このブログにコメントを寄せてくださるBUNTENさんが、自身のブログで、「パンデミック対策に足りないもの」と題したエントリーを書かれています。(※参照→BUNTENさんのブログ )
そのエントリーでBUNTENさんは、新型インフルエンザによる死者が多数にのぼっているメキシコでは、医療機関の態勢も不十分な上に、「貧困層が、医療機関にかかれない状況にあることが推測される」とのマスコミ報道を紹介しながら、「貧富の差が大きく、既にかなりの数に上っていると思われる貧困層が医療機関にかかれないのは、日本でも同じである。が、発熱外来などの医療費が免除されるという話は聞かない」、「ホームレスだったりする場合、加えて、パンデミックに関係した情報がうまく伝わらない可能性もあるだろう。しかも、貧乏人には食糧の備蓄などする余裕はない。買い物は日々(少なくとも数日おきに)行わなければならない。もしキャリアになってしまっても、出歩かざるを得ないのだ」と指摘しています。
そして、BUNTENさんは「医療費の抑制策によって、医療機関はギリギリの経営を強いられている。言い換えれば、感染爆発が起きて患者数が激増しても対応できないのではないかと思われる。医療機関の体制を短期間で整えるのは無理なので、爆発の危険要因を減らしておくことが肝心」だとして、国に対し、次の2つの緊急施策を求めています。
①保険証取り上げ政策を少なくとも一時的に停止すること。低所得者への医療費補助を行うこと。
②ホームレス者を把握の上緊急に保護を行うこと。
BUNTENさんが主張されている以上のことは、非常に大事だと思いましたので、勝手ながら、以下、いくつかのグラフや表で補強させていただきたいと思います。
▼相対的貧困率の国際比較
日本はメキシコと同様、貧困率が高い
最初のグラフは内閣府作成の相対的貧困率の国際比較です。日本はメキシコと同じように貧困率が高い国です。
▼G7と日本の患者負担の概要
日本は貧困率が高い上に患者負担も高い
次は、日本は貧困率が高い上に、さらに患者負担も高いことを示す表です。全国保険医団体連合会(保団連)が作成したもので、アメリカを除くG7の各国は、原則として医療費の自己負担分はなく、全額給付となっています。この表の中にメキシコはありませんが、新型インフルエンザが猛威をふるうなかで「貧困層が、医療機関にかかれない状況にある」とマスコミ報道されていますので、メキシコも日本と同様に患者負担が高いと思われます。
▼国保の滞納世帯・短期保険証・資格証明書の発行の推移
34万世帯も保険証を取り上げられている
次のグラフは、「国保の滞納世帯・短期保険証・資格証明書の発行の推移」です。全日本民主医療機関連合会が作成したものです。国保(国民健康保険制度)は、日本の人口の4割、約5,000万人が加入する日本で最大の公的医療保険制度です。この国民健康保険料が高いために支払いができず滞納を余儀なくされている世帯が2割、保険料の滞納のために保険証を取り上げられ資格証明書が発行されている世帯が34万世帯、短期保険証が115.6万世帯という異常な事態になっています。この結果、全日本民主医療機関連合会の調査では、2007年の1年間で保険証がないために受診できずに亡くなられた例が、少なくとも31例明らかになっています。またこの国民健康保険には傷病手当や出産手当がないなどの大きな問題を抱えています。このような事態にいたったのは、国がその責任を放棄し、国庫負担を削減したことが大きな要因です。
▼人口千人当たりの医師数・看護師数の国際比較
医師数が日本もメキシコも極端に少ない
最後のグラフは、「人口千人当たりの医師数・看護師数の国際比較」です。グラフの出所は「社会実情データ図録」のサイトです。国による医療費抑制政策によって、医師養成数の削減が行われ、窓口負担増による受診抑制策がとられ、診療報酬の引下げなどが行われてきました。その結果、日本の医師数は、OECD諸国と比べると人口千人当たり2.1人で30カ国中、下位から4番目です。新型インフルエンザの流行に対して、医療機関が貧弱でまったく対応できていないと報道で指摘されているメキシコの1.9人と日本は同レベルなのです。OECDの平均に届くためには、14万人以上も医師を増やさなければいけないという深刻な事態に日本の医療は陥っているのです。
以上のことから、BUNTENさんが求める新型インフルエンザのパンデミック緊急対策とともに、根本的な対策として、貧困をなくすこと、医療費を無料にすること、医師・看護師を増やすことなどが必要だと思います。
(byノックオン)