![ダンサー・イン・ザ・ダーク](https://stat.ameba.jp/user_images/20150809/12/kitaco127/5f/b9/j/o0200028213390494106.jpg?caw=800)
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 DANCER IN THE DARK 2000年・デンマーク・ドイツ
セルマという女性がいて。
彼女は目が見えなくなる、どんどんと。
そんな彼女が見ている風景は、とてつもなく壮大だ。
鬱映画だと喧伝されていたので、どんなに過酷なのかと身構えていたけれど。
スクリーンに映し出される繊細で大胆な光景に、息を呑む結果に。
陰鬱な展開だけがあるのではない。
これは真っ当なミステリーであり、サスペンスであり。
軸には音楽があって、豊かな景色が広がる。
その眩さ、美しさが、たとえイマジネーションに封じ込められていようとも、だ。
主演のビョークはアイスランドの歌姫。
![ビョーク](https://stat.ameba.jp/user_images/20150811/20/kitaco127/dd/05/j/o0120018613392967248.jpg?caw=800)
白鳥をやらせたら、志村けんかビョークかと言われた逸材。
そんなキテレツ度が、功を奏した。
女神が舞い降りたような名演だ。身にまとう衣装が可愛らしい。
撮影中には監督と度々、衝突したというけれど、歌い始めたら一転、雷にも花にもなる。天才か。
常に警察官、それがデヴィッド・モースという俳優。
今作でも警官、そして色んな意味で核になる。どうしてやろうか、コイツを。
移民友人役のカトリーヌ・ドヌーヴがこれまた、素晴らしい!
看守を演じたシオバン・ファロンがいい。なんという人間味。
ラース・フォン・トリアー監督の終幕は、いつも悲劇的であると受け止められがち。
だが、そうだろうか。
当方には、常に解放に思える。ある種の、これしかないという恩赦にも見える。
セルマは頑固で、意固地で、献身だ。
アメリカに来た移民で、貧困で、出身は共産圏。
ショッキングな作風に惑わされるけれど、これは悲観ではなく、おそらく現実だ。
それらを包み込む、ロケ地の緑、そして風。
傑作ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の歌曲やシーンへの重ね合わせもまた、映画を豊かにしている。
リズムと歌唱がずっと故意にズレているのは、現実と空想とのズレでもあり。
そのリズムが、最後になって合致する。
セルマが見ている光は、強い。
哀しみばかりではない。
どうだこれは、圧倒的ではないか。
![映画](https://emoji.ameba.jp/img/user/uk/ukilico/426677.gif)
[関連作品]
ラース・フォン・トリアー監督 『ニンフォマニアック VOL.1/VOL.2』『メランコリア』
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