ロクラク事件はどうなった? | 知財弁護士の本棚

知財弁護士の本棚

企業法務を専門とする弁護士です(登録28年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 古い話題で恐縮だが、まねきTV事件最高裁判決(平成23年1月18日)とロクラクⅡ事件最高裁判決(平成23年1月20日)は、ともに原審知財高裁に差し戻しになった。多くの人はカラオケ法理とかの法的議論に関心を持っているが、私はそこのところはあまり関心がなく、両事件の事案の違いに関心を持っている。


 まねきTVの永野商店のHPを見るといつのまにかサービスは停止になっており、差し戻し審の判決全文が掲載されている。平成24年1月31日の判決で永野商店は敗訴になっていた。最高裁判決の内容からして予想された結果である。


 これに対してロクラクの方はどうなったのか。最高裁は、親機ロクラクの管理状況を認定することなく「複製」主体を決められないとして差し戻したのであるが、日本デジタル家電のHPの記載内容が真実であるとすると、日本デジタル家電は親機を管理していない。あくまでユーザーが日本国内に残した自宅に親機を設置して自分で管理するようである。


 そうすると、日本デジタル家電の行為は、まねきTV事件における「ロケーションフリー(ベースステーション)」を製造販売していたソニーの行為と同じであることになる。ソニーが仮に「ロケーションフリー」の専業メーカーであるとし、販売の代わりにレンタルに置き換えると、ソニーの行為と日本デジタル家電の行為はほとんど同じである(ロケーションフリーのユーザーは転送された番組を主にPCで視聴し、ロクラクのユーザーは通常のテレビで視聴するといった違いはあるが)。


 したがって、日本デジタル家電が「複製」の主体であるというのは、無理なように私には見える。


 誰もソニーの責任を言わないのだから日本デジタル家電もOKと見るか。あるいは逆に、ソニーだってロケーションフリーをいつのまにか生産終了にしたのはリスクを回避するためじゃないのと見るか。


(5月10日補足)

 ロクラク事件差戻し審は平成24年1月31日に判決が出ていた。日本デジタル家電が親機を管理していると認定している。要するに日本デジタル家電の主張内容は虚偽であるという事実認定だ。であれば仕方ない。