「最後の物たちの国で」ポール・オースター著・・・★★★★
人々が住む場所を失い、食物を求めて街をさまよう国、盗みや殺人がもはや犯罪ですらなくなった国、死以外にそこから逃れるすべのない国。アンナが行方不明の兄を捜して乗りこんだのは、そんな悪夢のような国だった。
「これらは、最後の物たちです、と彼女は書いていた。一つまた一つとそれらは消えていき、二度と戻ってきません。私が見た物たち、いまはない物たちのことを、あなたに伝えることはできます。でももうその時間もなさそうです。何もかもあまりに速く起こっていて、とてもついて行けないのです。」
この書き出しで始まる本作は、”誰か”に宛てられた手紙で全編に亘り書簡体のモノローグで綴られている。
女性主人公アンナの生きる世界は、国境を壁で囲まれ、生産活動はストップし社会機能も失われ、死んだ人間は変身センターに送られエネルギーに変わり、人々は不用品を売りショッピングカートを引き摺り”街漁り”をしながら生き延びている近未来を思わせる様な世界。
これを見て、あの作品に似ていると思い当たる人もあると思うが、昨年話題になったコーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」 と似た世界(ショッピングカートはまるっきり一緒)である。
「ザ・ロード」は街は荒廃し生きている人間も僅かであったが、その数年前ぐらいの様な感じである。
ストーリーは寓話的ではあるが、前作までの「ニューヨーク三部作」の様な、不条理で、読む者を煙に巻く様な作風では無くリアリティを持って書かれている。
オースターのあの作風が苦手な方でも充分に理解し易いと思う。
訳者あとがきで本書についてオースターは「この物語の世界は自分が想像した産物で無く、過去に実在し現在でもそのシステムは機能している」と語ったとある。
本作はオースターが現在世界に向けて警告したメッセージであり、この手紙の宛先人はこれを読んだ読者自身なのかもしれない。
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今日は何位になったかな~
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清志郎さん、若い頃は大変お世話になりました。
合掌