「真夜中の子供たち」サルマン・ラシュディ著・・・★★★
これはいまだかつて語られたことのない、想像力に富んだとてつもない物語。
ご記憶のある方も多くいらっしゃると思うが、著者は「悪魔の詩」(1998年5作目)でムハンマドを冒瀆し反イスラムだとして、当時のイラン最高指導者ホメイニから死刑宣告を受けた作家である。
ラシュディはイギリス政府に厳重に保護されたが(現在はニューヨークに在住)、出版関係者らが暗殺され日本では訳者の五十嵐一氏が殺害された。
さて本書であるが、1980年2作目の作品で翌年ブッカー賞を受賞、さらに1993年には「ブッカー賞中のブッカー賞」として選出された。
まず本書を手にとると、見返しにずらっと称賛のコメントが載っている。
「ガルシア=マルケス『百年の孤独』以来の衝撃」ザ・タイムス
「大傑作。勇気のある新人作家の天賦の才能がみごとに披露されている」ワシントン・ポスト
「巨大で、生き生きとしていて、夢中にさせる・・・どの点においてもファンタスティクな本」サンデイ・タイムス
「重要この上なし・・・めまいがするほどエキサイティングな読書体験」タイムズ文芸附録
これだけ称賛されていれば、いやがうえにも期待は高まるのであるが、私には一抹の不安があった。
なぜなら、本作は「百年の孤独」と同じマジックリアリズムの手法で描かれている作品で、私は「百年の孤独」の素晴らしさが分かる感性を持ち合わせていないのである。。。(x_x;)
マジックリアリズムについてウィキペディアから引用すると・・・
「日常にあるものが日常にないものと融合した作品に対して使われる芸術表現技法で、主に小説や美術に見られる。幻想的リアリズムと呼ばれることもある。」
と、分かったような分からないような、なんとも難しい手法なのであるが、ファンタジー作品とか不条理作品とかとの境も微妙である。
前置きはこのぐらいにして(感想が思いつかない時は長くなります(^▽^;))、本作はどうか?
結論から言えば評価が★3つという通り、不安は的中し私には無理でした。。。(>_<)
ストーリーはインドを舞台に主人公サリーム・シナイを語り手として綴った、祖父、父、主人公の3代に亘る物語で、この3人を中心に祖母、叔父、叔母、妹、友人、知人らとの様々なエピソードと、インドの歴史的事実(主に政治)を描いている。
「百年の孤独」と較べると幻想感はそれほど感じられず、本作がマジックリアリズムだとは余り意識せずに読んだ。
まあ、どちらにしろ私には本書の素晴らしさは残念ながら分からなかった。
これだけ称賛され、世界的ベストセラーを記録した本でありながら、現在、日本語版は廃刊となっているようである。
私のように、本書が素晴らしいと思えない方々が多数なのだろうか?