグラフ参照)


 世界各国の中でもっとも働き者である日本の母子家庭に対して、「怠け者」と誹謗中傷し、世界各国の中でもっとも深刻な「子どもの貧困」を抱えている母子家庭に対して、「税金を使うつもりはない」と言い放つ舛添厚生労働相。間近に迫った総選挙で私たちが望むことは、「貧困問題に取り組まない政治家はいらない」です。(舛添厚生労働相は参議院議員ですので、2度と労働行政とセーフティーネットを担う政府責任者にならないような状況にしたいものです)


(byノックオン)