簡単に言うと、ウィーン売買条約は①国際的な②物品の③売買契約に適用される。
(1)「国際的」
「国際的な」というのは、本稿で筆者が便宜的につけた略称であるが、正確には、
「営業所が異なる国に所在する」当事者間(1条1項柱書)の契約であって、かつ、1条1項aまたはbを満たす場合をいう。
1条1項aは、上記「異なる国」(契約当事者の営業所所在国)がいずれも締約国である場合。
しかし1条1項bは「国際私法の原則によれば締約国の法の適用が導かれる場合」を定めている。
つまり、1条1項b号によれば、契約当事者の営業所所在国の、一方または双方が非締約国であっても、条約が適用されうるのである。これはかなり重要なポイントだ。したがって、日本について条約が発効する2009年8月1日より前に締結された契約であっても、条約が絶対に適用されないとは言えない。
「国際司法の準則によれば締約国の法の適用が導かれる場合」の典型は、契約で両当事者が、締約国の法を準拠法と定めた場合である(法適用通則法7条)。
当事者が準拠法を選択していない場合、最密接関係地の法が適用される(同法8条1項)。日本を輸出地とする売買契約の場合、最密接関係地は日本と推定される(通則法8条2項の解釈)。
(2)「物品」(goods)とは
条約に「物品」の直接の定義はない。ただし2条で有価証券、通貨、船舶、航空機、電気などを除外している。「動産」と同様の概念といわれている。
(3)「売買」(sales)とは
条約に「売買」の直接の定義はない。ただし2条、3条を参照のこと。
製作物供給契約は原則として売買とされる。ただし委託加工(注文者が「必要な材料の実質的な部分」を供給)は除かれる(3条1項)。
役務提供との混合契約については、役務提供が「主要な部分」であれば非適用となる(3条2項)。
例:機械の引渡と設置、買主に対する操作方法の指導は、適用。
プラント輸出契約はおそらく非適用(文献①7頁、33~34頁)。
基本契約には不適用、個別契約のみ適用という説明がある(文献①33頁)。
(4)適用除外「売買」(2条)
消費者売買は適用除外とされている(2条a号)。