アメリカ特許法改正(4) | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 最近、将棋をテーマにした「盤上のアルファ」という小説を読みました。予想以上に面白かったです。


 間が開いてしまいましたが、前回のつづき。


 新法の102条(a)(1)に対しては、以下の適用除外が規定されています(102条(b)(1))。


(b) EXCEPTIONS.—
(1) DISCLOSURES MADE 1 YEAR OR LESS BEFORE THE EFFECTIVE FILING DATE OF THE CLAIMED INVENTION.—A disclosure made 1 year or less before the effective filing date of a claimed invention shall not be prior art to the claimed invention under subsection (a)(1) if— 


 「以下の(A)または(B)の場合には、実効出願日(effective filing date)から1年以内前に開示されたものは、(a)(1)における先行技術(prior art)とならない」としています。


(A) the disclosure was made by the inventor...or by another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor...; or


 これ、分かりにくいのですが、the inventorというのは「本件特許」の発明者のこと。したがって、大意は「開示が、発明者自身、または発明者から発明の内容を知得した他人によってなされたとき」という意味。要するに自分で開示したときです。


(B) the subject matter disclosed had, before such disclosure, been publicly disclosed by the inventor... or another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor....


「開示された発明の内容が、当該開示のなされる前に、発明者(甲とします)自身、または発明者から発明の内容を知得した他人によってなされていたとき」という意味。つまり、(B)は(A)以外の場合なので、審査官が引用する(または侵害訴訟の被告が主張する)「開示」は「まったくの他人」(乙とします)からなされていると考えるとわかりやすいでしょう。その場合でも、乙の開示前に甲が自分で発明の内容を公表していれば、乙の開示は(a)(1)の先行技術になりません。


 この場合、甲の開示が出願日から1年以上前のものであっても、乙の開示が1年以内であれば、乙の開示に関しては適用除外ありのはずです。条文上はそうなります。ただし、そういうことを出願人(特許権者)が主張すると、甲自身の開示による新たな拒絶理由(無効理由)が生じることは別論です。