690. ツイスター(96)/デイライト(96) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

70年代はパニック映画のブームだったが、♪回るー回るーよ、時代は回る~、ブームはまたやって来るもの。90年代、突然巻き起こったパニック映画ブーム。
ま、小ブームだけどね。後世に残る大傑作は1本もない。昨日の火山2連発に続いて、今日も「事故に・竜巻・火山・オヤジ」特集!


まずは“竜巻”「ツイスター」。
製作総指揮はスピルバーグ、原案はマイケル・クライトン。「ジュラシック・パーク」のコンビだ!監督は「スピード」でカメラマンから監督に出世したヤン・デ・ポン。
この完璧なトリオが、CG技術を駆使して、アメリカでは結構多くて深刻な脅威であるところの“竜巻”を映画で初めてリアルに再現。ていうか、言い方を換えれば、“竜巻”を映像表現して見せたいだけの映画。
ストーリー的にもそれは明解。竜巻で父親を亡くした過去を持つ主人公女性が、竜巻の研究チームに入り、「竜巻の野郎、ぶっ殺してやる!」、じゃなくて、「竜巻の中はどうなっているんだろう?」を探るため、最新機器を乗せた車で、あちこちで起こる竜巻を追いかけるって話。
まさに“竜巻”のための“竜巻”による“竜巻”の映画。脚本にある、竜巻シーンを再現するため、CGが駆使された、というのではなく、“竜巻”をCGで見せるために、“竜巻”の脚本”を書いた、というわけ。
それにしても、さすがに“竜巻”の映像は圧巻。みんな覚えてると思うが、看板から自動車からトラクターから、牛さんまで飛んで来ちゃう。牛さんはかわいそうだったね。
超大作らしく、当初はノンスター映画だったが、主人公役のヘレン・ハントはこの後「恋愛小説家」でオスカー受賞してスターに。ちょっと野暮ったいけど、普通のおばさんっぽい美貌があって、割といい。アメリカの余貴美子ってとこか(ちょっと違うかな)。
“あの人はどこ”監督ことヤン・デ・ポンの演出も、まだ快調。もっとも、外野から「ああだこうだ」と文句つけてるスピルとクライトンの姿が目に浮かぶようだが。「ヤンちゃん、そこはもうちょっとライトさが欲しいなあ」なんて。


次は“トンネル事故”「デイライト」。
海底トンネル事故に、偶然遭遇したシルベスター・スタローンが、ランボーに変身、いや、しないで生身の人間として、閉じ込められた人たちとともに、“デイライト(日の光)”を求めて、サバイバルする話。
オールドファンなら、ここでピンと来るだろうが、“トンネル事故”を“豪華客船の転覆”に置き換えれば「ポセイドン・アドベンチャー」と話は同じ。
結局、パニック映画なんて、パターンはいくつかに決まっちゃうもの。主人公を、救出する側に置くか、助けを求める側に置くか。“救出”側に置く方がスリリングなものになる。“助けられる”側のサバイバルも面白いが、設定が閉塞された空間内に限定されたりして、変化をつけにくい分、映画としては演出に腕が必要となる。
監督はロブ・コーエン。この後、「ワイルド・スピード」「トリプルX」「ステルス」と結構ヒット作を連発してるが、あんまりピンと来ないね。コーエン兄弟と名前が紛らわしいのも気に入らないし。
スタローンは、この映画で初めて、自分だけがメイン主人公でない、群像劇に近い作品に挑戦。ポスターやビデオジャケットにも顔が出ていないように、他のどの俳優がやってもいいようなオヤジ役を、内面演技を主にして頑張っている。この後は「コップランド」にも出てるし、いろいろ模索してた頃。「ロッキー」「ランボー」復帰はこの10年後。人生いろいろ。