「Letters」「Change the world」読者の為の福岡案内(第3回) | 『Go ahead,Make my day ! 』

『Go ahead,Make my day ! 』

【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

 
 中洲を南北に貫く中洲大通りはともかく、それ以外の路地は歓楽街という割にはけばけばしくもなければ明るくもない。ネオンや看板の人工的な灯りが真っ暗な中に浮かんで見える風景は迷路を連想させるほどだ。中洲はその名の通り那珂川の中州なので大した広さではないが、細い路地が入り組んでいるので不案内な人間にとっては文字通りのラビリンスだろう。
                             「Change the world」第21章より


『Go ahead,Make my day ! 』-中洲大通り

作中ではあまり登場しない中洲。主人公の年齢を考えると仕方がないことなんですが。(とか言いつつ「砕ける月」冒頭の回想シーンは中洲が舞台ですが)
なので、まずは他の作品(未完・中断作品含む)を合わせて、過去にどんなところが登場したかおさらいをしたいと思います。

「砕ける月」
・中洲大通りのゲームセンター
冒頭、男にちょっかいを出されてピンチの由真を真奈が助ける場面(回想)で登場。中洲大通りにあったTAITOのゲームセンターなのですが、残念ながら現在は閉店。
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲のゲーセン1 『Go ahead,Make my day ! 』-中洲のゲーセン2
こちらは中州のど真ん中にあるゲームセンター。今でも営業してます。ホントはこっちにするつもりだったのですが、見ての通りに中で立ち回りができそうにありません……。

・福博であい橋
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(路地1)同シーンでゲーセンを逃げ出した2人が一息つく場面で登場します。
実際には「逃げ切った」と余裕をかますにはあまり現場から離れていないのですが、これは2人が直線的に逃げたのではなく追っ手をまくために中洲を走り回った結果ということで(笑)
右の画像はであい橋から中洲中心部へ向かう路地。通称、であい橋通り――なんだそうですが、すいません、その名前を初めて知りました(苦笑)
正面の突き当たった通りが中洲大通りで、右に曲がってすぐのところに上↑のゲームセンターがあります。そこを折れて入っていったところがかつてはボッタクリ店の巣窟だった地獄通り。
(下↓の「Left Alone」のところで触れてます)

・バー・ピアニッシモ
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(博多川)由真の自宅に乗り込んだ後、博多駅近くの熊谷の事務所の様子を窺いに行く前に立ち寄る場面にて。架空の店ですが博多川(画像は明治通りより撮影)沿いなのは間違いないようです。(笑)
作品を越えてコンポーネントを共用する作風のわたしですが、一番多くの作品に登場しているのがこのバーだったりします。(他に「テネシー・ワルツ」、「優しい嘘」、「チョイ不良探偵、街を行く」、そして本作「Change the world」)
マスターの朽木氏は短篇「優しい嘘」の語り手であり、何度か言及される「口開けと同時にやってきてラフロイグを飲む常連」は「チョイ不良~」の語り手にして「Left Alone」にも登場する上社龍二です。上社は「チョイ不良~」の中で不良少女時代にこのバーの奥の小部屋に入り浸っていた真奈に触れていますし、本作でも真奈が常連の存在に触れてますので、本来であれば2人は顔見知りのはずなんですが……。(ここら辺が真奈の無関係者にはとことん無関心な性格の現われか?)

・熊谷総合企画
「砕ける月」の悪役、熊谷氏の経営コンサルタント事務所。ただし、ブログ掲載版のみで書庫サイト収録版では博多駅の近くにお引越しされてます(笑)。ちなみに所在地の中洲中島町というのは昭和通りを越えた中州の北端なんですが、地名の由来はこの中洲がかつては中ノ島と呼ばれていたことから。
中洲でも盛り場なのは昭和通りの南側の5丁目までで中洲中島町はとても静かです。(と言っても5丁目もかなり寂しいですが)

・小野寺知巳(トモミ)の自宅マンション
『Go ahead,Make my day ! 』-冷泉公園厳密には中洲ではありませんが、他に入れるところがないので……。
中洲から博多川を挟んだ反対側に上川端商店街アーケードがありますが、その反対側(中洲から見ると向こう側)が冷泉町。トモミのマンションは冷泉公園の真向かいにあります。
冷泉公園近辺は博多部と呼ばれる「狭義の博多」の一部で、いわゆる博多っ子というのは本来この辺の住民のことを指します。神社仏閣が多く昔ながらの店並みが並ぶ非常に趣きのある地域ですが、近年は川端・住吉地区際開発の余波を受けて新しい建物も多くなってきてますね。
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(川端商店街のアーケード)また、ここは「Left Alone」で権藤康臣による倉田兄弟襲撃事件の舞台として再登場しています。
その際に真奈がトモミの住居に触れていないのは、彼女がすでに療養生活に入ってマンションを処分していたためですが、真奈が倉田兄弟のマンションの入り方などを知らなかったことからすると同じマンションではない模様。尚、このとき通った博多橋の袂からアーケードを横断する路地(下の画像)は「砕ける月」の終盤で真奈が防弾ジャケットを着せられたところ。
マンション前には「土居通り」という名前があるのですが、わたし、この名前を使ってる人に会ったことがありません。

・中洲の川沿いのビル
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(であい橋より)ラストの徳永麻子との対決シーンで登場したバーや飲み屋が入った雑居ビル。
具体的なビル名は出していませんが、屋上にネオン看板が設置してある(徳永麻子はその台座のコンクリートに座って真奈を待っていました)ことから考えると中洲4丁目の比較的春吉橋寄りのビルと思われます。ただ、真奈は屋上の広さを「空調機や貯水槽などでゴチャゴチャしていなかったらバスケットボールの試合くらいは出来そう」と言ってますが、実際にそこまで広いビルはないですね……。
(画像はであい橋の上から撮影したもの)


「Left Alone」
・アクエリアス(ラウンジ)
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(飲み屋ビル)白石葉子について聞き込みに行く場面で登場。ここも具体的な場所は書いてませんが、この手の小綺麗な店はだいたい中洲大通り沿いにあるようです。

作中でわたしは中洲の飲み屋の分類について「概ねクラブとラウンジ、スナックに分類される。いわゆるキャバクラは福岡ではラウンジと呼ばれる」と書いてます。まあ、これは間違いではないのですが、最近では全国区名称であるキャバクラやニュークラブなども普通に使われているようですね。ちなみに北九州(と札幌)では「キャバクラ」はセクシーパブ(女性が半裸で接客するお店)を指すので、今でも同様の店はラウンジで統一されています。
実際のところ、この手の店のカテゴリ分けってあんまり意味ないんですよね……。

・ナカス・ハッピー・クレジット(第二丸山ビル)
真昼の中洲という少々イメージが狂うシチュエーションですが、真奈が火災報知器を鳴らして店員を燻り出すという暴挙(笑)に出る場面。場所は大通りから裏手に入った中洲で一番怪しい一画、かつては通称”地獄通り”と呼ばれたボッタクリ店の巣窟です。(白状します。ボッタクられたことがあります)

わたしが中洲近辺をウロウロしていた11、2年前は中洲大通りとであい橋通りがぶつかる辺りには客引きのオニイチャンやオッサンが大勢たむろしていて、通行人に声をかけていたものです。「La vie en rose」で登場する<ポンパドール>のような昏睡強盗もどきの店もフツーにありました。今は迷惑防止条例のおかげで客引きの姿は激減しています。まあ、それでもいないわけではなくて、トランシーバー片手に連絡を取り合いながら声をかけてはいるのですが。
(ちなみに客引きの連中というのは当時からかなり組織化されていて、誰かが連れて行った客(被害者)がボッタクリ店から出てくるとたちどころに連絡が回って、客引き(加害者)は急いで姿を隠していたものです。故に、腹を立てた客が怒って客引きを捜しても見つからないのですね)

一応捜してみましたが、当時の画像などあるはずないので現在のものを。右は同じ通りにある、今は閉館してしまった博多ロックハリウッド。どうでもいいですが、真奈はどうしてこれを「ストリップ劇場」と知っていたのだろう……?
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(路地3) 『Go ahead,Make my day ! 』-ロックハリウッド
現在は客引きに取って代わるように中洲のあちこちに「無料案内所」というのがあります。風俗雑誌系列のものや独立経営のものまでいろいろですが、信頼度がどの程度かは不明。
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(無料案内所1) 『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(無料案内所2)

・ラ・ロシェル(ホストクラブ)
中洲にどれくらいのホストクラブがあるのか。
これは真奈と留美が倉田兄弟に会うためにホストクラブを訪れる場面を描くときにずいぶん調べたのですが、残念ながら分かりませんでした。ただ、国体道路沿いのオーロラビジョンに普通にホストクラブの広告が出てますし、上↑でご紹介した無料案内所にも当たり前のようにパネルが出てますので(ということは女性客も案内所を利用しているということなのですが……いやはや)それなりの軒数があるのは間違いなさそうです。ついでに言うと知名度の高いカリスマホストな人もいるのだそうで……。
ラ・ロシェルの場所は明らかにしてませんが、中洲4丁目の川沿いのビルを想定してます。

・国体道路沿いのカフェ
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲のカフェホストクラブを出てから真奈たちと倉田兄弟が話す場面の舞台。実名は出してませんが実在する店です。出せない理由は別にないんですけど何となく。
中洲大通りの南端という場所と深夜まで開いてるということで客層は中洲のホステスさん(出勤前)とか店の関係者、あるいは客といったところのようです。コーヒーの味等は可もなく不可もなく価格も妥当じゃなかろうかと。
ただ、店内がものすごくタバコくさいのはどうにかならんだろうか……。

・国体道路沿いのローソン
『Go ahead,Make my day ! 』-国体道路のローソン上↑の場面の後、店の前で雑談するシーンで登場。
南新地の入口という最強のロケーションなおかげか、いつ行っても非常に混んでおります。舗道の花壇(だと思う)とかガードレールなどの腰掛けるのにちょうどいいものがあるせいか、店の前にも大勢の人がたむろしていて、ある意味では中洲の表玄関的なところもありますね。
ちなみに、このローソンは「La vie en rose」で熊谷氏が風俗情報誌を買って帰ったローソンでもありますし、本人談によると不良少女時代の真奈はこの店の前で通りを眺めてたのだそうです。
(そりゃ、こんなとこに女の子が一人でボーっとしてりゃちょっかい掛けられるわなぁ……)
 
・人形小路
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(人形小路)実際に行ってみると単に奥まったところにある飲み屋横丁なのですが、名前に趣きがあるせいか、中洲の古き時代の代名詞的な扱いを受けてるところですね。だからって熊谷氏が常連の店みたいな「昭和40年代」的な雰囲気はさすがに残ってないような気がしますが……。

 
とりあえず作中登場はこんなところですかね~。
「Change the world」で真奈が言っているように、中洲という街は歓楽街の割には薄暗いというか、あまり煌々とライトアップされていないという特徴があります。もちろん、大通りはそれなりに明るいのですが、一歩裏路地に入ると良く言えば雰囲気がある、悪く言えば何となく怪しい気配が充満しています。まあ、それが中洲の魅力でもあるのですが。
それにしても、意外といろんなところを出していて自分でもビックリなのですが、それはおそらく登場人物にピアニッシモでしか飲ませてなくて他の店を描いてないから、あまり描いてなかったような気がするのかもしれません。ホストクラブのシーンはあるわけですがあれは特殊な例ですしね。歓楽街の様子そのものの描写もしてないなぁ……。
(「La vie en rose」で同伴出勤の場面があるくらいか?)

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えーっと、実はこの後、シリーズ最大の反響(といってもお三方ですが……)を戴きました「中洲・南新地編」だったのですが、考えたらこの福岡案内、

真名さん書庫とリンクして戴くのですよね。

わたし(えいみす)の人間性をご存知(のはず)のいつもの来訪者の方々だったら「ああ、またコイツやってやがるぜ」と暖かい眼差しで受け取ってくださると思うのですが、真名さん書庫からおいでくださる方が「……なんだこれ?」と思われると、ピュアホワイトな(←なぜかピンク)真名さんのお人柄まで誤解される可能性があるということに気づきまして。

とりあえず「中洲南新地編」は第3.5回として分割させていただくことにしました。もともとの記事を3.5回にしてますので戴いてたコメントもあっちにいってますが、まあ、別に構わないだろうということで。(笑)