501冊目 アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

ヘタな読書も数撃ちゃ当る

ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス著・・・★★★★

32歳になっても幼児の知能しかないパン屋の店員チャーリイ・ゴードン。そんな彼に、夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が頭をよくしてくれるというのだ。この申し出にとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に、連日検査を受けることに。やがて手術により、チャーリイは天才に変貌したが…超知能を手に入れた青年の愛と憎しみ、喜びと孤独を通して人間の心の真実に迫り、全世界が涙した現代の聖書(バイブル)。


この本が海外作品としては異例な爆発的ヒットをしたのは随分前の事で、今頃読んでたら笑われそうです。

解説によれば、日本での初版は1978年だから、ヒットした10年前位だろうか。

驚く事に原作は更に昔で1959年だそうである。

まだ、私は生まれていない。

ユースケ・サンタマリアの主演により2002年にTVドラマ化もされているから、いかに本書が息の長い作品かが伺われる。


カテゴリー的にはSFに分類されているが、現代科学、現代のSF的視点から見ればSFテイストは殆ど感じない。

それよりもこの物語は、親と子、健常者と障がい者のありかたを問うヒューマンドラマ色が濃い。


ストーリーは、主人公のチャーリイ自身が書いた報告書という形で描かれており「けいかほうこく1 3がつ3日」から「経過報告17」の11月21日までの約9か月に亘りチャーリィ自身に起こった事と、チャーリイと関わった人達の事が書かれている。


読み始めて面食らうのは、誤字だらけの殆どひらがなで書かれた文章だろう。

チャーリイは精神薄弱児の32歳で親元を離れ、父の親友のパン屋に勤めていた。

ある日、チャーリイは利口になると言われて脳の手術を受け、その後ネズミのアルジャーノンと迷路のレースや心理テストを受ける日々を送る。

アルジャーノンの脳は徐々に発達して、迷路を完遂するようになり、それに合わせてチャーリイの脳も発達していき迷路レースでアルジャーノンに勝つようになり、報告書は漢字や難解な単語、論理的記述が徐々に増えていく。

チャーリイのIQはみるみる間に上昇し、185に到達。

本のページを捲るだけで内容は記憶され、世界中の言語(もう使われていない古い言語も)をマスターし、ありとあらゆる学問に精通し、その道の専門家さえも議論で打ち負かし、自分を手術した教授さえも上回り論文をまとめ、しまいには自分自身の未来をも予測するようになる。


しかし脳の発達と共に、母親から疎外され折檻を受けた少年時代の、1人ぼっちで寂しく辛い日々をフラッシュバックのように思い出す。。。


果たして、人の幸せとは何なのか?

障がい者は健常者よりも不幸なのか?

障がい者と家族のあり方は?

を、著者は問いかける。


私が一番印象的だったのは、チャーリイが元に戻っていった時に体験した、臨死体験に似た件である。

最近では割とこういう神秘体験は知られているが、この当時に書かれている事に驚いた。


ストーリー展開は面白いし、ホロッとさせる結末だし、確かに本書はヒット間違いなしの1冊である。


アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)/ダニエル キイス
¥861
Amazon.co.jp