296冊目 供述によるとペレイラは・・・・・・/アントニオ・タブッキ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「供述によるとペレイラは・・・・・・」アントニオ・タブッキ著・・・★★★★

ファシズムの影が忍びよるポルトガル。リスボンの小新聞社の中年文芸主任が、ひと組みの若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。


時代背景は第2次世界大戦の前哨戦となったスペイン戦争時代。

左派(反ファシズム)の人民戦線政府と、フランコ将軍が率いる右派(ファシズム)の反乱軍が戦い、人民戦線をソビエトが、反乱軍をドイツとイタリアが支持した。


先日読んだ「遠い水平線」は幻想的、不条理的といったちょっと不思議な感覚を持った作品だったが、この作品は史実がベースになっているだけにリアリスティックにストーリーは描かれている。


物語は主人公の供述した話として、何故逮捕されたのかが明らかにされないまま進行していく。

主人公のペレイラはリスボンの小新聞社の中年文芸担当記者。

そこへ、一人の若者を記者として雇おうとするが試し書きした原稿が反体制的な内容で納得のいく記事でなかった。

ペレイラは馘首にしたいのだが、若者は金銭的に困っていて援助までする。

若者には怪しい女がいて、思想的な面を背後で操っているようだった。

そんな中、ペレイラは肥満治療の為一週間の休みをとり、そこで哲学的な考えを持つ医師に出会い影響を受ける。

帰ったペレイラは自分が翻訳した小説を新聞に載せようとするが、それは反体制的な内容を含む記事だった。。。


戦時下の中で、言論弾圧に翻弄されるポルトガルのジャーナリストを描いているが、主人公の”ちょっと不器用で、甘いもの好きなメタボなおじさん”という人物造形により、政治的主題を持つ作品のシリアスで重苦しいといった類型的な作風に陥らず、文学作品として親しみやすい物語に仕立てている。


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