ダンサー・イン・ザ・ダーク

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 DANCER IN THE DARK 2000年・デンマーク・ドイツ 


セルマという女性がいて。
彼女は目が見えなくなる、どんどんと。
そんな彼女が見ている風景は、とてつもなく壮大だ。

鬱映画だと喧伝されていたので、どんなに過酷なのかと身構えていたけれど。
スクリーンに映し出される繊細で大胆な光景に、息を呑む結果に。

陰鬱な展開だけがあるのではない。
これは真っ当なミステリーであり、サスペンスであり。

軸には音楽があって、豊かな景色が広がる。
その眩さ、美しさが、たとえイマジネーションに封じ込められていようとも、だ。


主演のビョークはアイスランドの歌姫。
ビョーク
白鳥をやらせたら、志村けんかビョークかと言われた逸材。
そんなキテレツ度が、功を奏した。
女神が舞い降りたような名演だ。身にまとう衣装が可愛らしい。
撮影中には監督と度々、衝突したというけれど、歌い始めたら一転、雷にも花にもなる。天才か。

常に警察官、それがデヴィッド・モースという俳優。
今作でも警官、そして色んな意味で核になる。どうしてやろうか、コイツを。

移民友人役のカトリーヌ・ドヌーヴがこれまた、素晴らしい!

看守を演じたシオバン・ファロンがいい。なんという人間味。

ラース・フォン・トリアー監督の終幕は、いつも悲劇的であると受け止められがち。
だが、そうだろうか。
当方には、常に解放に思える。ある種の、これしかないという恩赦にも見える。


セルマは頑固で、意固地で、献身だ。
アメリカに来た移民で、貧困で、出身は共産圏。
ショッキングな作風に惑わされるけれど、これは悲観ではなく、おそらく現実だ。

それらを包み込む、ロケ地の緑、そして風。

傑作ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の歌曲やシーンへの重ね合わせもまた、映画を豊かにしている。

リズムと歌唱がずっと故意にズレているのは、現実と空想とのズレでもあり。
そのリズムが、最後になって合致する。

セルマが見ている光は、強い。
哀しみばかりではない。
どうだこれは、圧倒的ではないか。



映画 スクリーン(秋田シネマパレ

[関連作品]
ラース・フォン・トリアー監督 『ニンフォマニアック VOL.1/VOL.2』『メランコリア』



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