697. リング(98)/らせん(98) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

ホラーは大嫌いな支配人だが、90年代に入って死に体状態にあった日本映画に活力を与えたのが、「パラサイト・イヴ」「リング」に始まる一連のJホラーだったことは間違いないと思う。今や世界に轟くJホラーの火付け役「リング」シリーズを、当館も避けて通る訳に行かない。


支配人が「リング」を知ったのは、2時間ドラマ版「リング」をビデオで借りてからである。
鈴木光司の原作本を見かけたこともあったが、プロレスの話かと思ってた(マジ。実際こういう人は多い)。高橋克典と原田芳雄主演、「NIGHT HEAD」「らせん」の飯田譲司監督によるこのドラマを知ってる人は結構いると思うが、私はこれで初めてあの衝撃のラストを知ったのだ。
すぐに原作を読んだ。「らせん」も出てたので続けて。もうあまりに有名なラストなので、書いてもいい気もするが違反なのでグッと抑えて。これほど救いのないラストはない。このからくりを思い付いた時点で、鈴木光司は一生食うのに困らなくなった。


やがて映画になった。「リング」「らせん」2本立。これはもう恐怖のズンドコ、もとい、どん底だ。「リング」の監督が、既に怖過ぎると静かな話題となっていた「女優霊」の中田秀夫。「らせん」がテレビ版「リング」の飯田譲司。観に行った。
目的の半分は、人気急上昇中の松嶋菜々子だった。「リング」の主人公は男だが、これを母親にしたのは当時違和感あったが、ハリウッド版「ザ・リング」にもそのまま引き継がれ、今ではこれが当り前に感じる。
冒頭“呪いのビデオ”の噂をして死んじゃう女子高生の一人は竹内結子、というのはもはや誰でも知ってる。菜々子、結子共演(2ショットはないが)とは、支配人的には夢のようだ。
真田広之、中谷美紀と豪華キャストで、岡山の映画館も結構客が入ってた。原作を読んでいた私としては、活字で想像する怖さを映画が超えているとは感じなかった。
「こんなもんか」と、「リング」が終わって休憩に入った時、劇場内に重~い空気が漂った。前の座席の女子中学生たちが、声も出さず互いの顔を見合わせ、不完全な笑みを交わしてた。誰もが同一の“衝撃”を受けた感じ・・・上映後の客席にこういう空気が流れる経験は、映画人生長い私も他に思いつかない。


続けて「らせん」を観るのには勇気が要る。
主演は佐藤浩市に代るが、真田広之はグロテスクな遺体役、菜々子も回想で出演。中谷美紀は謎の女性として、「らせん」「リング2」と初期「リング」ワールドを繋ぐ役割。
物語はさらに広がり、映像化不可能な「ループ」へと続く。貞子の怨念は(物語上も)本となり、映画となり、ハリウッドにまで行く。悪魔と取引きした佐藤浩市のエゴのために・・・。


初めてレンタル店の棚に「リング」「らせん」のビデオがズラーッと並んだ時、呪いがどんどん広がって行ってる気がしてゾッとした。小説の設定と同じく、ハリウッドまで進出して、世界的に有名になった「リング」。全ては貞子の思い通りになっている・・・いや、鈴木光司が金持ちになってるだけか?