<アメリカに対する日本の防御線>
最近、親米派や国際派を自認する保守派知識人・学者を名乗る人々が再び、声高に
「国際社会で孤立しないために、日本は集団的自衛権の行使に踏み切るべきである」
とか
「日米同盟を危機にさらしたり、漂流させたりしないために、アメリカ軍との共同行動に踏み切るべきだ」
と盛んに勇ましいことを言い出した。
この人々は何か大きく勘違いしている人たちではないか。
この人々こそはまさしく、アメリカの手先ではないのか。
私は、真っ向からこの種の言論学者たちと闘うことに決めた。
反戦平和こそは、民衆の願いである。
すべての歴史を通じて、国民大衆は戦争を嫌い、平和を希ってきた。
インテリや理論家を自称する者たちはど、新奇な考えにとらわれて、ふっと時代の熱病にかかって人類の永遠の理想をかなぐり捨ててきた。
私は今こそ、反戦平和派に戻る。
陳腐なる日本の「反戦平和リベラル勢力」自身が、今や蔑み投げ捨てようとしているボロボロになった反戦平和の旗を拾い上げて、再び高く掲げようと思う。
アメリカがいちばん嫌なのは日本の国民大衆が、 駐留アメリカ軍の存在 や 戦争のきな臭さ に対して具体的な反対決議や行動を行うことである。
駐留アメリカ軍基地の撤去・返還の決議である。
アメリカ政府は、世界覇権国(世界帝国)であるから、日本の政治家や官僚トップ指導者層を上から殴りつけ、屈服させることは簡単である。
だから、日本はアメリカの属国(従属国)の一つなのである。
属国のことを同盟国、あるいは友好国とも言う。
これは、私が唱導してきた大理論だ。
ところが、その属国の一般民衆までもは、アメリカの支配層といえども、いちいち説き伏せることはできないのである。
アメリカがいちばんおそれるのは、たとえば 沖縄の県議会 や 市議会 で
駐留アメリカ軍の撤退 や 基地の早期返還の決議 を次々に出されることである。
米軍兵士による少女強姦事件のような象徴的な出来事があるたびに、日本国内に反米感情が沸き起こる。
最近も沖縄で再び起きた。
たとえば、日本の大きな港を抱えたある市が「この港には、アメリカの軍艦の寄港を許さない」と市議会で決議したり、県知事や市長たちが見解を発表したりする。
それをアメリカ政府はどれほど嫌がり、恐れることか。
日本対策班の責任者たちは泣き出したくなるのだ。
その若手の現場責任者が、マイケル・グリーン氏である。
だからこそ、ここが日本のアメリカに対する防御線であり、抵抗線である。
外交問題や国際政治問題で、専門家ぶる人々はいまこそ自らの頭を疑え。
自らの理論を疑え。
何をもって、自らを言論人や知識人と自惚れたか。
長年にわたって積み重ねたその思考や論理こそはまさしくアメリカの思う壷にはまった、愚かなる人生態度ではないか。
そうではないと、私に正面から反論できるか。
このように書く私は、みなさんからしてみれば奇矯で偏屈な反米主義者に過ぎないのか。
私こそは、みなさんが渋々認めるアメリカ現代政治諸思想の研究の第一人者ではないか。
アメリカ政府が具体的に要望していることはなにか。
それは、アメリカの艦船が日本の主要な港に自由に出入り(寄港)できること。
戦闘爆撃機Flフアイティング・ファルコン)が日本国内の道路に不時着できること。
それから、ソウルの北方に駐留しているアメリカ軍三万七〇〇〇人(ダグラス・マッカーサ上万帥が率いたアメリカ陸軍師団の流れである)の家族二〇万人を、緊急にハヮイやグアムに避難させるために、日本航空 や 全日空 の 飛行機一〇〇機を 強制的にチャーター できるようにすることである。
日本政府の金で。
だから、私はアメリカ政府の強引な要求に必死で抵抗している日本の対米交渉官僚たちの苦しみを理解したい。
たとえ、台湾海峡有事が勃発するとしても、それは中国軍とアメリカ軍に激突させればいいのである。
それは日本軍は領土・領海から1歩も外に出てはならない。
外に出て中国軍とわずかでも交戦すれば、国家間戦争である。
日本は、病院船 と 補給船 だけを出して、ひたすらアメリカに貢(みつ) ぎ続ければよいのだ。
それを、後方支援活動(ロジスティカル・サポート)と言う。
こんなものは安いものである。
中国は日本がアメリカの下働きをするからといって、本気で怒ることはない。
中国の政府高官の中にも、事情がわかっている賢明な人々がいる。
いやすべての東アジア諸国の指導者たちがアジア人同士で戦ってはならないという優れた知恵を持っているのである。
アメリカが狙っているのは
「分断して支配せよ」
という、
古代ローマ帝国が築き上げた属国同士を互いに対立反目させ
「分断する」
することで、
「帝国の秩序を保とうとす分割統治」
という世界支配戦略である。
これに乗せられてはならない。
同じく、中国の若者たちを、アメリカが反日でけしかけようとしているのが透けて見える。
私たちは、遠い歴史に照らし出された人類の知恵から学ぶべきである。
<アメリカ追従の集団的自衛権行使は自殺行為>
だからこそ、私は集団的自衛権の行使に踏み切るべきだ論に強く反対する。
たとえ、この私の態度表明が、かつての頑迷なリベラル護憲勢左翼陣営)の主張と見まごうばかりのおかしな反体制言論であるように受け取られても仕方がない。
私は微妙に態度を変えたのである。
私は憲法改正賛成派である。
日本は自立国家とならなければならない。
日本国が、自力で自国を守り、国家としての本当の独立を達成し、自立戦略をとっ国際社会で「名誉ある地位」を獲得できることを強く願う。
当然、国軍はアメリカ軍の指揮下から脱せねばならない。
そのために私は、僣越ながら「民間人国家戦略家」を名乗ってきた。
あらゆる場合を想定した、数百個にも及ぶさまざまな国家戦略を練りつつある。
この私が編されると思うか。
本物の日本の愛国派および保守派の人々に対しては、改めて次のように提言することもできる。
あの吉田茂元首相が、本当は裏側で共産党や社会党左派の人々と手を組みながら反米デモ(たとえば、六〇年安保闘争)を組織させ、故意に日本民衆をアメリカにけしかけたように。
それを対米交渉のカードとして使った。
国内の反米運動を自分たちを守る防壁にした……と。
表面上は、政敵の岸信介を追い落とした。
こういう手はいかがでしょうか。
このような提言もできるのである。
続けて、先述した、対日戦略論文についての新聞記事の残りを以下に載せる。
(引用開始)
報告書はまず朝鮮半島や台湾海峡の情勢が不安定であることを指摘し、日米安保関係は「これまで以上に重要性を増している」とし、強化の必要性を強調した。
両国の同盟関係は単に「負担の分かち合い」にとどまら力を共有する時が来たとし、集団的自衛権の行使のほか、有事法制の制定、国連平和維持軍(PKF)本隊業務の参加凍結の解除、情報面での協力の強化などを提唱している。
沖縄については、日米特別行動委員会(SACO)合意が目指す基地再編」「統合」「削減」に加え、海兵隊の施設や訓練を「アジア太平洋地域に分散する」という新たな目標も模索すべきだとの考えを打ち出している。
この日、会見したアーミテージ氏は、最終的には駐留軍の規模削減につながると見ていることも明らかにした。
経済面では構造改革に向けた一層の努力を求めているはか、短期的には財政・金融面での景気刺激策が必要だとしている。
(『朝日新聞』二〇〇〇年一〇月一二日付)
(引用終わり)
このように、朝鮮半島や台湾海峡の有事を前提としたアメリカ政府の日本に対する、さまざまな尻叩きはすでに始まっている。
おそらく、あと半年もせずに、日本国政府の方針の大変更として「日本は集団的自衛権の行使に踏み切る」という政府発表がなされるであろう。
現に、二〇〇〇年末には、自民党橋本派内のおかしな「研究会」が、「集団的自衛権の行使」を発表した。
あわせて、有事法制(日米防衛協力のためのガイドライン法)の再度の改正・強化の作業が進展するであろう。
この事態は、なし崩しで進んでいくように見える。
だから、ここまで書いてきた私の言論など、なんの有効性も持たない、ただのひねくれ者の言説として、わきにどかされるであろう。
だが、しかし、私がここにはっきりと表明した反戦平和、中国とぶつかってはならないとする態度は、読者諸君の胸に深く突き刺さり、有識者たちの脳を激しく揺さぶってゆくであろう。
私は、急速に九〇度左旋回したのである。
日本国民はいざとなったら、団結せねばならないし、団結するのである。
これまであまりに、安全保障(交・軍事)をめぐる問題でアメリカに手玉にとられて国論を分裂させられてきた。
それが政党間の基本対立軸にまでなってきた。
そのように仕組まれてきたというべきだ。
私たちは、今こそドイツに見習うべきである。
あのドイツは、外交・安全保障で国論は統一している。
真の愛国者とはどのようなものであるかを、これからのささやかな言論戦の中で私が身をもってお示ししよう。
*
このようにここまで序章として書いた。
以下の各章は私がこの一年半の間に発表してきたアメリカ政治分析である。
それと連動する世界各地域の国際情勢の分析である。
世界の激しい動きを、同時並行的に書いた。
これらをまとめた後に、この序章を書く心境に至った。
時代の荒波に洗われて、私たち自身も、日下大きく揺り動かされているのである。
波に飲み込まれてたまるか。
二〇〇一年三月
副島隆彦
(転載貼り付け終わり)
以上です。
私は、この文章を読んだ時、恐ろしい衝撃を受けました。
この文章に出てくるマイケル・グリーンは、
いまや若手ではなくアーミテージについでナンバー2の「日本政界工作担当」になっていますし、
その子分も当時(2001年当時)は長島昭久だけでしたが、今や小泉進次郎や自民党の複数の若手議員にまで広がっています。