よく「他人に作ってもらったごはんは美味しい」というが、確かにそうだと思う。基本的にはいつも自分が作ったものを食べているので、時々友人宅でご馳走になった時なんかは「こりゃうめえや!」となるのだ。

なぜそうなるのかを考えてみた。

別に自分が作ったものをまずいと思うわけではない。むしろ自分で作るということは、自分が好きな味付けにするため、普通に考えて「自分にとって最良の料理」になるはずである。

しかし、自分で作ることによって発生する「味見」という行程があるため、自分の料理には驚きがないのである。


そう、サプライズ不足である。


自分で作った料理にはサプライズがないのである。対して、他人が作った料理というのはもう全てがサプライズであり、どんな風に具材を切ったのか、どんな調味料を入れたのか、どんな煮込み方や炒め方をしたのか、ありとあらゆるものがサプライズである。

人というものはサプライズが好きである。
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例えば仲間内の誰かにめでたいことがあったら「サプライズで◯◯しようぜ!」という話になる。私の実生活でも、いま友人向けのサプライズ案件が3つも重なっている。


少し話は変わるが、先日、後輩たちに誘われて食事に出かけた。この後輩たちは、彼らが入社した頃から何かと面倒を見ていたいわゆる「木村チルドレン」なのだが、ここ最近はなかなか会う機会がなかった。

それが急に誘われたものだからどうしたものかと思ったが、1つだけ心当たりがあった。

そう、私は先日、レシピ本を出したのだ。



彼らはそのことを知っているので、これは「サプライズで木村さんをお祝いしようの会」の可能性が濃厚だった。向こうはサプライズにしようと思っているのだろうが、そんなことはお見通しだ。しかしその心遣いが嬉しかった。


そして当日になり食事会が始まった。

食事会は楽しく進み、これから起こるであろうサプライズに、私は少しだけドキドキしながらお酒を飲んでいた。なかなかサプライズの場面はやってこないが、久しぶりに会ったこともあり、積もる話もたくさんあったので、大いに盛り上がった。




そして会計の時間がきた。




私は驚いた。サプライズされるかと思ったら、まさかの何もないという逆サプライズが発生した。いま「逆サプライズが発生した」と表現したが、よく考えてみると何も発生はしていない。

ただ飲み会があっただけだ。


周りを見渡すと後輩だらけだ。こうなると私の役割はひとつしかない。財布から一万円札を取り出して彼らに渡して「残りは適当に割って払っといて」と言い放った。出来る限りのクールな声だった。

後輩たちはまるでそれがサプライズかのように「いいんですか!? ご馳走様です!」と喜んだ。

他人に作ってもらったご飯が美味しいのも、他人の金で飲む酒が美味しいのも、全てはサプライズのおかげなのだ。

しかし、かつて若手の頃、先輩たちにおごってもらった帰り道に「他人の金で飲む酒はうめーな!」「呼んどいて良かったな!」なんて言いながら帰ったことを思い出した。サプライズというより、狙い通りである。

彼らもきっと、同じことを言いながら帰ったのであろう。





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