アルバイト以下の賃金、毎日18時間の恐るべき超長時間労働に喘ぐ「名ばかり若手正社員」 | すくらむ

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 労働経済ジャーナリストの小林美希さんが、16日、ダイヤモンド・オンラインで、「“アルバイト以下”の待遇に喘ぐ若手正社員の悲惨な職場事情 」と題したルポを書いています。


 小林美希さんは、非正規労働者の過酷な労働実態にせまった『ルポ 正社員になりたい~娘・息子の悲惨な職場』で、2007年度の日本労働ペンクラブ賞を受賞し、今年6月には『ルポ“正社員”の若者たち~就職氷河期世代を追う』(岩波書店)という労作を発表しています。今回のダイヤモンド・オンラインの記事は、凝縮された形で「名ばかり正社員」の典型的な問題点を告発しています。この記事は、ダイヤモンド・オンライン内の記事でプレビュー歴代1位を塗り替えたそうですので、そういう意味でも必読です。(※ぜひ原文を読んでください。→原文


 長時間労働を強いられて、「賃金を時給計算するとアルバイト以下の水準」という「名ばかり正社員」が多く存在していることを、小林さん自身、「普段、感じる素朴な疑問や矛盾」として持っていて、今回そのことをストレートに書いて、「最初は削られるかなと思っていたが、大手のダイヤモンドが、こういう地味な問題でも、きちんと載せてくれて、よかったなぁと思った。そして、ジャーナリストの原点を思い返した」と自身のブログ で語っています。


 記事に登場する27歳の女性のケースでは、ハローワークを通して「基本給10~14万円、職能給4万円、皆勤手当て1万円、交通費別途支給」という整形外科医院に採用されたのに、実際は基本給は8万円しかなく、医療事務なのに注射の準備までやらされるなど「違法行為スレスレ」の業務も課せられた上、終電近くまで仕事が続くこともしばしばなのに、残業代は一律時給800円。勤続5年目で年収はわずか220万円に過ぎず、派遣社員の時給は全国平均で1,327円、平均年収は226万3,692円(NPO法人派遣ネットワークの2006年の調査)ですから、派遣社員よりも低い年収に置かれています。


 居酒屋チェーンの27歳男性のケースでは、異常な超長時間労働を告発しています。毎朝10時に出勤し、ランチタイム終了後は、夜の営業のための準備。夕方、店がオープンすると深夜3時まで接客。閉店後、後片付けを済ますと午前5時過ぎ。「仕事の合間のちょっとした空き時間に店内で仮眠しても、18時間労働は下らない」、「入社後半年は1日も休みがとれなかった」。さらに、店長になると責任は重くなり、急に休みを入れるアルバイトの穴埋めにも出勤しなければならないため、年に4日程度の休みしかとれず、「月給は35万円の固定制」で残業代なし。時給計算すれば、アルバイト時代の時給を割り込んでしまうとのこと。


 裁量労働制による「みなし残業」で長時間労働・サービス残業が増えていることや、非正社員の増加により正社員の時間外労働が増えていることなどが、こうした問題の背景にあると小林さんは指摘しています。


 そして、小林さんは、「男女共同参画会議の『仕事と生活の調和に関する専門調査会』が2007年に発表した報告書によれば、週60時間以上働いている労働者は全国平均で5人に1人、東京では3人に1人という状況だ。そのため、20~30代でも過労死する人が出てきている」、「世界的な金融危機に端を発する景気後退懸念により、ここ数年間、売り手市場が続いた日本の若者の就職・転職は再び厳しくなりつつある。そのため、うっかり『悲惨な職場』に就職してしまう『名ばかり若手正社員』は、今後ますます増え続けると思われる」と懸念を表明しています。


(byノックオン)