『桐島、部活やめるってよ』 2012年・日本
観ている間に、不思議なことが起こった。
高校卒業して間もないならまだしも、遥か遠く思い出も霞むババア(当方)。
これほど昔だと懐かしいとは感じずに、微笑ましい。
ところが終幕間際。
自分、高校生に戻った。気がする。
そんなことってあるか?
不器用で、どうしていいかわからなくて、好きなものがあって、好きな人がいて、学校という閉鎖空間で、一人の校内スターの動向が全員を巻き込んでザワザワと漣を立てる。
そんな時間の逆流がスルスルと全身の毛穴から血管に入って、体中を駆け巡って、気づいたら立ち戻っていた、あの時間に。
これを何と呼ぼう?
ミラクル?そう呼んでいいですか?
イケてるグループと、イケてないグループの対比。
殊に、映画部が最高。
笑いすぎてシワが増量。
映画部の神木隆之介は元より、相棒の前野朋哉がよい働き。
こう見えてこの方(失礼)、映画監督でもあるとは驚き。
高校生たちは大人数であるのに描き分けが完璧で、誰が誰なのかすぐに把握できる。
皆が皆、好演。
中でも秀逸なのは、野球部キャプテンの高橋周平!
あんな芝居は出来るものではない。しかも秋田出身。応援します。
橋本愛は顔立ちがスゴすぎて、エジプトの壁画を思い出す。
大後寿々花は成長に目を奪われるけれども、セリフ回しはさすが。
エンディングテーマが力強い高橋優も、秋田出身。応援してます。
吉田大八監督は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『クヒオ大佐』と来て3本目の鑑賞にして、天才と申し上げてよいですか?
人間を描かせたら飛びっきり。
これほどの群像劇を収束させる腕。
本当に、本当に天才。
この作品の面白さ・素晴らしさを語る語彙を持たない悔しさで震えるばかり。
ダメな人はダメ。ハマる人はハマる。それが映画。
今回の当方は、後者。
いや、これはもう愛。青春。身悶えするような、光。
こんな映画を生み出す原作を書いてくれた朝井リョウ氏にも、ありがとうございます。
スクリーン
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