364冊目 狙われたキツネ/ヘルタ・ミュラー  | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「狙われたキツネ」ヘルタ・ミュラー著・・・★★★☆

チャウシェスク独裁政権下のルーマニア。家宅侵入,尾行,盗聴。恋愛感情さえスパイ活動に利用され,誰かを好きになることが,親友を傷つける。若い女性教師アディーナの見た独裁制の恐怖。秘密警察に追いつめられ田舎に身を隠す。再び街に帰った彼女が見たものは・・・・・。


先日発表された本年度ノーベル文学賞作家、ヘルタ・ミュラーの作品を早速読んでみた。

たぶん、日本でこの作家を知ってる人なんて皆無じゃないんでしょうか。

私も当然初めてですが、図書館で借りたのも私が初めての様な感じで、邦訳もこの1冊だけのようです。


ヘルタ・ミュラー(56)はルーマニア生まれのドイツ系少数派民族で、チャウシェスク政権下のルーマニアで創作活動を行うも作品の発表が困難となり’87からドイツに移住し活動しています。


本書はチャウシェスク政権の独裁体制下のルーマニアを舞台に、抑圧された人たちの日々を描いています。

抑圧された生活を描いているというと暗いイメージが湧くんですが、コミカルであったりシニカルであったり、文体も詩的な感じでメタファーが多様されているため、少し現実離れした寓話的な感じがします。

圧制の歴史を文学として昇華させたその作風が受賞のポイントとなったと感じますが、ちょっと日本人の私にはピンとこない作品ではあります。

最近のノーベル賞は社会批判をテーマにした作家の受賞が多いようですねぇ。


偶然ですが、次も又ドイツのノーベル文学賞受賞作家です。


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