465冊目 飛蝗の農場/ジェレミー・ドロンフィールド | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「飛蝗の農場」ジェレミー・ドロンフィールド著・・・★★★★

ヨークシャーの荒れ野で農場を営むキャロルのもとに、奇妙な男が転がりこむ。不運な経緯から彼女は男に怪我を負わせ、回復までの宿を提供することにしたのだが、意識を取り戻した男は、過去の記憶がまるでないと言う。幻惑的な冒頭から忘れがたい結末まで、圧倒的な筆力で紡がれる悪夢と戦慄の謎物語。驚嘆のデビュー長編!

「このミス」2003年版海外作品1位の作品。

「飛蝗」は虫のバッタである。


記憶を失くした男の過去と主人公の女の過去を結びつける殺人事件。

その事件を巡り、男を付け回す影の男。

二転三転する事件の真相と印象的な結末。。。


作風は題名の「飛蝗の農場」からイメージする様な独特で得体の知れない不気味さを持ったサイコサスペンス。

プロットは「現在の物語」と「時間と場所を分断しバラバラに配置された過去の物語」が交錯し、何気なく読み進めてしまう「過去の物語」の中に、伏線が巧妙に隠され、読者に疑問と謎を与えながら進んでいく。

そのバラバラにされたパズルのピースは結末に向かって1つ1つ嵌められ全体像が形作られていく。

すっかり老齢化した私は登場人物(名前・・・ここがミソ)の多さも相俟って盆暗頭がこんがらがってしまった。(@Д@;


プロットの巧みさもさることながら、それぞれの特異な人物造形に優れ、さらに精緻で濃密な文体が本書を読み応えのある物にしている。

海外物特有の、日本人には分り難い言い回しは無くすんなりと頭に入ってくるので、翻訳物の苦手な方にもお薦めできる。


一度読んで疑問のまま残ってしまった「過去の物語」も、再読してすっきり出来そうな、一冊で二度おいしいサイコサスペンスの傑作である。


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飛蝗の農場 (創元推理文庫)/ジェレミー ドロンフィールド
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