我妻「民法」を「無断引用」? | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録28年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 我妻(わがつま)先生の名著、いわゆる「ダットサン民法」を予備校のテキストに「無断引用」したというこの記事。


 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100107-OYT1T00712.htm?from=y10


 意味はわかるけれど、「引用」は、およそ無断でするものであり、「無断引用」なんて言葉はない。「引用」にあたらないから問題になるのである。強いて言えば「無断複製」だが、普通に「盗作」と言えばよいであろう。


 「ダットサン」は、昔、日産自動車が使っていたブランドの一つである。「ダットサン」の力強い響きは欧米人に人気があった。あるとき、イギリスあたりの当局から「ニッサン」か「ダットサン」か、どちらかにしろと言われ、「ダットサン」のブランドを捨てたそうである。おかげで日産の海外売上は激減、今に至っている。


 で、なぜ「ダットサン民法」なのか。3分冊で、「脱兎の如く読める3冊」だから、といわれている。分かったような、分からないような。


 我妻先生の体系書には、岩波の「民法講義」シリーズと、もう一つ「民法案内」シリーズがある。昔の司法試験受験生は皆「民法講義」を読んだそうだが、私の受験時代には既に過去の話である。


 私がお勧めしたいのは「民法案内」である。実は今、私もこれを読んでいる。「ダットサン民法」は、正直、中身が薄い。「民法案内」は講義を聞くような雰囲気で読みやすく、中身も大変しっかりしている。