現代の派遣奴隷制が若者を襲う~人格の否定、支配的な強制労働、暴力による労務管理 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 木下武男さん(昭和女子大学教授、ガテン系連帯共同代表)が「派遣労働の変容と若者の過酷」(雑誌『POSSE』創刊号 掲載論文)の中で、現在の派遣労働の実態は、「派遣奴隷制」とでも表現できるような過酷で残酷な働き方が出現しているとして、次の4つの特徴点を指摘しています。


 第1は、派遣労働者が、極度の雇用不安に襲われていることです。「日雇い」や「細切れ雇用」で、明日の仕事があるかどうかわからない大きな不安を抱え、派遣会社からの携帯メールでの仕事の連絡を待ち続ける「オン・コール・ワーカー」とも呼ばれるその日暮らしの生活をよぎなくされる派遣労働者が激増しているのです。


 第2に、派遣労働者には、正社員のやりたくない単純労働や、非人間的で過酷な労働が強制されています。製造業の派遣労働者は、機械の歯車のような単調であるがゆえに過酷ともいえる仕事をかせられているのです。


 第3には、派遣労働者の匿名化によって働くものの連帯が切断されているとして、木下さんは以下のように指摘します。
 職場において派遣労働者が匿名化されるようになった。「日雇い派遣」は今日限りで明日は来ない。「細切れ雇用」もいつやめるかも知れない。働く現場での人と人との関係が、今日限り、ほんのわずかな期間という状況が広がっている。その期間の短さと派遣労働の特徴である間接雇用とが結合する。間接雇用とは、職場の正社員にとって、別の派遣会社の社員である派遣労働者はどこの誰だかわからないということである。そして派遣労働者はすぐにいなくなる。そこから匿名的な人間関係が成立するようになる。派遣労働者は働く現場で、「派遣さん」、さらには「おい、そこの派遣」と呼ばれる。派遣職場では、職場の同僚・働く仲間という意識が喪失してしまった。人間についている「誰々さん」という固有名詞は、その人の個性や人格と結びついている。匿名化されてしまった人間は人格を無視された単なる「道具」でしかない。


 第4は、派遣労働者がますます派遣先の絶対的な指揮命令権のもとで働かされるようになっていることです。「みてきたように、派遣労働をめぐる雇用期間の短期化や、単純労働化、匿名化の傾向は、指揮命令権をますます絶対的なものにしている。要するに、指揮命令権は、働かせ方のフリーハンドを与えたようなものであり、何をしても良いという危険な状況が生まれている」「立場の弱い、物言えぬ者に対するセクハラ・パワハラ・暴力が横行する」「倉庫に派遣されたら、上から荷袋が落ちてきたり、冷蔵倉庫にスニーカーで入らされ凍傷になったり」「鉄板が入った安全靴で足首を蹴られたり、太ももの上部を大きなボルトで突かれたり」、製造業の派遣現場では「暴力がともなう労務管理」がなされているのです。以上の4つの特徴を指摘した上で、木下さんは以下のように書いています。


 派遣奴隷制と表現したが、もちろん奴隷そのものではない。しかし、奴隷制には、人格の否定、商品としての売買、支配的な強制労働という特徴が含まれているように思われる。奴隷とは「もの言う道具」なのである。匿名化された扱い、労働者をリースのように転がしていく商売、絶対的な指揮命令権、これらは労働者派遣制度をますます奴隷制のようなものにしていっていると言えるのではないだろうか。


(byノックオン)