ライツプランによる買収防衛 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 越知保見「ブルドックソース事件決定と日本型ライツプランの再検討」(判例時報2059号3頁)を読んだ。


 まあ、こういうのは趣味です。


 新株予約権を使って買収者の持ち株比率を稀釈し、買収意欲を失わせることを狙った買収防衛策を「ライツ・プラン」という。昔(といっても10年くらい前)は「ポイズン・ピル」と言ったと思う。


 アメリカにおけるライツプランの本来のあり方(交渉の時間をかせぐものであり、滅多に発動されない)からすればブルドックソース事件最高裁決定は疑問であり、企業価値研究会の新報告書がこれに緊急介入したのは適切であったとする。


 ブルドックソース事件最高裁決定(平成19年8月7日)というのは、平たく言うと、要するに「株主総会で決めたんだからいいんじゃないの」「ファンドも(新株予約権の会社による取得の)対価を受け取っているわけだし、損したわけじゃないからいいでしょ」ということである。


 企業価値研究会の新報告書について、一部の実務家は「行政による司法介入だ」と批判し、研究会側も「ブルドックソース事件最高裁決定を否定するものではない」と釈明しているが、越知先生の論理は明快である。


 越知先生の独自の言い回しが多くて面白い。「より率直に述べるならば、グリーンメーラーに対する利益供与を、適法にかつ取締役の責任を生じさせずに行うプランとさえ評価できる」「自己の利益を追及して何が悪い。日本は共産主義国家かとのファンドからの批判が聞こえてきそうであるが・・・外国ファンドの感情的な反発を呼びかねない表現であることに注意すべきで、焼畑農業の論理では産業資源の枯渇を招くといった方がよい」


 この論文には触れていないが、ライツ・プランについての最大の疑問は、弁護士費用が高すぎることである。ブルドックソースは買収防衛関連費用で数億円を使ったため経営に影響するほどの出費となったことは有名な話だ。


 また、別の大手事務所で推奨している「信託型」については、ある上場企業で初期導入費用に5000万円、毎年の維持費に1500万円かかったという話が新聞に出ていた(信託銀行の費用を含む)。「うちのような規模の会社には小さな出費ではない」

 

 こういうのって、本当に依頼者のために仕事をしているのだろうかと疑問になる。


 株式を上場して誰でも買えるようにしておいて「防衛」すると言うのが、そもそもおかしいという気もする。そんなに外資が嫌いならMBOでもして上場をやめたらいかがかと。まあ、そういうわけにもいかないんでしょう。