「停電の夜に」ジュンパ・ラヒリ著・・・★★★★
著者はロンドンに生まれ(1967-、両親はインド人)、幼少時に渡米、現在はNY在住。
ほろ苦い結末はラヒリのこの短編集全体を貫く特徴である。9本の短編のうちいくつかはインドを、それ以外はアメリカを舞台に設定しているが、それらのほとんどがインド系の人物に関したものだ。しかし、ラヒリの描きだす人物が直面する状況には、それが不幸な結婚生活であっても内戦であっても、民族性の枠におさまりきらない広がりがある。短編集最後の作品「3度目で最後の大陸」の語り手は次のように述べる。
「これまで長い道程を旅し、数えきれないほどの食事もし、たくさんの人たちと知り合い、いくつもの部屋で眠りを重ねてきた。人生の歩みと共に積み重ねられてきたこれらのひとつひとつに、私は戸惑いをおぼえることがある」。
本書の9編の作品はどれも派手さは無いが、読者の心の片隅にそっと灯を灯すように繊細に語りかけてくるような筆致で、こういうのを”心の琴線に触れる”作品というのだろう。
私が最近読んだ短編集の中ではダントツでNO1。
どの作品も粒揃いで、正に珠玉の短編集というにふさわしい一冊だと思う。
いっぺんに作者のファンになってしまった。
個人的によかったのは、表題作の「停電の夜に」と「病気の通訳」。
人と人の間の微妙な心の動きを見事に描きオチも素晴らしい。
これだけ素晴らしい作家なので他の作品も読みたいのだが、ラヒリは残念なことに寡作で、あと一冊長編が出ているだけだ。
がんばって量産して欲しいと思う。
実は私がこれだけヨイショするもう一つの理由がある。
ラヒリはハリウッド女優にも負けないくらいの美人なのだ。(^^;
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