「Letters」「Change the world」読者の為の福岡案内(第2回) | 『Go ahead,Make my day ! 』

『Go ahead,Make my day ! 』

【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

 アタシたちは西中洲から国体道路に出て中洲方面に歩いていた。由真の中学のときの先輩が働いているガールズ・バーが中洲に支店を出して、そこでチーフを任されているというので顔を出してみることになったのだ。
(中略)
 由真の先輩の店は中洲四丁目の川沿いのビルという話だったので、春吉橋を渡ってすぐに南新地と反対側に折れて川沿いを歩いた。

                             「Change the world」第21章より

 
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲
 
『Go ahead,Make my day ! 』-MAP(西中洲周辺)


というわけで九州最大の歓楽街である中洲。簡単にその概略をおさらいしておきますと、

1600年(慶長5年)、当時の福岡藩主黒田長政が福岡(現在の中央区)と博多(現在の博多区)を結ぶために中の島の東西に東中島橋、西中島橋(現在の昭和通り)をかけて誕生した。現在の中洲には18(福岡方に7、博多方に11)の橋が架けられている。かつては老舗百貨店「玉屋」や映画館でにぎわいを見せた地域であるが、現在の商業地域の中心は中央区の天神や大名へと移っている。
博多祇園山笠には中洲流として参加している。高級料亭等が集い、繁華街のにぎわいは堅調である。
映画館は一時期、中洲に集中していたが、天神東宝のように中洲を避けて天神に移転する例もあり、現在の映画館は「中洲大洋」(大洋映画劇場)のみである。
全国的に有名な事物として、福博であい橋(かつて福岡ダイエーホークスの優勝時この橋からファンがダイブをした)からの那珂川沿いのネオンサインの風景や、那珂川沿いの屋台、風俗店街がとても多いこと(隣接する南新地地区が俗に言うソープランド街)などが挙げられる。
1996年、隣接する住吉地区にキャナルシティ博多が開業してからは、天神地区とキャナルシティ博多の中間に位置し、天神-中洲-キャナルシティ博多-JR博多駅のエリアが一体化した。また隣接する川端地区とも一体化した再開発が進められており、今後の新しい中洲地区が期待されている。
2006年には玉屋跡地に大型複合商業施設gate'sがオープンした。

中洲にある店の数 - 約3,500軒(飲食店、風俗店など)
中洲で働く人の数 - 約3万人
1日に中洲に遊びに来る人 - 約6万人
(いずれも中洲観光協会より)

福岡市出身のタレント・タモリは、かつてギャグで中洲産業大学教授を名乗っていた。(出典:Wikipedia)


第18章でちらりと触れておりますが、福岡には”博多”という別称があります。
これは全国レベルでは様々な誤用を招いていたりもするのですが、そもそも”福岡”と”博多”は別の街です。黒田藩の城である福岡城(中央区大手門。現在は福岡高裁・地裁などがあります)を擁する武士の町が福岡で、博多部を中心にした商人の町が博多なのですね。両者は那珂川を境界線にしていたのですが、それを上記のように橋で繋いで今のようになったわけです。
作中で何度か「地元の人間は地元を博多と呼ばない」と書いてますが、この名称は全国レベルでの知名度が高く、また愛着を持つ人も多いので故郷を離れた出身者は地元を福岡ではなく”博多”と呼ぶ傾向があるようです。ちなみに現在の市制が敷かれた後、一度”博多市”になりかけたことがありますが、市議会での投票でわずか一票差で否決されたという歴史もあります。

(私見ですが、地元の歴史に深い愛着がある地域ほど現在の県名より江戸時代の藩名にこだわる傾向があるような気がしますね。わたしの出身地である佐賀県は明治維新後のほうが歴史的に明るいので(笑)藩名の肥前より佐賀の方が受け入れられていますが、現在住んでいる熊本県は加藤清正が活躍した時代のほうが総じてウケがよく――歴史的に徐々に発言力を失ったこともあるでしょうが――藩名の肥後が好んで使われていますから)

閑話休題。
さて、物語の流れとしてはキャナルシティ → 西中洲なので、まずは西中洲へ。

『Go ahead,Make my day ! 』-中洲(遠景)『Go ahead,Make my day ! 』-西中洲遠景
ちょっと強引な感じがありありですが(笑)左が中洲、右が西中洲です。この画像は作中で真奈が言ってる西大橋(明治通り)の上のものではなく、おそらく福博であい橋の上から撮ったものでしょう。(であい橋については後述)
あ、そうそう。これも何度か書いてますが”中洲”とついても西中洲は中央区です。(中洲は博多区)

『Go ahead,Make my day ! 』-西中洲/国体道路方面『Go ahead,Make my day ! 』-西中洲/明治通り方面
『Go ahead,Make my day ! 』-西中洲(路地)『Go ahead,Make my day ! 』-西中洲/路地
西中洲の表通りは何と言うか、寂しい感じのところですが、裏に入ると狭い路地沿いに老舗の料亭とかちょっとこじゃれたレストランが軒を連ねる趣きのある地域です。
博多の料亭はここ、西中洲と中洲南新地、住吉といった那珂川周辺に集中しています。一見さんお断りというところも未だにあるらしいです。中洲の飲み屋の多くが「おカネさえあればどなたでもおいでください」なのに対して、こういう料亭は「偉い人専用」の大人の社交場といった感じなんですかね。(残念ながら行ったことがないのでよく分かりません……)

『Go ahead,Make my day ! 』-西中洲(南端) 『Go ahead,Make my day ! 』-薬院新川

正面の銀色の細長いビルが西中洲の北端に建つ大同生命ビル。ここで合流しているのは那珂川(向かって左)と薬院新川(同右)。西中洲地区と天神の間を流れる川です。名前の由来はその名の通り、薬院方面から流れているから。
余談ですが、河口部の平野にしては福岡市内は意外と川が少ないんじゃないかなーとわたしは思います。他所と比べてどうなのか分かりませんが、総延長で6キロを越える博多湾岸に流れ込む大きな川は東区から多々良川(東区)、御笠川(博多区)、那珂川(博多区・中央区の境界)、樋井川(早良区)、室見川(早良区・西区の境界)の5本しかありませんから。

あ、今さらですけど福岡市の区の位置づけってこうなってます。
『Go ahead,Make my day ! 』-福岡市


『Go ahead,Make my day ! 』-バニーガールちなみに大同生命ビル14Fにはエスカイヤクラブがありまして、わたし、一度だけ連れて行ってもらったことがあるのですが、バニーガールってやつを初めて見ました。
(いや、この画像が貼りたかったわけでは決して……笑)

さて、気を取り直して。
一行は西中洲から国体道路に出て、中洲方面へ歩いていくのですが。
『Go ahead,Make my day ! 』-春吉橋
これが作中で頻繁に登場する春吉橋。国体道路を天神方面から来て中洲へ渡る橋です。(写真で言うと左から右へ歩いてます)

『Go ahead,Make my day ! 』-春吉橋1昼間はこんな感じ。これは中洲側から写したものです。正面のハーフミラーの建物(パチンコ屋です)の向こうが春吉。市内きってのラブホテル街――だったのですが、最近はどうもそうでもない模様。「パートタイム・ラヴァー」でキャナルの運河に落ちた由真が村上を押し切って入ったのがここです。
(何やってんだ、こいつら……)

ちなみにわたしが夏に泊まったホテル・イル・パラッツォも春吉にあります。「Left Alone」の冒頭で真奈と村上の食事のシーンにも登場しますが、いつの間にかメインダイニングの名前が変わってました。
(現在でもガイドブックには「リストランテ・イル・パラッツォ」と表記されることが多いのですが、かなり以前に「ビストロI.P.モダン」になっていたのだそうで。イタリアン・テイストのホテルなのに何ゆえフレンチ……?)
『Go ahead,Make my day ! 』-イル・パラッツォ1 『Go ahead,Make my day ! 』-イル・パラッツォ2

そして、この橋の中洲側の袂から清流公園のほうに延びているのが博多名物の屋台通り(という名前ではないのですが……)

「へえ、あれが屋台か」
 春吉橋に差し掛かったところで、向坂が道向かいを眺めて呟いた。
 国体道路から清流公園に折れる路地沿いには博多名物の屋台が多く集まっていて、煌々と照らされた那珂川沿いの遊歩道に十数軒が軒を連ねている。入りきらない客のために舗道の反対側や隣の屋台との間にテーブルを置いている店もある。

                          「Change the world」第21章より

 
『Go ahead,Make my day ! 』-屋台(春吉橋~清流公園)

『Go ahead,Make my day ! 』-屋台2『Go ahead,Make my day ! 』-屋台1
何軒くらいあるのか調べてみたのですが、残念ながら分かりませんでした……。

屋台の詳細については書くと長くなるので割愛しますが、ここでは福岡を訪れる機会のある方への注意事項を少し。
博多の屋台と言えば有名で、観光客の方々にとっても1つの楽しみであることは間違いありません。
同時に屋台にとっても観光客はとても大事なお客様なのですが、リピーターを想定していないからか、旅行先で財布の紐が緩いのを当て込んでいるからか、ここのような観光客メインの屋台はハッキリ言って「観光客価格」です。わたしも夏にイルパラに泊まった際に行きましたけど、ラーメン1杯とビール小ビン1本で1200円とられました。(ビールが500円だとするとラーメンは700円……福岡ではあり得ん価格です)
「100円や200円くらいいいじゃん」という太っ腹な方はそれでも良いのでしょうが、わたしのように根がケチ(しかも食品関係の仕事をしているので食べ物の値段には煩い)な人間にとっては、仕方ないと思いつつもあまり愉快でないのも事実です。
なので(ここに限らず)屋台選びのポイントを。それは、

価格表が掲げてあるかどうか

非常にシンプルで当たり前のことなんですが、意外とこれが出てない屋台が多いんですねぇ。もちろん価格表がないからボッタクリと決め付けることはできませんが、そういう店を避ければお勘定の際になって不快な思いをするのは避けられます。
それと、これは非常に大事なポイントですが屋台では生ものを出すことは一切禁じられております!!
「さすが博多の屋台、新鮮な海の幸が食べられていいねぇ~」などと呑気なことを言っている場合ではありません。それはれっきとした法令違反です。(しかも、そういう店ほどボッタクリ……)
一時期に比べればずいぶん減ったと聞いてますが、まだあるらしいので要注意です。

あと、とんこつラーメンと言えば「替え玉」というのが定番ですが、屋台ではほとんどの店でできませんので要注意。ガッツリ食べたい方は最初から大盛りで。

(記事が長くなりすぎたので第3回に続く――なんか最後のとこ、観光ガイドみたいだな)