ウィーン売買条約の解説(2) | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 簡単に言うと、ウィーン売買条約は①国際的な②物品の③売買契約に適用される。


(1)「国際的」

 「国際的な」というのは、本稿で筆者が便宜的につけた略称であるが、正確には、

「営業所が異なる国に所在する」当事者間(11項柱書)の契約であって、かつ、11aまたはbを満たす場合をいう。

 11aは、上記「異なる国」(契約当事者の営業所所在国)がいずれも締約国である場合。

 しかし11bは「国際私法の原則によれば締約国の法の適用が導かれる場合」を定めている。

 つまり、11b号によれば、契約当事者の営業所所在国の、一方または双方が非締約国であっても、条約が適用されうるのである。これはかなり重要なポイントだ。したがって、日本について条約が発効する2009年8月1日より前に締結された契約であっても、条約が絶対に適用されないとは言えない。


 

 「国際司法の準則によれば締約国の法の適用が導かれる場合」の典型は、契約で両当事者が、締約国の法を準拠法と定めた場合である(法適用通則法7条)。

 当事者が準拠法を選択していない場合、最密接関係地の法が適用される(同法81項)。日本を輸出地とする売買契約の場合、最密接関係地は日本と推定される(通則法82項の解釈)。

(2)「物品」(goods)とは

条約に「物品」の直接の定義はない。ただし2条で有価証券、通貨、船舶、航空機、電気などを除外している。「動産」と同様の概念といわれている。

(3)「売買」(sales)とは

条約に「売買」の直接の定義はない。ただし2条、3条を参照のこと。

製作物供給契約は原則として売買とされる。ただし委託加工(注文者が「必要な材料の実質的な部分」を供給)は除かれる(31項)。


役務提供との混合契約については、役務提供が「主要な部分」であれば非適用となる(32項)。

例:機械の引渡と設置、買主に対する操作方法の指導は、適用。

  プラント輸出契約はおそらく非適用(文献①7頁、3334頁)。


基本契約には不適用、個別契約のみ適用という説明がある(文献①33頁)。

(4)適用除外「売買」(2条)

消費者売買は適用除外とされている(2a号)。


 11b号は留保宣言ができる(95条)。主要国では、アメリカ、中国、シンガポールが95条の留保宣言をしている。