「ムーン・パレス」ポール・オースター著・・・★★★☆
人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた…。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
本書は「海外の長編小説ベスト100」 にも選ばれたオースターの代表作とも言える長編作品で、それを期待して読み始めたのだが、読み終えて正直戸惑った。
オースターと言えば、「ニューヨーク三部作」のように読者を煙に巻く様な、不条理且つ寓話的で物語全体が暗喩で構築された作風が多いのだが、本書は確たるストーリー展開を持った典型的なアメリカン青春小説である。
一言で言えば、分り易い。
安直過ぎないだろうか?
果たしてこの作品は、単に「喪失感」や「偶然性」を描いた物語なのであろうか?
いやいや、何か私には分らない作者の深い企図があるのではないか。。。(?_?)
違いない。。。( ̄▽+ ̄*)
本書の中で、かなりのページ数を割いて二つの挿話が出てくるのであるが、この話がこの物語を読み解く鍵になっているような感じがする。
そうだとすれば単なる青春小説では無い、もっと奥の深い物語となる。
参考にアマゾンの書評を見たのだが、その点について言及している方は全くいない。
オースターはそんなに単純ではないはずだ。( ̄▽+ ̄*)
真っ当な方々には、青春小説として高い評価をされるかもしれないが、私のような天邪鬼な人間にとってはそう素直には捉えられない作品である。
私の個人的好みからすれば「ニューヨーク三部作」の方が好きであるが、どのオースター作品も一筋縄ではいかない面白さがある。
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