官製ワーキングプア - 違法だらけの職場で非正規は正規公務員の5分の1以下の年収 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※連合通信が、4月26日に開催した「なくそう!官製ワーキングプア 反貧困集会」を3号にわたり報道してくれましたので、まとめて転載します。


 ▼なくそう!「官製ワーキングプア」/幅広い労組が共同で集会/「安定した雇用とまともな賃金を」(「連合通信・隔日版」09年4月28日付 No.8186)


 「安月給されど仕事はプロ意識」「気がつけば常勤教える非常勤」――。自治体などが提供する公共サービスを多くの非正規職員や委託労働者が担うなか、劣悪な労働条件や不安定な雇用の実態を訴えようと4月26日、都内で「なくそう!官製ワーキングプア 反貧困集会」が開かれ、のべ430人が参加した。


 自治体で働く非常勤職員や委託労働者たちがリレートークで実態を告発したほか、シンポジウムでは自治労と自治労連のパネリストが同席。集会の呼びかけ人や賛同団体には幅広い市民や上部団体の違いを超えて労組が名を連ねた。


 シンポジウムで発言した自治労連の川西玲子副委員長は、学童保育で一年契約の非常勤職員として24年間働いてきた経験を持つ。非常勤は妊娠しても育児時間や育休も認められないなど差別されており、「『非常勤を3年やったら人格がゆがむ』と言われている」。


 あわせて「非正規だから仕事の質が落ちるということには異論があるが、食べていけずに辞めていき、働き手が入れ替わることで(サービスの)質が低下していくことは避けられない」と述べた。


 長年、委託労働者の組織化に取り組んできた自治労越谷市職の山下弘之執行委員(自治労埼玉県本部副委員長)は「現場ではいま、臨時・非常勤が委託や指定管理者、市場化テストなどに置き換えられている」と指摘。直接雇用だった部分の間接雇用化・不安定化がすすんでいるとした。


 官製ワーキングプアの問題を取り上げてきた『週刊東洋経済』の岡田広行記者が特別報告。「公共業務は原則として常勤がやるべき。不況下で公共業務を重視すべきという動きがあるなかで、いまは公共サービスを見直すチャンスではないか」と語った。


 ▼なくそう!官製ワーキングプア/〈現場からの声〉


 ●5年で雇い止め/東京都消費生活相談員・玉城恵子さん


 東京都消費生活総合センターの消費生活相談員として20年。地方消費者行政の予算が削減されるなか賃下げが続いている。
 一昨年、契約更新は原則4回までと告げられた。組合を結成して処遇改善や雇用問題について交渉したが、当局は「団交にはなじまない」との態度。都労委に救済を申し立てている。


 ●非常勤講師は使い捨て/東京都非常勤講師組合・若林純子書記長


 専任教員が担当しきれない授業を時間単位で担当している。1年間の任用を30年くり返している講師もいるが、退職金もない。
 専任教員を退職した人たちが日勤講師として私たちより優先して雇用されている。さらに仕事が細切れになると心配している。


 ●処遇改善を実現/荒川区図書館非常勤労組


 常勤職員が減らされ臨時・非常勤が増え、役割も増大していることから一昨年、採用や処遇のあり方が見直された。3つの職層が導入され、職責に見合った報酬額が設定された。病休も制度化した。非常勤職員自らが組合を作り、処遇改善を求めて声をあげてきたことが改善につながった。


 ●過剰な安上がり運営へ/足立区立花畑図書館指定管理館長だった男性


 指定管理者制度のもとで図書館の館長となったが1年で雇い止めされた。指定管理者には地元企業が優先され、図書館と関係ない業者が参入している。自分もバス修理会社に採用された。「5年はやってもらう」との話だった。
 雇い止めの真の理由は、私や契約社員たちの残業が多かったことにある。しかし、これは区民へのサービス向上をめざしてきた結果だ。現在は組合に入り、復職を求め交渉している。
 図書館は利益を生む仕事ではないから業者は人件費を削ってもうけをあげる。経験者を雇うより新人を安く使うなど、過剰な安上がり運営に向かっている。


 ●アルバイトを組織化/自治労・公共サービス清掃労組


 東京23三区の清掃事業を担う清掃車の運転手を組織している。劣悪な労働条件のもとで組合を結成し、たたかってきた。一昨年、24人のアルバイトを組織化。業界初のケースだったが、これを嫌った会社から攻撃を受け、アルバイト組合員が解雇された。東京地裁でも解雇無効を勝ち取っている。会社の組合つぶしに負けずたたかう。


 ●全員の職場復帰を実現/中野区保育争議団元原告・福家久美子さん


 非常勤の保育士として1年の任用を更新しながら働いてきたが、全員が解雇。一昨年の東京高裁で「雇い止めは解雇権乱用法理が類推適用される」との判決を勝ち取り、当局との交渉で原告全員の職場復帰を認めさせた。均等待遇を勝ち取るまで今後もたたかいたい。


 ▼なくそう!官製ワーキングプア集会から(続き)/低賃金・無権利な実態を告発/低価格競争が労働者にしわ寄せ(「連合通信・隔日版」 09年5月2日付 No.8187)


 ●入札のあり方に疑問/組合を立ち上げた警備員


 警備業界で働く労働者の待遇は劣悪だ。3年前に組合を立ち上げ改善を要求しているが、なかなかうまくいかない。今年は霞が関の本庁舎の仕事を取ったが、東京都の最賃を下回るような価格で落札している。(発注者の)公的機関は、あまりに低い入札業者の場合、そこで働く労働者の待遇も調査してほしい。


 ●働きに見合った待遇を/千葉市の図書館で働く非常勤・嘱託職員


 正規職員が減らされた分、非常勤や嘱託が増加。有休が発生しないよう1年働いたら6カ月休むという働き方をさせられてきたが、組合を結成して廃止させた。有休や産休、育休なども獲得してきた。仕事を常勤職員に教えることもあり、仕事に誇りを持っている。雇用の安定と働きに見合った待遇を求めたい。


 ●パートとして30年/板橋区の児童館で働いてきた女性職員


 児童館の幼児教室指導員として1年契約をくり返して30年11カ月働いてきた。今年3月に退職したが退職金も何もなかった。
 30年間同じ職場で同じ仕事をしてきたが、身分は「臨時職員」「委嘱」などと変わり、組合に入って非常勤職員にさせた。交通費や雇用保険、時間内組合活動なども獲得。いまは昇給制度の実現が課題だ。


 ●違法だらけの職場/小中学校の警備職員


 東京都豊島区立の小中学校で警備や施設開放時の管理の仕事をしている。常勤のほかに再雇用、非常勤、臨時など雇用形態も勤務形態も複雑。身分によって待遇に大きな格差がある。深夜勤務や超勤分の手当が払われず、社会保険も未加入など法律が守られていない。昨年九月に組合を立ち上げ均等待遇の実現を求めたたかっている。


 ●事実をつきつけよう/国公一般


 国の中枢機関でひどい働き方をさせられている人たちが大勢いる。団結権もなく無権利で、長時間過密労働が当たり前。このため国公労連では個人加盟組合である「国公一般」を立ち上げ、非常勤職員などの相談にのっている。パワハラや解雇、労働条件の一方的切り下げなど切実な相談が毎日のように寄せられている。事実をつきつけて国を動かしていきたい。


 ●生計費未満の賃金/「フリー保育士」の女性


 埼玉県越谷市で、正規保育士の年休や時差出勤などの代替として「フリー保育士」をしている。担任は持たないが専門的知識を要求され、責任ある仕事をしている。初任給は正規職員と大差がないが、21年勤続している人だと約半分。手取りは11万円ほどで、病気もできなければ貯金もできない。組合では均等待遇を求めている。


 ●介護職の処遇改善を/東京介護福祉労組


 介護職場の労働者はワーキングプアの代表選手だ。組合員のなかには、施設職員として8年働いているが手取りは14万円程度という若者や、嘱託職員だったころは(都内では極めて安い)家賃3万1千円のアパート暮らしだったという人もいる。今回の介護報酬引き上げは処遇改善にはつながっていない。


 ●雇い止めに反対/新潟県職労非常勤職員部会


 「5年で雇い止め」の方針が出され、15年間働いてきた職場を一昨年、解雇された。3月にも173人が雇い止めされ、この10年間で1千人が辞めさせられた。非常勤・有期雇用だから雇い止めは仕方ないというのはおかしい。経験や知識の使い捨てにもなる。これでは生活プランが立てられず子どもも産めない。


 ●委託先で雇用を確保/税金の収納窓口で働く非常勤職員


 東京の多摩で都税収納窓口業務を担当。1年契約だが65歳まで働けるとの話で2003年4月に採用されたが、その年の12月、民間委託を理由に契約は今回限りと言われた。民間委託は止められなかったが、組合をつくり委託先への希望者全員の雇用を確保。その後も委託業者は変わったが雇用は継続させている。しかし、毎年入札が行われるため不安。安心して働き続けたい。


 ●生活保護を受けながら/埼玉県の臨時教員


 小学校の臨時教員をしている。勤務時間は1日5時間で時給1,210円。夏休みなど長期の休みには仕事がないため年収80万円。アルバイトの掛け持ちもしたが身体が持たず、いまは生活保護を受けながら教師を続けている。


 ●公務員との連帯が要/自治労小菅委託職員ユニオン


 1年ごとの競争入札だが、20年近く雇用を守ってきた。仕事を確保するには発注者である自治体との交渉が必要。自治体の組合と連携しながら申し入れをしてきた。(委託業者が変わっても)雇用と労働条件を引き継げと業界団体に要望しながら運動している。


 ●職場での疎外感も/東京都の臨時職員


 2カ月以内の有期雇用をくり返し、6カ月働くと次の1カ月は強制的に休職させられる。職員以上に働かされることもあるが、有休もなく社会保険も未加入。病院に行きたくても早引けも遅刻もできない。同じ職場で10年以上働いていても忘年会や新年会にも呼ばれず、疎外感を感じている。


 ▼労働情報/官製ワーキングプア是正に向けて熱い思いが結集/労働部デスク・伊藤篤(「連合通信・特信版」 09年5月5日付 No.1033)


 「『公務員はめぐまれている』と見られてきたため、公務で働く非正規労働者の現状が見過ごされてきた。まずは私たちの実態を明らかにすることが必要だ」
 東京の総評会館(連合本部のある建物)で4月26日に開かれた「なくそう!官製ワーキングプア 反貧困集会」。催しはこの言葉で始まりました。
 自治体など公務職場の非常勤・臨時職員は、その多くが正職員と同等の業務を行いながらも、極端な低賃金と不安定雇用の状態にあります。住民から見れば、だれが正規でだれが非常勤かは分かりません。すべて「めぐまれた公務員」と映っているのです。
 「同じ仕事をしながら給料が正規の2分の1、3分の1」「これはもう身分制度です」――この実態を世の中に発信しよう、というのが大きな目的でした。


 ●競争入札の問題点


 もうひとつ、集会には自治体などからの委託業務に携わる労働者も参加。競争入札を経るたびに賃金が低下していく実情が明らかにされました。
 被害者は民間労働者ですが、間違いなく「官」が貧困をつくりだしています。これも「官製ワーキングプア」ととらえ、ともに是正方向を追求することが確認されました。


 ●子どもを産めない


 東京・板橋区の児童館でパートとして勤務していた女性は「1994年に勤務日数のことで説明を求めたら『あなたたちは有償ボランティアだから説明する必要はない』と言われました。それ以前も新聞代と同じ(物件費)という扱いでした」と語りました。
 組合に入り、勤務日数問題を解決して契約を更新。交渉では「労基法、労組法上の労働者」であるとの確認書も交わし、雇用保険加入、健康診断実施などを獲得したといいます。
 千葉市の図書館で働く非常勤の女性は「6カ月の雇い止め問題を機に組合をつくり、雇い止めを撤回させました。有給休暇と雇用保険加入も獲得しました」と取り組みを報告。現在の状況については「プロ意識で仕事をしています。働き続けるには、働きに見合った待遇が欲しい。年収180万円では若い人は自立できない」と訴えました。
 豊島区の学校警備と施設開放を担当する臨時職員は待遇格差のひどさを告発しました。常勤職員は年収865万円、再雇用は442万円、非常勤は257万円、臨時は160万円。臨時労働者の賃金は正規の5分の1以下なのです。
 新潟県の非常勤職員は5年年限の雇い止めが制度化され、毎年3月末に100人以上の労働者が職場を去るといいます。報告した女性は「今年3月には173人が去りました。これでは子どもを産みたくても産めない。経験や知識を使い捨てにする雇い止めは間違っていると思うが、県は『いい制度だ』といいます。私たちの闘いは間違っているのでしょうか」と、問いかけました。


 ●幅広い顔ぶれ


 集会ではリレートークのほか、シンポジウム、非正規川柳発表、自治体議員交流会、労働・法律相談、DVD上映など、多彩な催しが終日行われました。
 反貧困ネットワークが開催している「反貧困フェスタ」の公務非正規版といってもいいでしょう。
 主催した実行委員会の構成もユニークです。自治労の荒川区職労や港区職労とともに、自治労連とその傘下の組合も多数参加していました。全統一労組など、自治体産別に入っていない組合も少なくありません。賛同団体に全労連の名があるかと思えば、社民党もあるという具合。
 「官製ワーキングプアをなんとかしたい」の熱い思いが、団体・組織間のこだわり、わだかまりを乗り越えました。